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コラム

BtoB企業のコピーって、どう書いたらいいですか?

名前は知られていても、事業は知られていない。新生パナソニックの「伝え方」(後編)

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前回のコラムでも触れたように、パナソニックのBtoB事業のユニークな点として、消費者と関わりのないところで黒子のように社会を支えているというより、消費者の身近なところで日々のくらしを支えている点が挙げられます。

目にしている。利用もしている。でも、それがパナソニックの製品であることは知らない。そのようなBtoB事業を数多く擁しているため、パナソニックのオウンドメディア「Make New Magazine」ではさまざまな事例を記事で取り上げています。

中でも「#こんなところにパナソニック」というシリーズ企画では、スーパーマーケットで生鮮食品や冷凍食品を陳列している「冷凍・冷蔵ショーケース」、高速道路のトンネルに設置されているジェット機のエンジンのような「換気送風機」、映画館でもよく目にする緑色の「誘導灯」などのBtoB事業を紹介しています。いずれも雑学的なおもしろさがあり、人気の記事となっています。

Make New Magazineより(サムネイルイラスト:Adrian Hogan)。

社員のモチベーションを上げるメディア活用

ここで、みなさんの中には、オウンドメディアを活用するといっても、星の数ほどもあるウェブコンテンツの中でいったいどれほどの人に読んでもらえるのか、と考える方もいると思います。確かに、どんなに充実したコンテンツを用意しても、知られなければ存在しないも同然です。その点に関しては、やはりSNSを中心とするデジタルの活用が重要となります。

パナソニックの場合は「Make New Magazine」と連動したSNSアカウントを開設し、情報発信を常におこなうほか、デジタル広告も制作し、YouTubeやデジタルメディアで発信しています。従来であればマス広告で花火を打ち上げ、その受け皿としてオウンドメディアを用意するのが定石でしたが、現状のメディアへの接し方を分析し、オウンドメディアを起点に着実に認知を拡大していくという、逆の流れを構築しています。

メディア戦略の概念図。

2021年にマスコミ四媒体の広告費の総計を超え、主流のメディアとなったインターネットですが、マスコミ四媒体が比較的シンプルに設計できるのに対して、インターネット広告は成果報酬型広告、検索連動型広告、ディスプレイ広告、動画広告などに細分化されるため、さまざまな変数を掛け合わせる、緻密なメディア設計が求められます。その中にあってオウンドメディアは「情報の確かな発信拠点」として、いわば変数に対する定数として機能するものと捉えています。とりわけ重要なステークホルダーである「社員」のモチベーションを上げるという点で、他メディアにはない強みがあると思います。

コピーライターの新領域とは?

さて、ここまでBtoB事業の伝え方として、メディアを「どう使うか」について説明してきましたが、最後に僕の本業でもある「どう書くか」について、お話ししたいと思います。

「Make New Magazine」では基本的に専門のライターの方々が記事の執筆をおこなっていますが、コピーライターである僕が執筆を担当することもあります。

たとえば、先に挙げた冷凍・冷蔵ショーケースの事業では、さらに深掘りするために、パナソニックの事業分社である「コールドチェーンソリューションズ社」の片山栄一社長のインタビューを記事にしており、取材から構成、執筆までを僕がおこなっています。それは通常のコピーライターの仕事を逸脱しているともいえますが、コピーライターの領域を広げるという意識を持ちながら、僕は積極的に取り組んでいます。企業ブランディングの根本から携わるコピーライターだからこそ、持てる視点や書ける内容があると考えるからです。

Make New Magazineより。

僕はこのようなライティングを『広告批評』元編集長で編集者・執筆者の河尻亨一氏から直接薫陶を受けました。河尻氏はこのようなブランド構築を目的とした手法を「ブランデッドライティング」と呼び、その可能性の大きさを示唆していますが、僕はその考えに深く共感します。一般の生活者に馴染みのないBtoB事業を短いキャッチフレーズだけで伝えることは難しい。だからこそ、十分な言葉を費やし、丁寧に伝えていく必要があります。このようなアプローチが可能なのも、企業が世の中に伝播できるメディアを持てる「今」ならでは、と思うのです。

 

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