ヒットを生む電通のCDとADが語る、クリエイターの本質的な役割

広告制作において、企画の中心にいるクリエイティブディレクターとアートディレクター。クリエイティブ面を統括する、デザイン面の統率をとるという役割はあるが、その本質的な役目とは?

※本記事はブレーン6月号「広告」多様化の時代 クリエイターの仕事と役割はどう変わる?に掲載している内容から転載しています。
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実データ グラフィック AIが浸透する未来 CDとADの役割はどう変わる?

「CDは翻訳家、ADはモテさせ屋」

テレビCMやグラフィックなどさまざまな広告を担当してきた、電通のクリエーティブディレクター 奥野圭亮さんとアートディレクターの井本善之さん。サントリー食品インターナショナル/デカビタC「元気すぎるご当地キャラ」篇(2020年)以降、多数の企画に共に取り組んでいる。

写真 CM カット複数 「デカビタC」「元気すぎるご当地キャラ」篇
2人が初めてタッグを組んだ、「デカビタC」の「元気すぎるご当地キャラ」篇。5体のご当地キャラクターが「デカビタC」を飲み、恐ろしいほどに元気になってしまった姿を描いた。

奥野さんは2000年にクリエイティブ職で新卒入社し、CMプランナーとしてCMに携わってきた。徐々に企画をリードするようになり、2015年に社内の役職「クリエーティブディレクター」に就く。一方井本さんは、美術大学を卒業後、2008年にアートディレクター(AD)として入社。ADながら企画も積極的に行うスタイルで実績を積み、23年から「クリエーティブディレクター」の肩書も併せ持つようになった。

改めて、クリエイティブディレクター(CD)とはどのような役割なのか。奥野さんは「クリエイティブチームのリーダーとしての役割が一番」と前置きしたうえで、こう説明する。「クライアントには、信頼してもらうのが役目だと思っています。営業と共にニーズを聞き出して、この人たちであれば悩みを相談したいと信じてもらう。そしてチームのクリエイターに対しては、クライアントのニーズをわかりやすく伝えて、のびのびと力を発揮してもらうことが理想的だなと思っています」。

クライアントはビジネスの一環として広告を打つため、広告の売上への影響など定量的な成果を求められがちだ。しかしそれをそのままチームに伝えても、何を考えればいいのかイメージが湧きづらい。だからこそCDが翻訳をして目的を伝える必要がある。反対に、クライアントへの提案の際も、クリエイターの意図が適切に伝わるようサポートをする。ビジネスとクリエイティブ、双方の視点を行き来して課題解決に導くことがCDには求められる。

奥野さんのスタイルの特長について井本さんは、「大まかなゴールがあり、そこにさえ達すればどんなやり方でもいい、とのびのびとやらせてくれます。だから僕や、よく一緒にやるプランナーの(大石)タケシやチームのスタッフがみんなでパーっと好き放題荒らして、自由に企画を持ち寄るという。ただゴールから外れ過ぎていたらちゃんと道を直してくださるので、とてもやりやすい環境です」と話す。

一方、井本さんはADの役割を「モテさせ屋さん」だと捉えている。「クライアントの企業やブランド、商品をデザインの力でモテさせるのが仕事だと思っています。対象の良いところを見つけて、誰に好かれたいのか・今の世の中の空気は?といったことをふまえて、最も魅力的な形で世の中に届ける。ADの中には、確固とした自分の作風を重視する“スター”タイプの人もいますが、僕は特に自分らしい表現にこだわりがないんです。その時々で最適解を見つけていくタイプですね」(井本さん)。

そんな井本さんに対し奥野さんは「面白い企画もできるので、一粒で二度おいしい(笑)。ついチームに入れたくなりますね。それから、時代の空気感を捉えて作品に落とし込み魅力的に見せるのが非常にうまいです」と評価する。サントリーの「ほろよい飲んで、なにしよう?」シリーズの企画時も、当初「これをどうしたら広告になるのか」と奥野さんは懸念していたが、井本さんがラフとして制作した一枚絵を見たときに可能性を感じ、実現に繋がったという。

写真 CM カット複数 サントリー/ほろよい 「ほろよい飲んで、なにしよう?」シリーズ
サントリー/ほろよいの「ほろよい飲んで、なにしよう?」シリーズでは、アニメーションと実写、平成の名曲と令和の名曲を混ぜ合わせた表現で、大きな話題を呼んだ。

AIが浸透する未来、クリエイターはどう生き残る?

