1976年から続く新潮社の夏のフェア『新潮文庫の100冊』は、中高生、大学生など若い読者に向けて古今の名作傑作100点を選定し、全国の書店で展開している。本年度のフェアの開催に伴い、同社では今年7月2日から4日にかけて、朝日新聞、中日新聞をはじめとする全国14紙に広告を出稿した。
今年の広告は「この夏、100冊を読む100の理由」というキャッチフレーズのもと、「今までの常識がひっくり返ったり…」から始まり、「目の前の世界をちょっとだけ美しいと思うようになったりするから。」で終わるボディコピーが続く。
広告を手がけたクリエイティブディレクター 吉岡丈晴氏は、「今年は読んだあとどんな気持ちになれるか、『読む理由』を100冊ぶんボディコピー化しました」と話す。
「新潮文庫の100冊」のあたらしい広告シリーズは、2015年にスタート。「キュンタ」というロボットのキャラクターと「この感情は何だろう。」というスローガンで、新聞広告を展開してきた。当初の広告では、新潮文庫のあたらしい顔であるキュンタとともに、同社からのメッセージをまっすぐに伝えることで、「今年の夏も『新潮文庫の100冊』が始まる」ことを伝えていた。
「それはそれで好評だったのですが、2018年に『新潮文庫の100冊』の顔は、新潮文庫の『100冊』そのものではないか、ということに気づきました。これほど多様性があり、面白く、そして名作ばかりを堂々と『100冊』も揃えられるのは新潮文庫ならでは。そのとき、100冊のタイトルを使ってボディコピーを書くというアイデアが生まれました」
そのアイデアを実現したのが、2018年に出稿された下記の広告だ。コピーを担当した今井容子氏は、この広告で2019年度TCC賞新人賞を受賞した。
広告出稿後、ボディコピーを読んで「わかる」「わからない」とタイトルを推測する人や「ありがとう新潮文庫」とお礼を言う人など、さまざまな声がSNS上で上がり、その反響の大きさを実感したという。以降、新潮文庫の「100冊」そのものを顔にした、「新潮文庫の100冊」広告が展開されている。

