1月9日から放映されているカネボウ化粧品「KANEBO」のブランドCMを見て、元味の素クリエイティブディレクターの名久井貴詞さんはこれまでのカネボウのCMとは違う驚きを感じたといいます。美ではなく、希望を発信する「KANEBO」ブランドの力強いメッセージは、現状の見直し、本質の再定義を促しているといえそうです。
カネボウ化粧品 KANEBO 「I HOPE. 希望」 CM(30秒)
“売る”を繰り返す稀有なCM
2025年の新しい年を迎えた、1月の何日目か分かりませんが、このCMと出会いました。瞬間的に、ファッション系のCMと感じたところに、
“私たちは口紅を売ってはいない。”
“売る”という生々しいナレーションが耳に残ります。
自らの声を光に変える、勇気を売っている。
私たちは、ファンデーションを売ってはいない。
「これが私だ」と顔を上げ生きてゆく、自信を売っている。
私たちは、アイシャドウを売ってはいない。
未来を力強く見つめる、情熱を売っている。
私たちは、クリームを売ってはいない。
自らの肌を信じ生き抜く、強さを売っている。
私たちがつくりたいもの。それは、人間を丸ごと肯定する何か。
最後2つ前の映像に優しく書き出されたメッセージが、
「私たちは化粧品を、売っているのではない。」
最後の映像に、「希望を売っている」でCMが終わりました。少し呆然としてしまい、次に流れたCMは何も憶えていませんでした。
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広告におけるCMの役割は多様ではありますが、これだけ“売る”という言葉を重ねたCMを見た・聞いたことがありません。CMの重要な役割の一つは、様々なメッセージを伝え、商品・ブランドを“売る”、販売の数字をつくることに他なりません。誰もが認める基本的な原則だと思います。
だからこそ、この“売る”という最終の役割を、この根本的な役割を、キレイな・美しい言葉(コピー)に置き換えて、練り上げた映像と組み合わせながらCMに仕立て上げて、お客様の心と行動を動かしてきたのが今までだったかなと思います。
しかし、このCMは、“売る”ということの意味を根本から見直し、考え直し、だからこそあえて“売る”に置き換えられているのだと感じました。



