筆者の田中淳一さんは、全国を飛び回りこうした「地域」案件を数多く手がけるクリエイティブディレクター。仕事でかかわった都道府県は約40に上ります。本書では、アイデアから実行に至るまでのクリエイティブディレクションの方法論と、地域ならではの実情に合わせた仕事の進め方について事例を交えながら解説しています。
本書の執筆に至った経緯について、「地域にはクリエイティブディレクションが足りない」という問題意識があったといいます。なぜそう感じたのか。田中さんと同じく宮崎県出身で、東京での仕事を経て宮崎市内でコンテンツプロダクションを立ち上げた田代くるみさん(Qurumu代表)が聞きました。
課題解決こそがクリエイティブディレクターの仕事
田中
:田代さんとは初対面ですが、同じ宮崎県出身なんですよね。今回書籍の装丁やアートディレクションをお願いした日高英輝さんも同郷ということで、この新著を通して宮崎の縁を感じているところです。
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田代
:地元だとなかなか会う機会がありませんが、宮崎出身でもこうしたクリエイティブ周りを仕事にしている人はたくさんいるんですよね。私は東京で10年ほどライターの下積みを経て、「宮崎の『いいもの』をもっと発信していきたい」と、2017年に地元でコンテンツプロダクションを興しました。
この5年弱、地元でクリエイティブにまつわる仕事に携わってきた中でまさに感じていた地域におけるクリエイティブの課題、つまり「地域におけるクリエイティブディレクターの不在とその重要性」をクリティカルに指摘されていたのが、今回の田中さんの著書だと思います。
田中
:この本は田代さんのように地元でクリエイティブを生業にしている人もターゲットとしているので、共感してもらえるのはとても嬉しいです。
改めて、クリエイティブディレクションの定義をしておきたいと思います。本書では、企業や自治体などが抱えている与件や課題などを映像、言葉、デザインなど、クリエイティブアイデアをつかって解決していく手法のことをクリエイティブディレクションとしています。
そしてクリエイティブディレクターとは、具体的に言うと、与えられた課題のボトルネックになっている事象や観念の発見、その課題を解決するためのアイデア開発、導き出したアイデアを具体的にしていく過程でのクオリティ管理を担う役割。クリエイティブを駆使して生活者の、主に感情面での態度変容を促すことで課題を解決する仕事です。
伝えることなしに地域経済は成長しない
田代
:東京ではそれなりに浸透している職能ですが、地域ではまだまだ知られていない存在ですよね。アウトプットが明確なデザイナーやコピーライターに比べて、分かりにくいとの話も聞きます。田中さんはなぜ、地域にこそクリエイティブディレクターが必要だとお考えになったのですか?
