南海トラフ地震警戒発令、皆さんの備えは十分でしたか?
皆さん、今年の8月8日はどこで何をされていましたか?
コラム第1回が公開されてから第2回の執筆もままならない内に、初めての南海トラフ地震警戒発令(1週間後の8月15日解除)が出されました。その翌日に神奈川で地震が発生した際、自宅からほど近くの居酒屋で、店にいた客の携帯のアラームが一斉に鳴り響き、私は改めて備えが不十分なことを実感しました。
「フェーズフリー」をテーマにしたコラムを書いているにも関わらず、私は備えられていない。この事実こそが、フェーズフリーの必要性を体現しているのだと思います。
東日本大震災を例に挙げるまでもなく、日本は世界の中でも災害が多発する地域にあり、過去に多くの大規模な災害を幾度も経験してきました。その結果、日本は進んだ防災知識・技術を持つに至った国でもあります。
それにもかかわらず、過去の多くの災害の記憶はいつしか忘れ去られ、私たちは危険性の高い地域へ再び進出し街をつくり、日ごろから災害に備える習慣が定着しないまま日々を送り、新たな災害が起こった際にはまた同じように悲劇を経験するという、悲しい循環を繰り返してしまいます。それはなぜでしょうか。
2012年12月7日、私はその前週に開催した最初の「結の場」の活動を行っていた石巻の漁港沿岸付近で、夕方に発生したM7.3の三陸沖地震に遭遇しました。そこで目の当たりにしたのが自動車の大渋滞。幸い、大きな津波は到達しなかったのですが、まだインフラ復旧最中の石巻沿岸で東日本大震災から2年も経っていない中での津波避難・注意警報にも関わらず大渋滞が巻き起こってしまう状況に、私は防災の何とも言えない難しさを感じました。
後に、佐藤唯行さん(一般社団法人フェーズフリー協会代表理事)から「災害とは、危機(Hazard)と社会の脆弱性(Vulnerability)が重なり、人々の生活が脅かされる状態・状況である」という話を聞いた時、あの石巻で感じた、何とも言えない難しさが妙に腑に落ちたことを覚えています。