第3回は、インテージ生活者研究センター長の田中宏昌氏がOOHメディアを巡るコロナ前と後の生活者意識の変遷について解説します。
外出機会も回復し、旅行やイベントと行動意欲も高まる
2023年5月に新型コロナの感染症法の分類が5類に移行されて1年が経とうとしています。インテージが感染拡大初期(2020年3月)から継続実施している自主調査(※1)では、感染不安とともに外食や国内旅行など、さまざまな外出行動に関する意識も聴取してきました。
最新の調査結果では感染不安はもちろん、外出行動に関する不安も過去最少のスコアとなっており、生活者の外出行動の意欲は確実に回復へ向かっています(図表1)。また、リモートワークを交えた新しいワークスタイルも定着しつつあると考えられます。
図表1:感染不安や外出に関する不安の推移
コロナ一過。外出による感染不安も過去最弱のレベルに落ち着きをみせる。
平日昼間の人出は回復基調も夜間は戻らず
東京の都市部や地方都市における人出も、スマートフォンの位置情報(※2)を用いて確認してみると確実に回復に向かっていることがわかります。
はじめにオフィスワーカーの人出が映し出される平日昼間のデータを見てみると、池袋や新橋といった東京都市部においては、8割~8.5割程度まで回復していることがわかります。また、仙台や広島といった地方都市ではほぼコロナ前の状態まで回復しており、仙台においてはコロナ前を上回っています。
図表2:平日昼間(14時台)の人出(位置情報による人流データ分析)
新しい街の風景の出現。コロナ前よりも1~2割少ない出社スタイルが定着へ。
一方で平日夜間に目を向けると、昼間ほど戻ってきていないことが浮き彫りになります。コロナ禍に定着した「イエナカ時間重視」といった意識変化からか、以前ほどは「仕事帰りに買い物やご飯を楽しんで」という行動が減少していることがその背景にあると考えられます。また、物価高により外での飲食を控えたり短時間で切り上げたり、といった節約意識の高まりも要因と考えられます。

