アート、ジオラマ、映像––ここでしか得られない新たなゴジラ体験
朝日新聞社、PARCO、東宝は、4月26日から、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで「ゴジラ・THE・アート展」を開催している。
昨年、生誕70周年を迎えたゴジラは、誕生から現在に至るまで数々の映像作品として描かれてきた。水難事故や環境破壊への問題提起として描かれた第1作『ゴジラ』(1954年)をはじめとして、ゴジラはそれぞれの時代を象徴しながら、手がける監督によって異なる存在として我々の前に姿を現す。今回の『ゴジラ・THE・アート展』は映画の枠を超えた多様なアートによって、ゴジラの新たな表現を模索するという試みだ。なお、本展は解剖学者の養老孟司氏がゼネラルプロデューサーを務める。
「ゴジラ生誕 70周年記念ゴジラ・THE・アート展」コンセプトムービー
ゴジラに破壊された街を彷彿とさせる展示会場には、国内外のアーティストたちによる作品が4つのエリアに分かれて展示されている。「ゴジラとは、何か。」という問いに対し、日本の現代美術の第一線で活躍する30代から90代までのアーティスト8人(青柳菜摘氏、福田美蘭氏、風間サチコ氏、川田喜久治氏、小谷元彦氏、O JUN氏、佐藤朋子氏、横尾忠則氏)が、自身の答えをアート作品として展示して観客に問いかける。
作品展示エリアのエントランス。正面奥の作品は横尾忠則氏「PARADISE」。
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©Tadanori Yokoo
例えば、映像を用いたインスタレーションを得意とする青柳菜摘氏は、“バッドでビッグなやつ”であるゴジラが、70年にわたって愛され続ける理由について、日本や東アジアにおける龍神信仰が関係しているのではないかと考察。同時に、第1作『ゴジラ』放映の前年(1953年)に始まった国内テレビ放送からヒントを得て、全国の龍神情報を報じる架空のニュース番組を制作した。番組内の映像は、龍に関連する実在の民俗芸能の映像を提供してもらい、その上に架空のニュース原稿をコラージュさせた。また、ニュース映像のほかにも会場には詩を流すLED掲示板を点在させることで、ゴジラが破壊した会場に情報が氾濫する様を表現したという。
青柳菜摘「NNC―きょうの出来事β」より。一般提供してもらった民俗芸能の映像のうえに「龍殺処分 抗議の声30万件超」という架空の原稿を重ねる
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青柳菜摘「NNC―きょうの出来事β」より。ニュース番組映像のほか、会場には詩の流れるLED掲示板が点在する
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彫刻家の小谷元彦氏は、天井に届きそうな“人型ゴジラ”の木像を制作。小谷氏は「戦争」「霊的なもの(=ゴジラは近代の亡霊)」「神鹿(=神の使い)」という3つのキーワードをゴジラに感じ、制作に着手したという。その上で特撮特有のスーツや操演などに代表される人間の影の存在は、人間が本能的に恐怖を感じる“人のかたち”に通ずると考え、人型ゴジラを生み出した。また、人型ゴジラと対峙するのはとても小さな兵士。「人型ゴジラVS兵士」という構図は、怪獣VS人間だけではなく、人間同士の戦い=戦争も想起させる。なお、兵士はよく見ると、日本兵とパイプを加えた米兵が融合されている。


