高崎卓馬氏が電通から独立、クリエイティブディレクターとしてのこれからの生き方

dentsu japan グロースオフィサー /クリエイティブディレクター 高崎卓馬氏が、2025年3月31日をもって退職。4月1日に、自身の会社Writing&Designを立ち上げた。
 
高崎氏は1993年に電通に入社。クリエイティブ局で数多くの広告を制作し、2010、13年に続き2023年に3度目のクリエイター・オブ・ザ・イヤー受賞をはじめ、国内外での受賞多数。小説や絵本の執筆、そして2024年に共同脚本・プロデュースで参加した映画『PERFECT DAYS』が、第96回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされるなど、広告にとどまらない活動を続けてきた。
 
今後、高崎氏は電通とは新しいかたちでパートナーシップを組み、広告にとどまらない活動を行っていく考えだ。今回、新しいスタートを切るまでの想いや考えをコラムとして寄せてもらった。

卒業や独立という言葉が、あまりしっくりこないのですが

―― クリエイティブディレクター高崎卓馬の現在地(文:高崎卓馬)

写真 人物 高崎卓馬氏

高崎卓馬氏

独立を決めて、その報告を理由にたくさんの人に会うことができた。

それはとてもいい時間だった。

戦友のような人たちや、尊敬する他分野の人たち、

僕をこの世界に引き入れてくれた憧れの人たち。

内容を告げずにアポをもらおうとすると、

ほとんどがそうとわかって時間をくれた気がする。

みなさん感傷的なことは一切言わずに

今の時代をどう感じているか、これからどうなっていくのか。

何を私たちが失い、そのかわりに何を得ようとしているのか。

それぞれの場所で生々しく感じていることを教えてくれる。

こういう節目だから特別にね、という感じで。

その有難い話を聞きながら、どうして自分がこういう判断をしたかを

まるで逆に解説してもらっているような気持ちになっていく。

不思議と言葉は違うけれど

みなさんがどこか似た話をしていることに気がついた。

これからは個やプロジェクト単位の時代になる。
それが豊かなものであるためには
外にあるネットワークとのつながりが必ず大切になる。
幸せってそのつながりのことかも知れない。

というものだった。当たり前のことのように聞こえるかもしれないけれど、

この身でそれを経験しようとしているタイミングだから、妙に響いた。

コロナは僕たちの価値観を一気に動かした。

全員が無関係でいられないこの体験でしかできないことだった。

リモート環境の充実は身体にいろんな変化を感じさせて、

いつのまにか「組織とネットワーク」の価値の違いを生んだのかもしれない。

ネットワークとは外にあるもので、組織にいてもそれはできる。

むしろその意識をもって組織にいるととても大きな力になる。

ネットワークと健康に接続していると、
自然と情報が入ってくるようになる。
それは相談という形になることが多い。

そのあとのその人は、自分でも何かを確認するみたいにこう言った。

その状態を維持するために必要なことはなんですかと聞いてみると、

「いい仕事するしかないね」と笑われた。

相談とはこの人ならなんとかしてくれると思える相手にするものだ。

信頼はいい仕事からしか生まれない。

そういえば8年ほど前に、僕が天才だと思っている技術者のひとが、

未来の重要な鍵は「トラスト」だ。それで社会を再構築できる気がしている、

と言っていたこと思い出した。そのときは何を言っているのか

次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