赤松隆一郎さんに聞く音楽とAI  AIを活用すればするほど、クリエイターとしての本質が見えてくる

本コラムでは、さまざまな領域の方にAIの活用について聞いていきます。対談の2回目はさまざまな広告のCDとして活躍しながら音楽活動を続けている、 クリエイティブディレクターの赤松隆一郎さんにインタビューしました。

聞き手:石川隆一(電通デジタル)

赤松隆一郎さん(右)と石川隆一さん(左)

自分の楽曲をSnowAIで試してみると…

石川:赤松さんは広告の仕事と並行して、ずっと音楽活動を続けていらっしゃいます。僕自身も現在の仕事に就く前は音楽をやっていたこともあり、今回は音楽をテーマにAIのお話ができたらと思います。

赤松:AIに詳しくて音楽をやっている人は他にもいっぱいいますが、僕で大丈夫でしょうか(笑)。

石川:広告やクリエイティブのお話をぜひ、と思ったので。

赤松:そういうことであれば、よろしくお願いします。

石川:昨年あたりから「生成AI」が注目されています。ビジュアル面がクローズアップされがちですが、音楽での活用も始まっています。代表的なものだと、昨年発表されたビートルズ最後の新曲。あの曲についてはAIのよい使い方だなと思いつつ、僕はちょっと違和感を覚えていて…。

ビートルズ「Now And Then」のMV

赤松:それはどのあたりに?

石川:この曲、元はジョン・レノンが一人でピアノを弾きながら歌っていたものだそうです。そこからAIを使ってジョンの声を抽出し、背景音などのノイズを取り除いて、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターが楽器やコーラスを載せていったと聞いています。元歌から切り離して、クリーニングして、もう一度くっつけたというプロセスを経ていることもあって、最終的にできあがった曲になんだか違和感があって。うまく言えませんが、人間っぽさを感じないというか。元のオリジナル曲がどんな感じだったのか、気になりますね。

赤松:確かにAIと知らされなかったら、みんなどんな風に聴くのかなとは思いますね。

石川:赤松さんは、あの曲をどんな風に聴かれましたか。

赤松:僕はAIを使ってつくったということより、ああ、またこういうかたちで集まることができたんだ、それで一つの音楽を奏でることができたんだ、と小さく感動したというか。自分が熱烈なビートルズファンではないということもあって、そことはやはり温度差があるというか、ふーんという感じでした。でもやはりあのMVを見たときは、揺さぶられるものはありました。

石川:ビートルズというバンドだからこそ、というのもあるでしょうね。

赤松:生成AIを考えるとき、音楽をやっている自分の見え方としては大きく2つ使い方があると思っていて。曲や歌詞をまるっとAIで書いてもらいたい人のためのAIと、ある程度まで人がつくったものを最後に仕上げるためのAIという使い方です。

前者で言えば、「映画やドラマの劇伴やBGMもAIで生成します」と安価で請け負う人も出てきています。後者は、自分でレコーディングして最後のミックスやマスタリングの段階で活用する場合。これまで地道に自分の手と耳を頼りにミックスやマスタリングをしていたのが、iZotopeなどのソフトをプラグインとして使用することである程度まではAIが自動的にやってくれわけです。「音楽でAIを使っている」という人は、ほぼその2つのイメージですね。

石川:そこがいまもう一つ進んで、昨年Fivio ForeignというアメリカのアーティストがAI作曲サービスSOUNDRAWで生成した楽曲「Doin me」をリリースしました。しかも、それをメジャーレーベルから出している。おそらくそういうかたちでメジャーレーベルからリリースされたのは初めてではないかと思います。

Fivio Foreign 「Doin Me」 (Feat. SOUNDRAW)

石川:こういうデジタルサウンドはAIのはまり方がいいというか。この曲を聴いて、AIを使って楽曲をつくり、リリックも書く、という次世代が今後増えてきそうな予感がしました。

赤松:SOUNDRAWって、どんな楽曲でもつくれてしまうサービスですよね?

