人類と地球の関係性は、まるで「アルコール依存症の恋人」のよう?

日本のイベント制作のプロたちは、サステナビリティ先進国のオランダ・スウェーデンで何を体験し、学んできたのか?電通ライブは2023年に2カ国でのべ24カ所を視察、14企業にインタビューするツアーを実施しました。その中で「自分たちの考えが塗り替えられるような体験」が何度もあったと言います。本記事ではその中から、オランダのサーキュラーエコノミーの先駆者である建築家・トーマス・ラウさんのことばをお届けします(本記事は、11月8日に発売した新刊『サステナブル×イベントの未来 オランダ・スウェーデンで出会った12のマインドスイッチ』から一部を転載しています)。

RAU Architectsに聞いた、サステマインドを育む4つのキーワード

RAU Architectsは、オランダのアムステルダムを拠点とする建築事務所です。創設者のトーマスさんは環境に配慮した建設を30年にわたり主導してきました。サーキュラーエコノミーの原則を設計と建設に取り入れる先駆者として知られています。2025年に開催される大阪・関西万博オランダパビリオンの建築設計を担当し、「完全循環型」のパビリオンプランが採用されています。現在、世界でもっとも注目を集めている建築家の一人です。

写真 人物 個人 RAU Architects の創設者トーマス・ラウさん

RAU Architects の創設者トーマス・ラウさん。サーキュラーエコノミー分野での先駆者であり、建築業界におけるパイオニアとしても知られる建築家。(写真提供:RAU Architects)

トーマスさんは、ある例え話をします。

想像してみてください。あなたが誰かと出会って恋に落ちて、人生を共にすると決めたとします。しかしその心に決めたパートナーは、アルコール依存症であったことにやがて気づきました。それは、パートナーとの共同生活やあなた自身の暮らしを脅かすものとなります。あなたはきっとこう言うでしょう。「お願いだから、アルコールをやめてほしい。もしアルコールを飲み続けるのならこの関係を続けることができない」。

するとパートナーの回答はこうです。「全然問題ないよ。そのうちやめるから。2030年には60%アルコールフリーになって、2040年には80%、2050年には100%アルコールフリーになるから」と。あなたは、そのパートナーのことを信じることができますか?

きっと、あなたのパートナーは今すべきことを直視しておらず、今の暮らしを変える気がないのだろうと思うでしょう。

これが、人類と地球の今の関係性です。

あなたが関心があるのは、今です。2030年にも、2050年にも興味がないのです。

このように、トーマスさんは企業、行政、そして私たち個々人が気候崩壊の危機を目の前にしてもなお抜本的な行動にでることができないことを、コミカルに指摘します。

キーワード①「私たちはこの惑星のゲスト」

月から撮影した地球の写真

月から撮影した地球の写真

この写真は、月から見た地球です。現代におけるグローバルなサステナビリティムーブメントの出発点となった象徴的なものです。私たち人類は、宇宙に単体で浮かぶこの地球の写真を通して、資源はこの閉じられた地球に存在しているものしか使えないのだと、初めて実感したのです。

トーマスさんは、地球の歴史を長い目で見れば、人類は決して地球の支配者「ホスト」ではなく、むしろ「ゲスト」であることがわかると言います。ゲストであれば、当然のことながらホストのルールに従い、その恵みを大切に扱う責任があります。

一時的な利用者である私たちの一時的なニーズを満たす手段が、恒久に取り戻すことのできない負のインパクトをもたらしてはならないのです。

写真 書影 『サステナブル×イベントの未来 オランダ・スウェーデンで出会った12のマインドスイッチ』

『サステナブル×イベントの未来 オランダ・スウェーデンで出会った12のマインドスイッチ』大髙良和、松野良史、西崎龍一朗著/定価:2,200円(本体2,000円+税)

キーワード②「地球上の資源はすべて『限定版』」

私たちは、資源を手に入れにくい「希少なもの」と捉えがちです。つまり探しきれていないだけでまだどこかに隠れているはずだと思い込んでいます。しかし、先の写真を見ればわかる通り、

地球上の資源は有限なクローズドシステムです。

つまり、資源には限りがあり、浪費すればいずれ枯渇し、二度と手に入らなくなる「限定版」だということです。このシステムの中で何か問題が生じた場合、私たちは限られた資源の中で解決策を見つけなければなりません。

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