12月1日に発売した音部大輔氏による新刊書籍『The Art of Marketing マーケティングの技法 ― パーセプションフロー・モデル全解説』。発売前から話題を集め、早々に重版が決まった本書に収録した、市場再創造のストーリーの第2回。
市場で劣勢を強いられていた「アリエール」を担当した音部氏。資源が限られるなか、「除菌」訴求に望みを託します。ところが、市場調査では期待とは真逆の結果に。それでも除菌で突破を図るに至った一筋の光明とは……。
市場で劣勢を強いられていた「アリエール」を担当した音部氏。資源が限られるなか、「除菌」訴求に望みを託します。ところが、市場調査では期待とは真逆の結果に。それでも除菌で突破を図るに至った一筋の光明とは……。
威風堂々のリーダーに立ち向かう――市場再創造への挑戦1(音部大輔)はこちら本書の詳細・購入はこちらから(Amazon)
コマーシャルイノベーションに舵を切る
この状況で、ブランドチームがなすべきことは明らかです。唯一の武器だった価格は使えず、「アタックよりも安い」という最大の購入理由は失われました。山積みと価格で売り込む店頭のプッシュではなく、ベネフィットにより消費者を誘引するプルを喚起しなくてはなりません。価格と同じくらい魅力的で、アタックからシェアを取り返せるくらい強力なベネフィットを開発するのです。
研究開発や製造の部門と、連日の濃密な会議を経て「除菌」であれば半年で製品開発と量産のめどが立つと分かりました。何箇所か綱渡りが予想されましたが、ほかにめぼしい選択肢もなく「除菌」に希望が託されることになりました。すぐに新商品のコンセプトボードを開発し、消費者調査です。コンセプトボードとは、ターゲット消費者とベネフィットの想定をもとに、商品特徴やパッケージ、価格などを記した1枚の紙です。消費者に見せ、反応を観察することで商品の魅力度を測り、売り上げを予測する調査などに使います。
既存の製品を大きく変更することなく、ターゲット消費者を明確にし、ベネフィットの訴求を強化することで、売り上げ増加を目指すイノベーションのことをコマーシャルイノベーションと呼びます。今回のように製品やパッケージの一部を変更して新商品とすることもあれば、製品を変えずにコミュニケーション主体の新しい訴求をすることもあります。
