他の書店とは違う空間で新しい書籍に出合う
――主な客層と売れるジャンルを教えてください。
当店は、校正・校閲の会社「鷗来堂」が運営をしています。開店当初のラインナップは「鷗来堂」の社員が中心になって選んだものですが、それらを軸としながら現場のスタッフが選書をしていき、今に至ります。そういった流れからか、日本語やことばにまつわる本は人気があります。神楽坂周辺には出版社や印刷・製本会社が多いので、編集やデザイン、出版関連の本もよく売れていますね。
客層については、普段神楽坂に住んでいる方を除くと30代から40代の女性が多いですね。休日になると学生や20代くらいの方が増えてきます。気軽に読めそうなエッセイ、食や生活にまつわる書籍を手に取る方が多い印象です。
――店舗が賑わう時間帯はありますか。
平日だと、お昼ごろと夕方が賑わいますね。会社の帰りに来店するお客さまも多いからだと思います。手前にカフェがあるのでそれを見つけて立ち寄ってくれる方もいらっしゃいます。
――かもめブックスならではの特徴や、他店との差別化を図っている点は。
カフェが併設されていたり雑貨が置いていたりする書店は他にもあると思いますが、やっぱり書籍がただ並べられているだけでは立ち寄りにくい方もいるかもしれない。立ち寄りやすい書店という雰囲気にはこだわっていますね。
より多くの書籍を並べることだけを優先するならもっと棚の数を増やすこともできます。でも、あえて余白や抜け感を意識することで、お客さまの隙間に入り込めるような雰囲気にしていければと思っていますね。
書籍は社会を映す「鏡」、書店としての価値観を発信する
――店舗で力を入れている部分を教えてください。
どうやったらいろんな人に来てもらえるか?は意識するようにしています。「WEEKENEDERS COFFEE All Right」は独立したカフェとしても十分認知されてきましたので、書店目当てでないお客様もたくさんいらっしゃいます。絵本や児童書を少しづつ充実させてきたので、お子さま連れにも楽しんでもらえるようになりました。
また、他の書店とはジャンルや見出しの付け方が少し異なっています。ひと目でどんなジャンルなのかが分かるよりも、抽象的な見出しのほうが実際に手に取ってみたくなるはず。
「ビジネス」「アート」「人文」といった分け方はしておらず、大きくそのような見出しを陳列することもしていません。なんとなくその雰囲気が伝わるようなタイトルを考えています。
――選書の際のこだわりや工夫している点はありますか。
一番かもめブックスらしい棚は「特集棚」ですね。3週間毎にテーマを変え、入れ替えています。テーマは私と店長で決め、あとはスタッフそれぞれに並べる書籍を自由に選んでもらっています。
やわらかいタイトルのほうがやっぱりとっつきやすいとは思うのですが、社会の価値観を発信することも書店の大切な役割。雑誌の特集なども参考にしながらタイトルを考えていますね。
そうして集まった書籍のなかから、重複したものなどをはぶきつつ、70から100冊の書籍が最終的に残ります。客層などを考慮してバランスをとるのも大切ですが、ほんとうに良いと思える本を1冊1冊選ぶことも大切です。
この「特集棚」を入れ替えるたびに買っていかれるお客さまもいますし、直接「今回の特集すごく良かったよ」と声をかけてくださるお客さまもいらっしゃいます。特集のタイトルやテキストを考えることはやはり手間がかかるものですが、このような反響があると「やっていてよかったなぁ」と思いますね。
かもめブックス
東京都新宿区矢来町1-2-3 第一矢来ビル1階
開店年:2014年
営業時間:11:00~21:00(現在は20:00までの短縮営業中)
定休日:水曜日
担当者おすすめの1冊
『じゃむパンの日』
赤染晶子著
本を読む楽しさは、結局のところ「文章の面白さ」につきます。そして「文章の面白さ」の大部分は「視点や視線の面白さ」に拠っています。しかし「視点や視線の面白さ」という技術だけで書かれた文章は劣悪な模造品にもなりかねません。赤染さんのユーモラスな視点や視線の源には、その人の「純粋さ」や「優しさ」みたいなものがあるように思います。文は人なり。替えが効かないものこそ、いつまでも愛されるものであってほしいです。
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