石川:そうです。そうやって楽曲をつくることは、クリエイティブにおいてポジティブなことなのか、ネガティブなことなのか、個人的にはとても気になっています。

赤松:石川くんと今回、この対談の機会を得たので、自分でも音楽生成AIの「Suno AI」を試してみたんです。僕が2022年に出したアルバム『祝祭』の中から「ケモノ」という歌詞を丸っと入れてみたんです。

この曲は「共同体からの逃避」と「愛」をテーマにしていて、自分の頭の中に描かれていたのは、真夜中に走っている1人の人間でした。その姿がどんどんケモノに変わっていくという漠然としたイメージを起点に歌詞を書いたのです。その歌詞を「Suno Ai」に読んでもらい、そこに「ドラマチック」「ロック」「夜」という言葉を入れてみたところ、生成された曲はこんな感じに…。

(「Suno AI」を使った赤松さんの曲「ケモノ」を流す)

石川:すごいですね。

赤松:歌詞はそのままなんだけど、自分が考えた構成や譜割りとは全く違うものになっていて、意外にいいんですよ(笑)。

石川:確かに。普通に聴けますね。

赤松:「ドラマチック」「ロック」「夜」ときて、さらにここに「エレキギター」「ブリティッシュ」など加えると、また全然違うニュアンスや音がちゃんと入ってくる。その上、ジャケットもつくってくれる。

石川:わりと赤松さんのイメージに近いジャケットができているような…

赤松:まあまあそうなんですが、ちょっと違うんですよ(笑)。それで、自分が本当につくった曲は、こんな感じ。

(「ケモノ」の元歌を流す)

石川:ああ、いい曲…

赤松:AIで作った曲は、いきなりサビっぽく始まる。それは歌詞の区切り方としては、自分の中でサビと思っていたところとは違っていて。実際に試してみたら、そういう違いがわかって面白かったですね。

石川:アイデア出しには使えそう、という感じでしょうか。

赤松:AIが作ったものを聞いて、ああ、こうなるんだとわかってきて。「あなたは、〇〇〇です」と有名な作詞家の名前をいれて、「〇〇というタイトルのもと、歌詞を書いてください」と入れて何度か試しにつくっていくと、最後のほうはAIの言葉も出涸らしのようになってしまって。「これじゃなんいんだけどな、まあもういいか」というところにいきました。それは自分のプロンプトの入れ方にも問題があるのだと思うけれど、でもその途中で何度かハッとする単語は出てきました。つまり、自分だったら絶対に書かない言葉。

石川:でも、ポイントとしては的を射ている?

赤松:そう、結構いいなという。今後、その単語は使う可能性はあるかもしれないですね。

僕の周りの音楽関係者でAIを使って、ほぼAIで詞曲をつくってリリースしているという人はまだいなくて、どちらかというと、録音後のミックスや仕上げで使っている人が多いと思います。そういう点では便利だと思うし、これまで面倒だった作業をAIに任せることは今後も増えるでしょうね。一方で、曲をまるっと全部AIでつくることに関しては、まあ、それでいいと思う人はいいんじゃないかな、と思うので否定はしません。

AIの登場で、クリエイターはより本質的なところへと向かう

石川:最近、こんなAIがあるのは、ご存じですか。ある人の声をAIに入力するだけで、その人の声で既存の楽曲を歌ってくれるという「Diff-SVC」。

(宇多田ヒカルの声でAdoを歌うなど、この生成AIを使った音声を数曲聴く)

赤松:わー……すごい精度。ちょっと感動の領域です。桑田佳祐やトム・ウェイツみたいに声に特徴のある人にいろいろ歌わせてみたい。

石川:以前からボイスチェンジャーのようなAIは出ていて、その延長戦上にあるものだとは思いますが、例えば病気などで声が出なくなってしまったときや歌うことが苦手な人にとっては、自分の声で正確に歌うことができるようになる。2019年に美空ひばりさんの声をAIで再生し、新曲を発売した例がありますが、音声があれば、すでに亡くなってしまった人の声でも再生できると思います。

