築地本願寺の僧侶たちが、現代人の感覚に馴染む仏教の在り方を模索し、お寺のイメージを変える大改革に挑んでいる。それまでの延長線上にない大きな転換のなかで、僧侶たちは何を感じ、どのように変化したのだろうか。
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「お寺が、どうしてここまでやるのだろう?」
近所の築地本願寺にふと立ち寄った際に、素朴な疑問が浮かんだ。
芝生とコンクリートで整えられた境内は現代的で、開放的な雰囲気だ。自由に散歩する人、買い物帰りの人、立ち止まって本堂に手を合わせる人など、多様な人が行き交う。敷地内にはおしゃれなカフェ。ウッドデッキの白いパラソルの下、フォトジェニックな和風スイーツの写真を撮る女性客の姿が目に付く。それらの風景が、古代インド様式の独創的な外観の本堂と違和感なく馴染み、調和している。
広々とした本堂に足を踏み入れると、本格的なライブ配信機器がずらっと並んでいるのが目に入る。傍らには、会員カードをかざす電子機器。参拝記念カードを手に取ると、デザイン、築地本願寺のロゴ、ともに洗練されていて、プロのクリエイターによるものだと一目で分かる。
「全部、お坊さんが仕掛けているのだろうか? お寺がどうして、ここまでやるのだろう?」
築地本願寺の安永雄玄(雄彦)宗務長の著書「築地本願寺の経営学」(東洋経済新報社)を読み、築地本願寺が10年かけた改革の途中であることを知った。「近寄り難さ」を払拭したカジュアルな雰囲気の醸成や現代的な取り組みの数々は、すべて改革プロジェクトの一環だった。改革の指揮を執る安永さんは、経営コンサルタント出身の僧侶。浄土真宗の教義はそのままに、「お寺の見え方」を変えようとするその取り組みは、企業でいうリブランディングに近い。
筆者は、IT企業でサービス構築やブランディングに従事してきた。それまでの業務の延長線上にない大きな転換の裏側では、現場の合意形成、推進する空気づくりに最も苦心した。長く続いたサービスなら尚更だ。
