宣伝会議の新講座「コピーライター養成講座 小藥元クラス meet&copy」が7月24日(木)から開講します。これに先立ち、講師のコピーライター・小藥元氏と、ゲストの吉田洋基氏(デザインノード)による無料体験講座『strategy&copy「それは戦略ワードなのかコンセプトなのかコピーなのか」』が開催されました。
約2時間にわたって語られた、コピーの役割や考え方、コンセプトや戦略との関係についてのトークセッションから一部をご紹介します。
「meet©」に込められた意味とは
まず小藥氏は、自身の屋号である「meet&meet」のコンセプトについて語りました。独立する際、当然コピーライターとして生きていく身として、writeやpenといった言葉にまつわるなまえを考えていたと言います。「言葉と絵が出会うことで、単体では思いつかなかった世界と出会う。それだけじゃなく、人と人、夢や愛と出会うなど、人間の本質みたいなものに触れられると思ってmeetにしました。出会う先に新しいものと出会えるという想いを込めています」と小藥さん。今回の講座名「meet©」も同じ思いが込められてると話します。
コピーライター ≠ キャッチコピーを書く人
小藥氏は、「コピーライターと言われると、キャッチコピーにどうしても目が行く」と語り、自身の仕事においては「実は、いわゆるキャッチコピーの仕事は1割もない」と明かします 。キャッチコピー=期間限定で存在するものではなく、たとえばTikTokの「もっと世界を好きになる。」のようなロングタームで機能し、ブランドの資産となる言葉の開発がメインだと言います。
そもそも、コピーライターという職業がきちんと定義されておらず、誤解されているのではないか、と話題は続きます。小藥氏が独立し、一番最初に担当した仕事が、サービスに込めた思いを言語化することでした。小藥氏は「そういった仕事は、代理店時代にはしたことがなくて。代理店時代は、メディアに関わる側面が多かったのですが、初めてコピーライターってメディア以外のところでも役立てるんだ!と思ったんですよね」と語ります。今でこそ当たり前に思えるが、当時はわからなかったと言います。
だからこそ、事業開発や人事組織といった領域と言葉が出会うことで、「拡張性や可能性が生まれる」と述べ、「言葉はビジネスの力にもなり得る」と続けます 。
価値の高いコピーを定義する
戦略プランナーから、クリエイティブやデータ・テック領域までを担う吉田氏は、今回のテーマである「コピー」「戦略ワード」「コンセプト」といった言葉について「それぞれは本来重なり合うもの」と定義します。
「例えば戦略をつくるときも言葉が根幹になるし、戦略だけにとどまっていると人は動かない。広告会社では広告コピーと戦略ワードは別だと習いますが、つながってるのが一番いいと思うんです。多少のグラデーションはあるものの、重なり合っているし、重なりの真ん中を見つけて言語化できたら一番いいですよね。すべてが一緒になる場合もあるし、戦略ワードとコンセプトは同じ言葉で、そこから始まるキャッチコピーは表現としては分ける。など、ケースによって様々な場合があり得ますが、真ん中は言葉でつながっている」と吉田氏。
まさにいろいろなものが重なっているのが“小藥コピー”とし、具体的な事例として、「かるまる」というサウナ施設のネーミングを例に挙げました。クライアントからの要望は「関東最大級」「ビジネスマンのオアシスになりたい」「人間回帰」といったコンセプトでした 。しかし小藥氏は、ブランド視点からの価値だけでなく、「受け手にとっての価値」が重要だと考えました。「サウナに行くビジネスマンの気持ちを想像したとき、「あ~」とか「う~」とか解き放たれる気持ちが真の価値じゃないかなと感じたんです。そこから“つかる”と“とまる”で、かるまるとネーミング。この言葉は結果的にブランドの目標を叶え、結果的に広がっていく可能性があるんじゃないかなと。まぁよく選んでもらったなと思いますけど(笑)」
「書く」前に必要な「コア」の発見
このように、ブランドは実はブランドだけのものではありません。つまり、“I”だけじゃなく、“we”の意識が大切だと小藥氏は続けます。そのうえで小藥氏が、コピーライティングのプロセスにおいて最も重要視していることを聞いたところ、「表現」そのものではなく、その手前にある「コアを見つける」ことだと返ってきました 。コアは、問題の本質やブランドの中心価値を定義・提示することに当たります 。何を書くかが見つかれば、そこからのジャンプアップは意外と簡単だったりもすると言います。
「わかりやすく言い換えると、信じられることは何なのか。それが見つかるとプレゼンができる。オリエンペーパーには企業の思いは書いてあっても、中心価値は書いていないことが多いです。まずは、自分が企業の価値を信じられるかどうか、そこに嘘がないかどうかが重要です。嘘やきれいごとはすぐにバレちゃいますからね」と小藥氏。
また、小藥氏と吉田氏がともに制作した、岡山県の移住促進コンセプト「暮らしJUICY!」も紹介されました 。このコピーが5年以上愛されていた秘訣は、言葉が持ってる「価値の容量」が大きいからではないかと推測。「子育てがしやすい」「食べ物がおいしい」など、様々な要素をお皿のように乗せられる「容量が大きい」言葉であることが、長く愛され、使い続けられる理由であると解説しました 。
AI時代に求められるコピーライターの役割
AIが発達し、簡単に「テーブルいっぱいのコピー案を並べられる」時代になった今、コピーライターに求められる役割はどのようなものなのでしょうか?
小藥氏は、数ある言葉の中から、これがベストなんだと言い切れる力が不可欠だと言います。「クライアントや多様なステークホルダーの意見をまとめ、これでいきましょう!とその空気に持っていく力です。」
対して、戦略系出身のクリエイティブディレクターである吉田氏は、戦略はコアに近いところにあるため、ビジネスのゴールを達成させやすい立場なのではないかと話します。真のゴール定義と、そこに至る戦略、課題、コアアイディア、表現を言葉でつなげられると続け、「自分が信じたものが間違っていたり、思い込みの場合もあると思います。データ(fact)やAIなども補完的に使い、自分が考えたコアがあっているかどうかを検証しています。また、データはn=1の集まりなので、一つひとつを見ていくと、実はこんな行動してるというのが見えてくるんです。データから妄想するというか、人間目線に変換することでインスピレーションを得ながら仮説をつくっています」と、具体的なデータの使い方を紹介しました。
最後に小藥氏は、コピーライティングの仕事は「つらい」ものだと正直な気持ちを明かしつつも 、「これしかないと思える」瞬間が最大の喜びだと語りました。
「クライアントが一番に自分のブランドのことを考えてるわけですから。仮に新人が100人いて、一人10案ずつコピーを考えたとしたら1000案集まっちゃうんですよ。僕が何か出したときに、新人が出した案と一緒ですって言われてしまう可能性もある。そんなの1周回っても追いつかない。一周、二周と回って、さらに深く入りこまないといけないんですよね。ただ、デザイナーさんやクライアントさんもいて、決して一人で仕事しているわけではないので、これだ!と思うものにみんなで向かっていくのは楽しいし、大事な役目かなと思っています」と締めくくりました。
コピーライター養成講座 小藥元クラス meet© 概要
◯開講日:2025年7月24日(木)19:00~21:00
◯講義回数:全6回
◯開催形式:教室とオンラインを各回自由選択できるハイブリッド開催
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