赤松:確かに、いい曲を書く人やいい声を持っている人で、歌うことが苦手という人もいますから、自分の曲と声をこのAIに入力すれば、それも解消できますよね。

石川:5年くらい前でしたか。赤松さんと一緒にAIで曲をつくり、アーティストさんに歌ってもらうという試みに取り組みましたが、あの頃はまだこんなに精度は高くなかったですね。

赤松:あの時は何度もやって、やっとこの人らしいフレーズが出てきたかな…という程度でしたね。その時に比べると、かなり進歩したわけですね。

石川:ちなみに、赤松さんの周りにいらっしゃるミュージシャンは、AIに対してどんな感想を持たれてますか。

赤松:僕が親しくさせてもらっているミュージシャンの高野寛さんは、AIをうまく楽曲制作に取り入れたり、これからのAIと音楽との関係性を探求されているように思います。僕の周りにはAIによって「何かが奪われる」「何かが失われる」と、敵視している人はあまりいないと思います。実際にそういうことを思い始めると、逆にいろんなものが止まってしまうから、僕自身も、そんなことは考えずに使えるところはどんどん使っていったほうがいいなと思っています。

日本の人口が減り、人手が減ってきているいま、これから何をするにしても生身の人間の力を借りることが難しくなってくる。そうなったときに、AIやロボットにサポートしてもらわなければ、もうこの国は立ち行かなくなってしまうかもしれない。そんな未来があるかもしれないのだからAIを敵視するんじゃなく、今から役立つところでどんどんうまく使っていくことが大事かなと思いますね。AIと当たり前に一緒にいる、あと何年かするとそういう状態が普通になりますよね、きっと。

それから、さっきの「Diff-SVC」の例で言えば、ある楽曲を、AIで誰か別の人の声で歌わせることで、例えば過去の名曲がまた違うかたちで若い人たちに受け入れられていったりもするでしょうし。過去に積み重ねられてきた名作を掘り起こし、最新の技術で新たな光を当てて世に問うていく際の助けになるわけだから、特にエンタメコンテンツでは面白い展開が期待できそうです。「Diff-SVC」の場合であれば「誰に何を歌わせるか」という部分に、クリエイティブセンスを発揮できるということもあるだろうから、それがつくる人の喜びにつながるとも言えるのかな。

石川:確かに技術って退化しないというか、常に進化し続けるものだから、基本的にはよりよくなる未来があるということですね。

赤松:そんな中で、自分はいま人前で歌うこと、ライブをもっと大事にしたいなという想いが強くなってきたんです。

石川:それはどうしてですか。

赤松:さきほどの亡くなった人の声の話ではないけれど…。この数年で、いろいろなミュージシャンが亡くなっていますよね?

例えば僕が好きなデヴィッド・ボウイは2016年に亡くなりましたが、彼の声を再現して聴けたとして、ああ、この声だなと思う一方で、その人がこの世にもう存在しないということも際立ってくる。いま生きている人だったら、そんなことは思わないけれど、すでにいない人であればあるほど、その近くまでいくことはできるけど、この世界に存在していないことをより実感してしまうんです。

デヴィッド・ボウイで言えば、僕の場合はかつて大阪城ホールでのライブを見たときの、目の前に彼がいた記憶がよみがえってくる。自分で曲をつくって歌っていることも関係しているかもしれませんが、その人が生きて、同じ空間にいて、そこで歌っているという事実がすごいことに感じられるんです。どんなことがあっても「その人が生きてその場にいる」ということは絶対値ですから。

これから先、僕が好きなミュージシャンや、若い頃からかっこいいと思っていた人たちはどんどんいなくなっていくだろうから、そういう人たちの歌をできるだけライブで聴いておきたいという気持ちと同時に、自分もライブで長く歌い続けていきたいと思います。音楽、アート、文章など、何かしらの表現をする人たちは、AIで作業が効率化されてくることで、そういう本質的なことを考える時間も増えるんじゃないかな。

