こんにちは、電通zeroのクリエーティブ・ディレクター 嶋野裕介です。2017年~19年、21年とアドタイでカンヌライオンズのレポートをしています。
さて、3年ぶりの現地開催となった今年のカンヌライオンズ。欧米は参加者数、受賞作とも活気があり、コロナ禍を一足先に抜けようとする意識を感じました。一方で渡航条件の厳しさなどから、日本人の参加者数は例年より少ない印象でした。
カンヌライオンズ全体では部門数が昨年から1つ(クリエイティブBtoB部門)増え29まで拡張し、「全体傾向」を掴むのはますます難しくなってきました。上位受賞作は欧米型のグローバルイシューを起点にしたものが独占し、日本勢はやや厳しい結果に。ただ、今後のヒントとなるような個性豊かな応募作も多く存在し、現場プレイヤーの感覚としては「日本でも展開できそう」なものも沢山ありました。
ですから、今年のカンヌレポートは2つに分けました。
第1弾(A面)は、日本の広告主・エージェンシーが知っておいて損はない「クリエイティブなマーケティング企業」の紹介、
第2弾(B面)は、いちクリエイターとして私個人が興味をもった作品や使えるメソッドの紹介を、書いていこうと思います。
ではまずはA面。現代の「クリエイティブなマーケティング企業の事例」からお話しします。
1.FILMの絶対王者「APPLE」
カンヌにおいて「クリエイティブ」な企業の代表はもちろん、Appleだと思います。例年数多くの受賞作を輩出していますが、今年は特にFILMのクオリティが素晴らしかったです。
「Escape from the Office」はFILM部門のグランプリ、FILM CRAFT部門のゴールドを受賞。
「Detectives」はFILM部門のゴールド、FILM CRAFT部門のシルバーを受賞。
めちゃくちゃいいですよねー。何回見ても飽きない!
彼らの広告マーケティングの方向性は明確。「最高のプロダクトには、最高の機能訴求を」だと思います。「使い方」を真ん中に置いてそれを最大限魅力的に見せるという、最もシンプルかつストロングなスタイル。商品機能を、これだけエンターテインメントとして描こうという意思をもつ会社は稀有で、FILM部門での圧倒的な王者だと感じます(今年は競合のSamsung「Galaxy」の「the Spider and the Window」もかなり高いクオリティでした)。

