このほど、早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授が著者の音部氏と本書の内容をもとにディスカッションを行いました。全体最適の必要性やベネフィットと機能の違いから、経営者が持つべき視点についても話が及びました。
内田和成(早稲田大学 ビジネススクール 教授)
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音部大輔(クー・マーケティング・カンパニー 代表取締役)
イノベーションの存在が環境を一変させる
内田
:音部さんの著書、大変興味深く読ませていただきました。
本書のテーマとして貫かれているのが、全体最適の視点です。現場ごとに最適解と判断したところで、ブランド戦略の全体像や進むべき方向が共有されていない状態では有効に機能しない。部門内で意思統一できていたとしても、他の部門が逆の方向に向かっていてはエネルギーの無駄遣い。だからこそ、全体設計図を共有することが大切だというのはその通りだと思います。
勉強になったのはベネフィットと機能の違いについてです。ベネフィットは消費者視点で考えるべきもので、機能は企業視点。これらをきちんと分けて戦略立てていくべきという話は「なるほど」と思いました。

内田和成(早稲田大学 ビジネススクール 教授)
東京大学工学部卒業、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了(MBA)。日本航空を経て、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。同社のパートナー、シニア・ヴァイス・プレジデントを経て、2000 年から2004年までBCG 日本代表を務める。
この間ハイテク、情報通信サービス、自動車業界を中心にマーケティング戦略、新規事業戦略、グローバル戦略の策定、実行支援を数多く経験。2006年度には「世界の有力コンサルタント、トップ25人」に選出。 2006年早稲田大学教授に就任。著書『仮説思考』(東洋経済新報社)などのベストセラーも持つ。
マクニールの『戦争の世界史』から引用した、欧州の戦場の変化と昨今のマーケティングの現場の対比についての記述も興味深かったですね。クロスボウ(弩=いしゆみ)の存在が戦争のあり方を変えてしまったというエピソードは、日本でいえば(長篠の戦いで)織田信長が鉄砲隊で武田(勝頼)の騎馬隊を撃退した話と近いのかもしれません。
イノベーションの存在が従来の常識や戦い方を変えてしまうというのは、今の時代に置き換えると、デジタルによって企業経営やマーケティングの世界で起きていることと全く同じであると説いている。うなずきながら読ませていただきました。さすがです。