SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.7 マリトッツォブームは「ネタ化」がけん引した!?(前編)

【前回】「SNSの「話題」から読み解く最新トレンド Vol.6 東京五輪はSNSでどう語られたのか? オリパラ全体編」はこちら

桜美林大学准教授/マーケティング・コンサルタント
西山 守

商品、映画、広告キャンペーンなど、さまざまな領域で生まれるヒット。その背景には、SNSや多種多様なメディアから情報が拡がり、話題が伝搬していくことでブーム化していく、近年はそんな現象が見られるようになっています。こうした話題になった事例を分析、そのしくみを解説した書籍『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』の著者である西山守さんが、最近話題になった事象について読み解きます。

「マリトッツォ」が話題になっています。マリトッツォとは、ブリオッシュ生地に生クリームを挟んだローマ起源のスイーツパンのことなのですが、「いつの間にかブームになっていた」感があります。

ブリオッシュ生地のようなパンに生クリームをたっぷりはさんだ、イタリア発祥のお菓子「マリトッツォ」。(C)123RF

ティラミス、ナタデココ、ベルギーワッフル、タピオカ、パンケーキ、バスク風チーズケーキ……等々、新たなスイーツブームは、時代を問わず、常に発生しています。

一過性のブームで終わってしまうもの、ブームが落ち着いた後も定番として残り続けるもの、タピオカのように、沈静化したかと思うと、数年後に再ブームが起こるものなど、様々なタイプのものがあります。

また、特定の企業や店舗が火付け役になるものもあれば、自然発生的に話題が盛り上がっていくものもあります。

日本におけるマリトッツォブーム発祥の地は、福岡のベーカリーと言われています。しかしながら、各社、各店舗が参入してきており、多発的、視線発生的に盛り上がっています。その意味では、マリトッツォブームには、特定の火付け役、けん引役がいたわけではないようです。

では、どうしてマリトッツォはブームになったのでしょうか?

下図は、Twitter上の「マリトッツォ」を含む投稿数の推移グラフです。

「マリトッツォ」というワードを含むTwitterの話題量推移 (2021年4月1日~2021年10月16日)
BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長のデータから推計 出所/著者

この図からわかる通り、今年(2021年)の6月下旬から、急に盛り上がりを見せています。

あくまでも目安ではありますが、SNS上で「話題になり始めているな」と感じられるのが、1日1万件を超える投稿があったあたりからです。

マリトッツォで、これが実現するのが6月22日なのですが、きっかけは下記の投稿です。

本ツイートは2.4万件のリツイート、10.1万件の「いいね」を集めていますが、投稿されたのは、マリトッツォどころか、スイーツとは無関係の、シマエナガ(北海道に生息する野鳥)に関するアカウントからです。

マリトッツォのクリーム部分をシマエナガに模した、かわいらしい画像がTwitterユーザーの注目を浴び、大きく拡散されました。

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