石川:効率化される一方、SNSなどの情報が多すぎるので、考える時間がなかったり、周りの意見に流されてしまう若い人って多いと思います。時代が変わっていこうとも、やはり本質の部分がますます重要になってくるような気がします。

赤松:なんで僕たちはプランナーとして企画しているんだっけ?ということも、改めて考えてみるといいかもしれないですね。今日みたいにこうして2人でいろんな動画を見ながら笑いながら話したときの感覚って、絶対にリモートでは得られない。さらに言えば、今日ここで楽しかったことも、これが記事になって、掲載されたときには全く違う手触りのものになっていますから。かといって、その場に居合わせることでしか共有できない感覚を無理に広く拡散させる必要もない。そんなことを考えていくと、音楽に関して言えば、小さな会場でもいいから、ライブで直接皆さんに会って歌を聴いてもらうということが自分にとっては大切で、そこは捨ててはいけないなという気持ちになってきています。

コピーを書くことが本当に好きな人は、絶対にそのプロセスを手放さない

赤松:昨年、芥川賞を受賞した『東京都同情塔』(九段理江著)では、ChatGPTを使って執筆したことが話題になりましたよね。具体的には、作者がインタビューで発言していたように「全体の5%」程度だから、全部というわけではないのだけれど。この発言も物議をかもしていましたが、実際に読んでみたら全然いやじゃない。物語自体が面白いというのが何よりも大きいのだけれど、その中の一部をたとえAIが書いていたとしても、そこには必然性があるし、これは間違いなく作者の中から出てきた物語であり、言葉であると感じられたんです。「この仕事の何%かはAIがやっています」と堂々と公言されても、全然いやじゃなかった。

石川:やはり活用の仕方ですね。堂々と使った場合こそ、いかにそこからジャンプアップできるかが大事ですね。ちなみに広告でもすでに、AIが書いたコピーがプレゼンで通って、そのまま世の中に出たという事例もあると聞きます。

赤松:仮に、大きなプロジェクトであるクリエイターがコピーを書くことになったとします。その人はAIの力を借りてもよいと判断し、そこで生成されたコピーをそのまま掲出し、そのプロジェクトが大きな成果を上げたとする。そのときに、「自分はコピー書かなかったな」という後悔もなく、いいコピーが書けたということに興奮したいという気持ちもなく、結果としてプロジェクトが大きく動いたのであればAIが書いたものでも構わない、という気持ちを持っている人にとっては、それでいいと思います。コピーを書くことに自分の時間を割けないからそれでよし、と割り切っているのであれば。それも一つの考え方だから。それについて「どうなんだ?」と疑問を投げかけるのは違う気がしています。

石川:確かに。AIに任せることで自らつくることへの喜びがないと感じてしまう人がいる一方で、それで効率的に仕事が進めばそれが喜びになる人もいる、ということですよね。

赤松:音楽でも同じことが言えます。AIを駆使して曲をつくってそれが評価を得たり、お金になることだってあるでしょう。でも、僕の場合は自分で歌詞を書き、曲をつくることに一番の喜びを見出しているから、そこを全部AIにやってもらって、その喜びを自ら捨てることはないし、もし「君の曲よりAIの曲のほうがよかったよ」と言われたとしても、「あ、そうですか」くらいにしか思わないです。

石川:僕は最近、エンジニアという立場よりプランナーとして仕事をすることが増え、アイデアに行き詰ったときにChat GPTをブレスト相手として考えることもあります。それで赤松さんのお話を聞いて思ったのが、ChatGPTが出した言葉を面白いと思ったり、いいなという判断はやはりある程度キャリアのある人でないと難しいだろうなということ。例えば仕事経験の少ないプランナーやコピーライターが同じことをしても、気づきは少ないだろうし、判断の良しあしがつかない。場合によっては出てきたものをそのまま使ってしまう可能性があるのではないかなと。逆に若い世代にとって、AIは成長を停滞させるものになってしまうのではないかと思ったり。

