5月6日の読売新聞、その1面に掲載された突き出し広告。そこには、けらえいこさんの漫画『あたしンち』の「お母さん」が登場し、こんなコピーが書かれていた。
「あのぉ、明後日って何の日だったっけ?(ソワソワ)」
そしてページをめくると、9面にはさらに大きくなったお母さんの5段広告が。
「もうすぐ母の日かぁ…あ、だからって、プレゼントとかはいらないからね。(チラッ)」
さらに11面に進むと、今度は7段広告が登場。お母さんは眉をひそめながら切々と次のように訴える。
「いらないからね。いらないからね。本当に。(チラッ)」
ページをめくるたびに、お母さんがどんどん迫ってきて、13面ではついに顔がアップの15段広告に。
「母の日のプレゼントは、いらないからね。本当に。」
この広告の締めのキャッチフレーズは、「お母さんにありがとうを贈ろう。」。これは、ユニクロが、母の日のギフト広告として5月8日に出稿したものだ。新聞4ページにわたり、お母さんの気持ちを表現したこの新聞広告は掲載されるや否や、SNS上で大きな話題を集めた。
「ユニクロの担当者の方々をはじめ、スタッフみんながワンチームとなって生まれた広告です。企画をする中で、母の日の広告というと贈る側の気持ちばかり考えがちだけど、受け取る側のお母さんはこの日をどう思っているんだろうという話になりました。これまで表現できていない、お母さんの本音があるのではと」(コピーライター 栗田雅俊氏)
お母さんについてあれこれ考えていく中で、母の日を覚えていても、あえて主張はしない。プレゼントをちょっぴり期待していても、いらないと言う、そんな優しい嘘をつくのがお母さんという存在なのかもしれない、と思い至ったという。
母親ならではの優しさと、愛すべき本音。そんなお母さんを表現するべく選ばれたのが、漫画『あたしンち』のお母さんだ。生身の人間でやると生々しくなりそうなところを、ユーモラスに、チャーミングに表現してくれるのにぴったりなキャラクターだった。
4ページにわたって掲載された広告では、お母さんが「いらないからね」という口調とは裏腹に、どんどんこちらに迫ってくる。
「ただキャラクターを挿絵として使うのではなく、本当に自分の方にお母さんが寄ってくるかのような体験を最大化すべく、お母さんの目線は新聞を読む人と目が合うようにカメラ目線に。あえて同じような絵にしていますが、その中でも、眉や、手の仕草、赤く染まる頬など、一つ一つ微妙に違うお母さんを『あたしンち』作者のけら先生に描いていただき、可愛くもリアリティを出すことができました」と、アートディレクター 玉置太一氏。