2人は最近も仕事を共にしており、2024年もサントリー「ザ・プレミアム・モルツ」や「ジャスミン焼酎〈茉莉花〉」、サントリー食品インターナショナル「サントリー天然水FRUIT-SPARK」などのCMが続々と公開されている。最前線で活躍する2人は、今それぞれにどんな役割が求められていると感じているのだろうか。

「CDとしては、宣伝部はもちろん社長とも話せる力ですね。宣伝部が決定権を持つ企業もありますが、広告はやはり大きなコストがかかるので、社長と直接やりとりをすることも多いんです。そこで数字を求めるクライアントに対して、僕らクリエイティブは、世の中に愛されることこそ数字に繋がるんだ、ということをきちんと説明する責任がある。その時に最も大事なのは“正直であること”だと思っていて。世の中からあなたの会社はこう見えていますよ、うちの娘や妻なんて見向きもしませんよ、とか(笑)。営業が伝えると角が立ちがちなので、言いにくいことこそCDが言うべきだと思っています」(奥野さん)。

・・・・・続きは月刊『ブレーン』本誌、または同 デジタル版からお読みいただけます。

〈この後のトピック〉
「僕らはどう考えてもAIから逃げられない」「AI時代に必要とされる力は?」など。

クリエイティブディレクター
奥野圭亮(おくの・けいすけ)

電通 第1CR プランニング局 グループクリエーティブディレクター。2000年電通入社。CMプランナーとしてキャリアをスタート。これまでに1500本以上のCMを制作。主な仕事にサントリー「ほろよい」「ザ・プレミアム・モルツ」「デカビタC」「サントリー天然水FRUIT-SPARK」「ジャスミン焼酎〈茉莉花〉」、浅野忠信の「OWNDAYS」や佐藤健の「大林組」、高畑充希の「三菱地所」など多岐にわたるブランド開発に携わる。広告以外の仕事として大学で学んだ建築知識を活かして空間開発・都市開発などの仕事も行う。

アートディレクター
井本善之(いもと・よしゆき)

電通 第2CR プランニング局 クリエーティブディレクター/アートディレクター。2008年電通入社。「無視されないものを作り続ける」ことをモットーに、クリエーティブディレクション・アートディレクションを行う。主な仕事にサントリー「ほろよい」「サントリー天然水 FRUIT-SPARK」「ザ・プレミアム・モルツ」「ジャスミン焼酎〈茉莉花〉」、Netflix『幽☆遊☆白書』、関西テレビ放送『R-1グランプリ』、吉本興業「華大どんたく」、東宝「ゴジラ70周年」ほか。趣味はくうねるあそぶこと、あと仕事。

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月刊『ブレーン』2024年6月号

【特集】「広告」多様化の時代 クリエイターの仕事と役割はどう変わる?


写真 パース・イメージ 月刊『ブレーン』2024年6月号の内容

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▼特集のトピックス

  • スタッフリストからおさらい
  • 広告制作の基本フロー
  • オンワード樫山/23区
  • 「23区JAPANESE WOMEN’S
  • STANDARD Anne in TOKYO」
  • Netflix『三体』
  • 「YOU ARE BUGS
  • お前たちは、虫けらだ」
  • 阪神タイガース
  • 「Thank you,89!
  • 野球よ、ありがとう。」
  • AIが浸透する未来
  • CDとADの役割は
  • どう変わる?
  • 奥野圭亮(CD)×井本善之(AD)
  • 自分なりの
  • 研究テーマを持つことが
  • 仕事を豊かにする
  • 引地耕太(CD)×赤川純一(TD)
  • 「ゴールを決める人と
  • ゴールまで連れていく人」
  • 城殿裕樹(Pr)×荒木一也(PM)
  • 異業種・他部門からクリエイターへ
  • 「私のキャリア」
  • 植木沙織(東急エージェンシー)
  • 山﨑晴太郎(セイタロウデザイン)
  • 中島優子(ビーコンコミュニケーションズ)




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