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「新しい古紙再生」、富山県高岡市が市の発行物の「ヤレ紙」を使用した名刺・封筒の活用を開始

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富山県高岡市は、2023年10月から広告印刷で生まれる『ヤレ紙(品質保持のための調整用損紙)』を使った名刺や封筒の本格活用を開始した。


写真 製品、商品 ヤレ紙(品質保持のための調整用損紙)

チラシ、パンフレットやポスターなど一般的な印刷製造のテスト印刷段階で発生してしまうのが、試し刷り用の損紙(通称ヤレ紙)。これは印刷品質を安定させるためのプロセスとして避けられないもので、全国で大量のヤレ紙が毎日生まれている。それに着目したのが、クリエイティブスタジオROLE アートディレクター 羽田純氏だ。

羽田氏は普段からヤレ紙を有効活用する方法を印刷所などへ相談し模索していたが、印刷物の権利問題などが障壁となり、大きなアクションへつなげることに苦戦していた。そんな中、2022年秋に同社が開催した再生古着ブランドの展覧会「ROLE YOURS」で、ヤレ紙にホワイトを印刷し、その上から展覧会の情報を印刷したDMを制作した。

「『作らないを作る』をキーワードにした『ROLE YOURS』というコンセプトを立ち上げておきながら、お知らせの案内状に紙資源を使うという矛盾がどうしてもあって、DMにヤレ紙を使うことになりました。このヤレ紙に関しては以前から印刷会社に何度もアプローチをかけてきたけど非常に後ろ向きで実現が難しかった経緯があり、このように自身の展示でまずは自主制作的に前例を作るしかありませんでした」(羽田氏)

このときのDMが、角田悠紀・高岡市長の目に留まり、そこから同市未来課が担当となって事業検討を進めた。

「『市の公式な発行物であれば権利関係は市で管理できるので、ヤレ紙を利用して再び市の印刷物に転用ができるのでは』という視点から、職員名刺に採用してみようと、高岡市と『新しい古紙再生』プロジェクトがスタートすることになりました」(羽田氏)

今回、名刺・封筒の原料として使用したのは、高岡市が発行したポスター・パンフレット。

同じルールで元々の印字面を部分的に塗りつぶして、名刺、封筒として再生した。初期段階は名刺のみの予定であったところに、同市未来課より「環境イベントや来年の20歳の集いで配布する封筒も作り、若者世代へ訴求するのはどうか」と積極的な意見が出たという。

「ヤレ紙を『印刷済みの紙』という資源と捉え、その素材を活かしながら加工することで、デザイン性という新たな価値が加わった紙製品に生まれ変わりました。これらを手に取った市民・事業者の皆様が、資源が持つ価値を見つめ直し、資源や製品を循環させる中で付加価値を生み出すきっかけになることを期待しています」と、同市未来課 鈴木亮平氏。

「高岡市では以前から再生紙も使用しており、このプロジェクトはリサイクルそのものを否定するものではなく、環境行動に対してこれまでとは違ったアプローチから関心を高めることに繋がればと考えています。印刷物の隅に『この紙は〇〇%の再生紙を使用しています〜』というメッセージよりも、もともと印刷されていたものの気配をあえて残すことで、資源の循環をより意識できるように工夫した実験的な試みです」(羽田氏)

ヤレ紙を使った名刺や封筒は、10月以降からの環境イベントなどで本格的に配布が始まる。高岡市ではこの施策を一過性の取り組みで終わらせることなく、今後も継続していくことを検討している。

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写真 製品、商品 ヤレ紙(品質保持のための調整用損紙)