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社内にロールモデルがいない「ひとり広報」 社外との交流でお手本となる人に出会うには? 「広報の仕事とキャリア」リレー連載 朝倉慶子(スタディスト)

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写真 人物 プロフィール 朝倉慶子氏

朝倉 慶子
スタディスト 広報室 室長

2015年4月より、株式会社スタディストにてマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」と実行力向上支援システム「ハンクラ」およびコーポレートの広報責任者を務める。「経営課題を解決する広報」を信条とし、さまざまなコミュニケーション手法を通じてステークホルダーとの信頼構築に邁進。2022年からは社内のDE&I推進にも取り組む。趣味は釣り。

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えてきたのでしょうか。
横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。小池亮介さんからの紹介で今回、登場するのは朝倉慶子さんです。

Q1:朝倉さんの現在の仕事の内容とは?

マニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」を主力事業とするスタートアップのスタディストで広報の責任者を務めています。2015年の入社以来、ずっと「ひとり広報」として事業、コーポレート、社内広報等を担当してきましたが、昨年11月より晴れて2人体制となり、現在はチームとしての広報のあり方や人材の育成を模索中です。いわゆる広報業務にとどまらず、ユーザーイベントの企画・運営や導入事例のインタビュー、DE&I推進も担当しています。

 

Q2:これまでの職歴は?

新卒で製造業のインクス(現SOLIZE)に入社、2年ほど営業事務をしていました。その後、当時新規事業としてスタートしていたオンライン3Dプリントサービスの運営担当者に。キャンペーンや展示会出展を企画してみたり、インサイドセールスのようなことをやったり、SNS広告を出してみたり、とにかく何でも屋さんという感じでした。

その後、上司の異動に伴い、運営責任者となりました。同時期に世の中で急に「3Dプリンタ」が大流行。見よう見真似でプレスリリースを書いてみたらウェブメディアに取り上げてもらうことができ、そこからテレビの取材が何本も続きました。情報の連鎖を体感し、今から思えばこれが広報としての原体験でした。

その後リクルートで渉外職として進学事業に携わっていましたが、インクス時代の先輩がスタディストを起業しており、広報としてジョインしてほしいと声を掛けられました。事業の可能性やミッション・ビジョンに強く共感して入社を決意、現在に至ります。

 

Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

その事業や企業のミッション・ビジョンを「心の底から良い!」と思えているか、を大切にしています。広報のプロならば、自分の感情にとらわれずやるべきことをやっていくべきなのかもしれませんが、残念ながら私は自分のなかに少しでも嘘の気持ちがあると頑張れなくなってしまうタイプなので、譲れないポイントです。

また「三方よし」が実現できることも重要です。自分や自社だけが良いという仕事ではなく、世の中に本当に価値のある仕事をしていきたいと考えています。

私は広報としては現職の1社しか経験していないのですが、副業は何社か経験があります。その際は、自身のスキルを活かして価値提供ができることは大前提としてありつつも、本業では経験できない領域や企業規模の案件を受けることで経験値を上げられることを意識しています。

 

Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何?

主に感じていることが2つあります。

1点目は、広報の役割に対する経営陣からの理解です。特にスタートアップの広報さんとお話をしていると、どうしても「マーケティング的な役割ばかり求められる」「広報は中長期での成果が大きいのに…」といったお悩みを伺うことが多い印象です。

たしかに広報活動の成果は、なかなか数字で測りきれない部分が多いことも事実です。一方で、経営としては「広報担当者」という「ヒト」に投資をしているわけで、いつまでもその投資効果が見込めないのでは困ってしまいます。

個人的には、たとえば「メディア露出経由のリード獲得数」「サービス認知度」といった算出しやすい成果を数字で示しつつ、中長期の取り組みも並行して実施していくことで、社内理解を得やすくなりますし、経営陣からの信頼も獲得してより幅広い業務を担当できるようになると考えています。「こんなのは本質的な広報活動じゃない!」という広報のプライドにがんじがらめになることなく、しなやかさとしたたかさを持つことも大切ではないでしょうか。

2点目は、ロールモデルと出会う機会の少なさです。大手企業で数十名規模の広報組織があれば、先輩の姿から学ぶこともあるかと思いますが、特にスタートアップや中小企業の場合、社内に広報担当者がひとりということも少なくありません。

現在は様々なコミュニティがあり、社外にお手本となる方をつくることもできますが、「ロールモデル」と感じられる年齢層の方の参加は少ない印象です。コミュニティに所属せず黙々とご自身のお仕事に邁進したり、特定の企業の広報やメディアとの集まりにしか参加しないような方も多いように感じます。

一方で、トラディショナルな会合のようなものに参加してみると、こんな方がいらしたのか!と驚くような、素敵な出会いがあるものです。身近なひとやSNSの情報だけでなく、少し離れた場所に目を向けてみたり、普段会わない人に会うことで、お手本の引き出しを増やしていけると良いと思います。

 

Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?

個人的な人生のテーマとして「選択肢にあふれた社会をつくる」を掲げています。人は何かを選ぶとき、知っているものの中からしか選べません。また、他の選択肢を知らないことにより追い詰められてしまうようなこともあります。そして、選択肢の多くはコミュニケーションを通じて提供されるものです。

当面は事業会社の広報としてスキルアップにつとめ、引き続きチーム作りにも取り組んでいきますが、将来的には広報の仕事を通じて得たコミュニケーション手法を活かし、困っている誰かにそっと選択肢を提示するような仕事ができればと考えています。

【次回のコラムの担当は?】

アクセンチュア広報室長の神田健太郎さんをご紹介します。IT業界の大先輩で勝手に師匠と思っており、お仕事のスタイルやコミュニケーションにおいても尊敬する部分の多い方です。

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