そして僕も以前は音楽をつくる立場だったのですが、音楽って自分が過去に聴いてきたものの中から、新たなものを自分の中からひねり出す作業でもある。だから、新しく出てきた音楽の面白さや新しさがわかるようになってくると思うんです。最初からAIを使ってしまうと考えたり、つくる能力を発揮する機会がなくなるのではないかなと。

赤松:難しいところだけど。SOUNDRAWのサービスでは、例えばロックで、ハードな感じで、情熱的に…と打ち込めば、すぐに曲ができて、それをBGMとして映像に当てれば、あっという間に動画が完成してしまう。それを否定するわけではなくて、「それでいい」という人たちもいる。ある意味、効率に向かうわけですよね。同様に、もし若手のコピーライターがAIを使った企画やコピーを出してしまうとしても、それはある意味、効率に向かっているということでもあるのかなと。それによって時短になり、いやらしい言い方をすると、お金が簡単に稼げてしまう。

でも、僕もそうですが、ミュージシャンやシンガーソングライターという人たちは、自分で曲をつくって、歌詞を書いて歌うということがやりたい人たちで、そこに喜びを見出している。それと同じように企画を考えたり、コピーを書くことに喜びを見出しているプランナーやコピーライターもいる。彼らはたとえ自分がつくったものが仮にAIに及ばないことがあったとしても、企画することやコピーを書くという行為を簡単に手放すことはしないと思うんです。AIがつくったもののほうが結果としていいものができる時代が意外とすぐに来てしまうかもしれない、なかなかな局面ではあるけれど、本当に企画をしたり、コピーを書くのが好きな人だったら、絶対にその部分を手放すことはないかなと。

石川:確かにそうかもしれないですね。

赤松:だからもし、若手のプランナーやコピーライターがAIを使って制作したとしても、そこに喜びがあるのであれば、それでいいと僕は思います。

石川:喜び…仕事って本来はそれがないと、ですよね。

赤松:そう、仕事ってそこに向かっていくものだから、AIを使っても使わなくても、喜びがないままに生み出したものを世に出してしまったら、企画者としての魂やミュージシャンとしての魂がどんどん死んでいくような気がしてしまいます。

石川:人形みたいに中身がないものになってしまう。

赤松:だから、AIを使ったとしても、そのプロセスに自分が喜びを見出すことができるなら、そのことを堂々と言ってしまっていいと思います。でも、AIがつくったものをそのまま出した人には、その喜びはなかなか訪れない気もします。なんというかある種の後ろめたさみたいなものは残るんじゃないかな。後ろめたさを全く感じずにそれができる人は、企画やコピーを使ってお金儲けをしたり、話題になりたい人であって、企画をやりたい人じゃないでしょう、おそらく。ミュージシャンも同じで、お金儲けや効率を重視するなら、ミュージシャンなんてやってられないと思います。

石川:喜びって、このテーマにおいて大きなキーワードですね。

赤松:歌詞を書いて、それにAIで曲をつけたとして、その曲を聴いた人たちに「AIがつくった曲のほうが今までのよりいいね」と言われたとしても、自分の中にそれほど後ろめたさもなく、「書けた」「できた」「喜べた」といったなんらかの達成感が残っているのであれば別にいいと思います。まあ、「AIがつくった曲のほうがいいね」と面と向かって言われたら、ちょっと腹は立つかもしれないけど(笑)。

石川:広告であっても、音楽であっても何かをつくったり、考えたり、そのプロセスを面白い、幸せだと感じられることが本当に大切。それはすごくよくわかります。

でも一方で、AIは自分が煮詰まってモヤモヤしているときに、その正解を一瞬で出してくれることがあります。レコードがCDになってサブスクリプションになったように、あらゆる機器は進化して楽な方向に進んでいます。それゆえに目の前に楽なものがあったら、人間はそれを使ってしまうのではと、僕は思うんです。そして、あるときに、あれ、ChatGPTでいつも企画を考えている自分に気づく…みたいな恐怖心があります。

