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コラム

SNS時代のマーケティングを問い直す(新刊発売記念コラム)

「枠」から「人」への概念をいま一度検証する

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新刊『SNSから抽出するパーセプションでつくる ビンゴ型コミュニケーションプランニング』の発売を記念して、著者の一人である横山隆治氏の期間限定コラムを掲載します。本書の中で取り扱うマーケティングの概念を紹介していきます。2回目のテーマは「枠」から「人」へ です。

書影

私が提唱してきた4つの概念

前回の原稿では、『ビンゴ型コミュニケーションプランニング』の中で新たに提唱した概念「UBP(ユニーク・バイイング・プロポジション)」を紹介しました。以降このコラムでは、これまで筆者が提唱してきた

① 「枠」から「人」へ
② トリプルメディア
③ 視聴質
④ GRP(%)をインプレッション数へ

の4つについて、ずいぶん時間が経っていたり、これから活用するためにどうするべきかなどについて書きたいと思います。

いずれにしても、提唱してきた概念をいま一度検証したいと思います。

まずは、「枠」から「人」へから。

リターゲティング広告の登場と共に生まれた概念だった

これは2006年に宣伝会議から出版した『究極のターゲティング』で使った言葉ですから、18年前にもなります。

私がクッキーによって各ブラウザを特定してブラウザごとに違う広告を配信できるという技術に触れたのは、1996年です。当時米国で検索サイトとしてはヤフー!と双璧だったインフォシークが技術的には既に実現していました。

当時私はこの仕組みこそが広告を革命的に変えると確信していましたが、周囲の広告マンたちにこれを説明するのにはずいぶん苦労しました。

今では当たり前の「リクエスト」や「リダイレクト」をいうワードについて来れる人は少なったので、「ユーザーがアクセスしてくるコンテンツページと広告スペースの画像を配信するのは別のサーバーで…」と何度ホワイトボードに描いたか知れません。

この1996年は電通が「日本の広告費」で初めてインターネット広告をカウントした年で、たしか16億円だったと思います。まさにネット広告元年からこの仕事に携わってきて、今年は3兆3330億円と、なんと2000倍以上です。隔世の感とはまさにこのことです。

このころのターゲティング配信はクッキーを使ったブラウザごとよりも、OS別(UNIXでのアクセスだから情報システムの人だろう)とかニッチなところに目掛けていろいろ工夫していたと思います。ただこうしたターゲティングをするとクリック率が20%とか今では考えられないリスポンスがあったものです。

さて、「枠」から「人」への概念は、2000年代初頭にリベニューサイエンス社の技術で、当時「リターゲティング」ではなく、「オーディエンスリードバック」と呼んでいたターゲティング配信広告を販売し始めたころに提唱したものです。

ブラウザのアクセス履歴に応じて、ブラウザごとに広告を配信する。これこそ「枠」から「人」へだった訳です。

広告が掲載面ではなく、ブラウザ目掛けて配信するということは革命的でした。その後これほどリタゲが市場を拡大するとは思いませんでしたが、SEMの効果が落ちて来るとリタゲをという流れは定着しました。

クッキー制限をきっかけに、ターゲティング手法が再考

このブラウザごとの配信がクッキーによるものなのはみなさん周知のことですが、サードパーティクッキーが制限されるというニュースが出始めてから、リタゲが出来なくなるとするとそれに代わるものは何かを探し始めます。

「枠」から「人」へが再考される時代に入りました。

しかし、クッキーの制限があるからだけがその原因ではありません。

サーチ(検索連動型広告)は、文脈だけではなくタイミング(検索行動に対してカウンターで広告を出す)が最適化されます。また広告もコンテンツのひとつと認識されます。しかしリタゲは、関心の度合いも様々、タイミングを逸している可能性、そもそも広告にネガティブ…など、考え直すべきことがたくさんありました。

やはり掲載面のコンテンツでターゲティングした方が良いのでは?とか、「関心がありそうな行動をした」人をターゲティングするだけでは、効率は良いかもしれないが、効果の絶対量が獲得できないということにも気づき始めたと言えます。

もうひとつ、おそらく最大の要因は、個人情報に関する企業としての姿勢の問題になっていて、技術的にクッキー代替技術があればいいという話ではないということです。これは企業にとってリーガルマターというより企業ポリシーの問題で、企業のレピュテーションに非常にシビアに関わります。

AIも活用しながら、クリエイティブの「最適化」へ

そうした環境が、もう一度掲載面(コンテンツ)を再考しようとか、コンテキストターゲティングにもう一度トライすべきとか、従来からあるターゲティング手法を見直そうとなっているかと思います。

それも人を特定しても、人はコロコロ変わってしまうことが分かってきたからでしょう。SNSが定着して人は影響される情報が拡大に多くなりました。その昔(ネットがない時代)でも購買に一番影響されるのは口コミだったはずです。SNSは消費者の感想、意見、推奨、ほかの情報の渦です。

「枠」から「人」へはむしろ元に戻っていますが、まったく昔のそれ(枠)ではないのだと思います。その答えはAIにあるでしょう。

そもそもターゲティングとは同じクリエイティブで配信対象を最適化することではありません。対象によってクリエイティブを最適化することがより求められるのです。

これからは掲載面に対するネイティブなクリエイティブであったり、動的な最適化がAIによって行われるでしょう。

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写真 人物 横山隆治氏

横山隆治(よこやま・りゅうじ)
横山隆治事務所(シックス・サイト)代表
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ 取締役
トレンダーズ株式会社 社外取締役

青山学院大学文学部英米文学科卒、ADK(旧旭通信社)入社。1996年DAコンソーシアム起案設立、代表取締役副社長就任。黎明期のネット広告の理論化、体系化を推進。2008年、ADKインタラクティブ代表取締役社長就任。2011年デジタルインテリジェンス代表取締役社長、現横山隆治事務所(シックス・サイト)代表。企業のマーケティングメディアをP・O・Eに整理する概念を紹介。主な著書に『トリプルメディアマーケティング』(インプレス)、『広告ビジネス次の10年』(共著、翔泳社)、『CMを科学する』(宣伝会議)ほか多数。

書影 SNSから抽出するパーセプションでつくる ビンゴ型コミュニケーションプランニング』

『SNSから抽出するパーセプションでつくる ビンゴ型コミュニケーションプランニング』(横山隆治、トレンダーズ株式会社著)定価:1,760円(本体1,600円+税)

マーケティングファネルやカスタマージャーニーモデルはもう破綻している。なのに違和感を持ったまま使い続けていませんか?「順列」のジャーニーモデルから「組み合わせ」のビンゴカードモデルへ。SNS時代ならではのコミュニケーション設計手法を提唱。