
浅田飴
商品開発部部長 兼 広報課課長
小杉 寛之 氏
北里大学薬学部を卒業後、病院勤務等を経て2007年より現職。入社時より商品開発を担当し、2015年から広報課を兼務。薬剤師。スポーツファーマシスト。

Q1:現在の仕事の内容とは?
ドロップ剤を中心とした医薬品やのど飴、甘味料等の商品開発、製剤開発、薬事、お客様相談室で構成される商品開発部に所属しています。
広報課を兼務する形でプレスリリースやwebサイト、ビジュアル制作、SNS運用、キャンペーンやイベントの企画運営などを行うとともに、広告宣伝の業務も担っています。
当社は1887年の創業以来「良薬にして口に甘し」を企業理念として掲げ、「声」に関わる文化を通じてみなさまの健やかな声を応援する活動を行っており、具体的には音楽や舞台、プロスポーツクラブへの協賛やキャンペーン、落語会や声優さんによる読み聞かせなどの親子向けのイベントも担当しています。そういった中で音楽やスポーツ、アニメなどとのコラボ商品の開発にも携わっています。
Q2:これまでの職歴は?
大学卒業後、薬剤師として病院等に勤務しながら、上智大学カウンセリング研究所でカウンセリングやコミュニケーションについて学びました。病院では病棟業務や調剤業務を担当し広報とは無縁でしたが、医療従事者や患者さんとのコミュニケーションや共感的理解は今の広報の仕事にも役立っています。
その後、浅田飴に入社し、せきどめ薬や乗り物酔い薬、甘味料等の開発に携わってきました。当時は広報活動をほとんど行っておらず、開発した製品の広告予算も大きく取ることができない状況もあり、コーポレートサイトやブランドサイトの内製化、レシピ開発、SNS運用、リアルイベントなどコストも含めある程度インハウスで運用していける体制を整えながら社内理解を推進し、2015年より商品開発と広報を兼務しています。
Q3:転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?
誠実でいられるか、またその仕事が好きであるかという2点です。
医療に携わる者として、また医薬品を取り扱う企業の使命として、利益追求の前に健康や公衆衛生に寄与すること、そしてそのコンプライアンスやガバナンスの意識があるかどうかは、非常に大切だと考えています。
広報という観点でも話題性は非常に大事ですが、透明性や誠実な態度が求められる機会が年々増えていると感じています。事業や広報活動を通して誰に、何を伝えたいのか、そしてそれは本当にその人にためになっているのか、何かを犠牲にする環境になっていないかを意識するよう心掛けています。
また広報を担当することになった際は、自分事として心から好きになれるかということも意識しました。共創やファンベースという言葉がありますが、受け取る側の気持ちになってというより、私自身がその中で一緒に好きになれるかを考えて取り組んでいます。
Q4:国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは何ですか?
専門職や専任としてのキャリア形成が難しいことが悩みです。
人員や予算などリソースの課題も多く広報の経験値も乏しい中で、いかに効率よく全社的に企業理念、経営者コミュニケーションを行えるかが課題であり、それぞれの立場からの広報活動を模索しています。
私の場合は商品開発という経験を生かし、UGMを考慮したデザインや商品設計を意識して広報と開発の良いサイクルを回せるよう心掛けています。そうしてできた製品や、それを使う方と直接触れることで、社員を含めたステークホルダーのブランド理解につながるため、自社開催のイベントだけでなく関わりのあるコミュニティにも参加、関与するようにしています。
またソーシャルメディアをはじめとしたアウトプットにおいては薬機法、景表法などを遵守する態度や誠実さと、時世にあった話題づくりとの乖離に悩むことが多いですね。その根拠法を学べば学ぶほどアウトプットに悩む場面が増えてきますので、社内や社外の方との会話の中で自社のブランドポジションのバランスを探っていく作業を続けています。
長きにわたりご愛顧頂いているお客様のもつブランドイメージを大切にしながら、新しいお客様も一緒にその価値を高めていくというのは永遠の課題ですね。
また医薬品は必要なときに必要な方へ適切に販売することが求められるものであり、疾患の流行などの外的要因も受けやすいためKPIの設定が難しいと感じています。過去の本コラムの中でも諸先輩方が言及されているとおり、キャリア形成においては、どういう価値を提供できたのか、ブランディングに寄与したのかを具体的に表現すること(例えば商品開発自体もその一つだと思います。)が広報部門の価値を高め、ひいては専門職としてのキャリア形成につながると考えています。
Q5:広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?
プロスポーツクラブとのお仕事がきっかけで、スポーツファーマシストの資格を取得しました。スポーツを通じて、アンチドーピングやオーバードーズに関する啓蒙や教育にも関われると嬉しいです。
また昨今、体験格差というワードもよく耳にしますが、親子向けの落語会や声優さんの読み聞かせのイベントなどで、本物の文化に触れる機会の創出にも取り組んでいきたいです。
社会課題の解決とまではいかなくとも、広報活動を通して健康や文化活動の楽しさにつながるほんの一助になれたら嬉しいです。
【次回のコラムの担当は?】
ロフト 広報室 プレスマネジャーの横川 鼓弓(よこかわ こゆみ)さんです。横川さんは、テレビや新聞取材、雑誌への商品貸出などメディア対応を中心とした広報活動全般とともに、広報スタッフへの指導や地方店舗の広報活動支援などを行っています。