赤松:そういう状況に慣れていくしかないんじゃないかな。僕はAIのブームは意外と早く鎮静化するような気がしています。実際に、いまAIは表には出ないところで活用されていることも多いじゃないですか。極端なことを言うと、知らない間に僕らはAIを使っている。だからそこに対する恐怖心は無くなると思います。

あと、作詞・作曲も企画もそうだけど、AIを活用して、何か断片をもらって企画したとしても、そこからジャンプしたときの「跳べたな」という感覚をAI主導で得るのって、すごく難しいと思うんですよ。

石川:それはおそらく難しいですよね。現状のAIはやはり入り口を見つけることに長けているので。

赤松:AIが入り口やジャンプ台をつくってくれたとしても、結局最後ジャンプするのは自分だから。そこに喜びがあればいいんじゃないかな。現状だと、入り口はいいけどジャンプ台までAIにつくってもらうのはまだ難しい感じがしていますが。学習が進めばそのあたりも変わってくるのではないかと。

それから、アイデアを思いつくとか、曲を書ききることに喜びがあるという話と関係するのですが。もし「Suno AI」のようなものを使って曲を世にどんどん出したとしても、自分のイメージや世界観に近いものができているかもしれないけれど、同じではないということは、それはやっぱり離れているというか。触れているのに触れてないみたいな感覚で。そういう感覚が積み重なった先に、意外と早く「つまらないかも」と思う人も出てくるんじゃないかな。だから、人間がAIに慣れて、共存できるようになったとしても、その力を借りずに、あえてゼロから自力100%で何かをつくってみよう、と思ったときにそれができる筋力はなくさないようにしておきたいと思うんです。

石川:僕が恐怖に感じていたのは、まさにそこかもしれないです。AIに慣れてしまうことで、自力で何かすることができなくなってしまうのではないかという。

赤松:ぬるま湯のようなところで、うまいことフワフワ浮いている時期が続いて、そこから上がったときに、もう自分にはできない、ってなるのが一番寂しい気がします。だから、ゼロから立ち上げる力は、常に自分の中に蓄えておきたいですね。

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赤松隆一郎
シンガーソングライター/クリエイティブディレクター

愛媛県出身。2008年にアルバム「THE SWING OF THE PENDULUM」でデビュー。音楽活動と並行して広告のクリエイティブディレクター、CMプランナーとしても活動する兼業ミュージシャンである。オリジナル作品とあわせて、自身が企画する広告キャンペーンやCMソングの作詞・作曲、他アーティストやNHK「みんなのうた」への楽曲提供など、音楽と広告のフィールドをまたぐ独自の制作スタイルを持つ。
2012年にギタリストの井上央一とともにアコースティックユニット「アンチモン」を結成。リーダーにカンガルーがいるというユニークなメンバー構成とキャッチーなメロディー、日本語にこだわった歌詞でこれまでに3枚のアルバムを発表。
「疲れたら、愛媛。」「道後のワルツ」興居島〜高浜港を結ぶフェリー「しとらす」「ミソラ」のイメージソング等、地元・愛媛をPRするための楽曲制作も積極的に行なっている。
2022年8月、自身14年ぶりとなるフルアルバム「祝祭」をリリース。




石川隆一
石川隆一

2018年電通デジタルに中途入社。音楽大学卒業後、レコード会社勤務を経て、AIエンジニア/プランナーとして入社。データ分析、画像処理、自然言語処理などにおけるAIのクリエイティブ応用を研究している。日本に200人しかいないkaggle Masterの一人。

石川隆一

2018年電通デジタルに中途入社。音楽大学卒業後、レコード会社勤務を経て、AIエンジニア/プランナーとして入社。データ分析、画像処理、自然言語処理などにおけるAIのクリエイティブ応用を研究している。日本に200人しかいないkaggle Masterの一人。

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