ファブリーズ急成長の礎をつくった「パーセプションフロー・モデル」

消費者のパーセプション(認識)の変化に着目してマーケティング活動を設計する「パーセプションフロー・モデル」について解説した書籍『The Art of Marketing マーケティングの技法』が12月に発売された。

パーセプションフロー・モデルとは、マーケティングの4P、すなわち製品、価格、流通・店頭、施策などの全活動を記す「マーケティング活動の全体設計図」。著者の音部大輔氏がP&Gジャパンで消費財のブランドマネジメントに携わっていた当時に考案した。各活動が的確に配置され、連携し、全体最適を実現するのに有効だ。

このパーセプションフロー・モデルが生まれる現場に立ち会った人の一人が、音部氏のP&G時代の後輩である伊東正明氏(現・吉野家常務取締役)。ファブリーズについては、本書に記載した市場創造のストーリーを引き継ぎ、のちに米国本社に赴任しグローバルブランドとして大きく成長させた実績を持つ。

伊東氏に当時のエピソードや、パーセプションフロー・モデルの強み・魅力について聞いた。

手品の種明かしのようだった

本書の冒頭(既存市場の再創造を果たしたアリエールと、新市場の創造に成功したファブリーズの事例)を読んで、あのころの思い出が鮮明かつ生々しい記憶としてよみがえってきました。私もそうですが読者の方も、苦悩しているまだ若手のころの音部さんの気持ちに自分を照らしあわせながら「自分もこんな世の中を変えるようなことをやってみたい」と勇気を感じながら読み進めるのではないでしょうか。

パーセプションフロー・モデルの原型ともいえる、エクセルでつくった「箱と矢印」のファイルをはじめて見せてもらったのは、1996年11月だったと思います。

「普通に除菌できるといっても誰も欲しいと思わない。でも、こうやってパーセプションが変わって、便益を感じられれば、欲しいと思ってもらえるんだ」と。「欲しいと思っていない」便益が「欲しい」にかわる設計図を見たときに、マーケティング手品の種明かしを見せてもらったようで感動したのを覚えています。

消費者のブランドに対する認識(パーセプション)が、手のひらの上で変わっていく手品の仕掛けを説明していただけたことで、一緒に担当していたチームメンバーで「同じパーセプションの遷移過程」を共有し、それぞれが別々に活動していても同じパーセプション遷移をつくる全体コミュニケーションが完成したのだと思います。今では誰もが当たり前と思う「除菌ができるお洗濯」が日本の洗濯の常識になるには、音部さんの明確な設計図=パーセプションフローがあり、確実にその設計図通りに組み立てられたのでした。

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