今回は、3月31日に発売した新刊『顧客起点のマーケティングDX データでつくるブランドと生活者のユニークな関係』(横山隆治・橋本直久・長島幸司著)の「はじめに」の一部を紹介します。
顧客体験(CX)をデジタルで最適化する
コロナ禍において、日本の企業そして社会のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれていますが、日本ではIT化の延長線上にDXをとらえている経営者が多く、どうしても企業のバックエンドやミドルエンドに目が向きがちです。
しかし、たとえば経済産業省が提示するDXの定義をみると、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを元に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とあります。
定価:1,980円(本体1,800円+税)
四六判 232ページ
ISBN978-4-88335-545-7
組織におけるDXの目的とは市場環境が目まぐるしく変わる中においても競争上の優位性を確立すること。そのためには、顧客やユーザーにとっての価値を創出し、選ばれる組織になる必要があります。
そう考えると、バックエンドやミドルエンドではなく、顧客と向き合っているマーケティング部門、広告部門、広報部門などにとってのDXとは何かを定義する必要があることがわかります。
そこで本書では、顧客と向き合っている企業のマーケティング部門、広告宣伝部門にとってのDXとは何かを明示しようとしています。DXは企業の資材、製造・物流・販売マーケティングなどバリューチェーンを串刺しにして、デジタル化によって従来ではできなかった新しい価値を創出しようとするものです。単に効率を高めるだけでないということがポイントです。
ひとことでいうと、広告・マーケティング部門にとってのDXとはCX(カスタマー・エクスペリエンス=顧客体験)をデジタルで最適化することです。
そして当然ながらデジタル化は目的ではなく手段です。目的はあくまで顧客体験の最適化にあります。ただ、この目的の実現のためには、顧客に向けたあらゆる施策の企画実施プロセスに大きな変革が必要で、そのプロセスの大変革にデジタル思考が欠かせないのです。データ活用はその一部にすぎません。
