ネット広告の信用低下、新しい業界秩序が必要に(徳力基彦)

「AdverTimes.(アドバタイムズ/アドタイ)」は2024年6月に20周年を迎えました。2004年に新聞として創刊、2010年からオンラインがスタートし現在に至ります。
20周年の節目に際し、これまでのコラム執筆者の皆さんから寄せられた、それぞれの領域における「これまでの20年とこれからの20年」を紹介します。

徳力 基彦氏

(noteプロデューサー/ブロガー)

――これまでの20年間で、ご自身のお仕事の領域や関心領域において、エポックメイキングだったと思われることはなんですか

個人的に広告領域における最もエポックな出来事は、

「トヨタイムズ」のテレビCM

でした。

特に当時の私の考えでは、オウンドメディアはあくまでペイドメディアができないことを補足するものという位置づけでしたが、トヨタ自動車がテレビCMの主役を商品である自動車からオウンドメディアに変更する未来があるとは全く考えておらず衝撃を受けました。

「トヨタイムズ」の登場とテレビCM展開は、日本におけるオウンドメディアとペイドメディアの位置づけの常識を変えたと考えています。

――現在のご自身のお仕事の領域において、最も関心を寄せる/寄せられるべき課題は何だとお考えですか

現在、個人的に最も関心がある課題は、やはり

ネット広告の信用低下

です。

ネットメディアにおけるポップアップ広告の多用や、詐欺広告問題の長期化などにより、アドブロックのアプリが人気アプリの1位になるなど、ネット広告において「広告」というものの存在がユーザーにとって「邪魔者」になってしまっていることは、長期的に広告主にとっても広告業界にとっても大きな問題になるはずです。

真に「ネイティブアド」や「スポンサードコンテンツ」と呼べるユーザーにとっても有益な広告の再開発が必須であると感じています。

――この先の20年間において、どのような変化が起きるか、どのような変化を起こすべきかについて、下記からテーマをひとつ選び、そのように考えた背景について、教えてください

  • マーケティング: チャネル・流通・購買、消費・利用、および広告、メディアビジネス)
  • クリエイティブ: 商品・プロダクトなどのサービスデザイン、コミュニケーションにおけるクリエイティビティ
  • テクノロジー: マーテク、アドテクに限定せず、社会や個人の活動全体の可能性をひらき、生み出すもの
  • サステナビリティ: 狭義の環境問題に限定せず、社会や個人の活動全体を維持改善していくもの

「マーケティング」です。現在、多くのユーザーからは

「マーケティング」や「広告」という言葉や行為自体が、土足での売り込みやノイズ的な邪魔者というイメージになりつつある

ように感じます。

ネット広告は基本的に誰もが自由に活用できる構造にある上に、直近は生成AIの進化もあり、このまま何もしなければ、詐欺広告の問題に見られるように悪貨が良貨を駆逐する構造が各分野で進んでしまう可能性が高いでしょう。

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