前編「ブランドに関する悩みのほとんどは『パーセプション』に行き当たる」はこちら
デオドラント市場で計画比180%を達成
――前編では、エキップ社内で「パーセプションフロー®・モデル」を導入することで、共通認識が得られるようになったこと聞きました。後編では、ブランドの取り組みと消費者の「パーセプション」の変化について伺います。
鳥橋
:エキップのスキンケア&ライフスタイルブランド「athletia(アスレティア)」の取り組みを紹介します。アスレティアは、アクティブに生きるすべての人のライフスタイルをサポートすることをブランドパーパスにしています。コロナ禍の2022年4月に新商品として「refreshing deodorant mist(リフレッシング デオドラント ミスト)」を発売しました。
この商品の機能は、既存の制汗剤が目指していた汗をおさえることではなく、汗をかいたときのニオイをおさえる効果が特長です。汗をかくこと自体は心身の健康にもつながるので、汗をおさえるのではなく、むしろ気持ちのいい汗をかきましょうという新提案をし、パーセプション変容を目指しました。
「athletia(アスレティア)」はデオドラントで「気持ちのいい汗をかこう」と提案した
デオドラント市場は2010年頃までは伸び続けていました。その後は高止まりが続いていましたが、コロナ禍によるステイホームの影響で2020年に大きく縮小しました。2021年からは回復しつつあるものの、競合がひしめいている状況にあります。
こうした環境で、パーセプションを変えることで新しい市場をつくり出すことを目指しました。その結果売り上げも好調で、計画比180%を3カ月で達成し、ブランド内でも人気のアイテムとなっています。
本田さんの著書を読んで、改めてパーセプションの変容がうまくいった要因を考えました。そして、ここがポイントかなと思うことが三つありました。
一つめはカテゴリー単位でパーセプションの変容を起こしたこと。商品単体というよりも、デオドラント市場全体に新しい価値があるのでは、という提案ができたと考えています。
二つめは、パーセプションとブランドが重なったところに本質的な「オーセンティシティ(正統性)」が生まれるという記述がありましたが、アスレティアについてもパーパスや機能とパーセプションが交わるところにオーセンティシティが生まれ、消費者にも届いたのではないか、ということです。

