本書の構成について
本書は「基礎編」「応用編」「実践編」の3つのパートで構成されています。それぞれを段階的に進んでいくことで、エクスペリエンスプロデューサーの思考法や技術をしっかりと理解していただくのと同時に、それぞれ興味のあるパートだけをご覧いただいてもお役に立てる構成にしています。
まず「基礎編」ですが、ここでは「エクスペリエンス」とは何か?「コンセプト」とは何か?「ストーリー」とは何か?という前提となる概念の理解から始めて、エクスペリエンスプロデューサーの2つの視点、「総合演出」と「プロジェクトマネジメント」について解説していきます。「総合演出」の視点では、演出の対象となる5つの要素(時間・空間・ソフト・ハード・人)について、「プロジェクトマネジメント」の視点では、マネジメントの対象となる5つの要素(組織・工程・情報・予算・成果)について説明します。この「基礎編」を通じて、エクスペリエンスプロデュースの基盤となる概念と基本的な考え方を理解していただくことを目指しています。
続いて「応用編」では、エクスペリエンスプロデューサーの実務に迫ります。エクスペリエンス領域の、特にイベント業務を想定した「企画」「制作」「運営」の3段階に区分し、「総合演出」の視点では、演出の対象となる5つの要素(時間・空間・ソフト・ハード・人)を「企画書」や「構成台本」「運営マニュアル」「実施設計図」などの実務書類を通じて定めていく考え方を、「プロジェクトマネジメント」の視点では、マネジメントの対象となる5つの要素(組織・工程・情報・予算・成果)を管理していく具体的な方法論を説明します。この「応用編」では、エクスペリエンスプロデューサーの具体的な業務内容とその思考法を理解していただくことを目指しています。
そして「実践編」では、プロジェクトの開始から終了までの流れの中で必要となるエクスペリエンスプロデューサーの技術について、実際の実務の流れに沿って解説していきます。クライアントからの「オリエンテーション」に始まり、「報告会」で完了するまでの一連の一般的なプロジェクトの流れの中で、エクスペリエンスプロデューサーが何を考え、何をしているのか、「基礎編」「応用編」で取り上げきれなかった実践的なテクニックや、現場で役立つ具体的なノウハウを紹介しています。エクスペリエンスプロデューサーには、準備から当日、終了後の報告まで、予想外の出来事にも対処する柔軟な対応力が求められます。そしてそのためには確固たる軸となる技術が必要です。この「実践編」では、そのような軸となる技術をご紹介したいと考えています。
本書では、具体的な業務内容について触れる際には、エクスペリエンス領域業務の中でも特に「展示会」の出展ブースを想定して書いています。展示会は、多くの方がイメージしやすいだけでなく、ショールームやポップアップショップ、店舗など、他のさまざまな領域にも応用しやすいという特徴があるからです。私自身も、展示会から始まり、ショールームや店舗のプロデュースへとキャリアを広げていきました。その経験から、展示会のノウハウが他のエクスペリエンス領域にも役立つことを実感していますので、そのエッセンスを皆さんにお届けしたいと考えています。
また、本書は、エクスペリエンスプロデューサーとしてだけでなく、一般のビジネスパーソンや学生の皆さんにとっても、学びのある内容になるよう心掛けて書きました。特に「プロジェクトマネジメント」は、エクスペリエンスプロデュースに限らず、どのようなビジネスでも通用するスキルです。チームでの円滑なコミュニケーション、限られたリソースの中で成果を出す方法、クライアントとの信頼関係を築くための工夫など、ビジネスの基本となる考え方やテクニックも、本書にはふんだんに盛り込んでいます。
エクスペリエンスプロデューサーの仕事は、毎回異なる参加者に、毎回異なる体験を、毎回異なるクライアントやキャスト/スタッフと提供する、非常に不確実性の高い仕事です。しかし、だからこそ、参加者が感動してくれた時の喜びやプロジェクトが成功した時の達成感は格別です。本書を通じて、皆さんにエクスペリエンスプロデューサーの仕事の魅力や奥深さを感じていただくとともに、より多くの皆さんが手掛けた感動体験施策が、さらにより多くの皆さんへ感動体験を提供できることを願っています。

『エクスペリエンスプロデューサーが書いたイベントの教科書
「体験」の「カタチ」をつくる超実践的思考法』
著:中島康博(博報堂プロダクツ)
定価:2,200円(本体2,000円+税)

「体験のカタチをつくるプロ」として、30年以上にわたって現場の第一線を走る著者が書き下ろした本書では、近年注目されている「エクスペリエンスプロデューサー」という仕事における思考のプロセスと技術を初めて紹介します。
「感動体験(心を動かす体験)」の「総合演出家」であり、「感動体験施策(感動体験を提供する活動)」の「プロジェクトマネージャー」でもあるエクスペリエンスプロデューサー。この2つの視点を兼ね備えることで、従来のイベントにとどまらない体験や経験を来場者に提供することが可能になります。
イベント制作の各プロセスにおいて、エクスペリエンスプロデューサーがどのように考え、どのような技術を使って制作、進行しているのか。基礎、応用、実践と3つのパートで具体的に解き明かします。
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