大丸松坂屋は7月17日、「百様図」と名付けたビジュアルアイデンティティ(VI)を策定。それをもとに7月30日に大丸は35年ぶり、松坂屋は23年ぶりに包材(ショッピングバッグ・包装紙)のデザインを一新すると発表した。
(左から)大丸松坂屋 ブランディング戦略室長の寺井孝夫氏、同 代表取締役社長の宗森耕二氏、デザイナーの三澤遥氏。
同社は全国の主要都市に15店舗を展開しているが、いわゆる「本店」を構えていないこともあり、店舗それぞれが独自の個性を持ち、その地域や文化と深く根付いている。一方で、“バラバラ”ゆえに「統一感のなさ」がひとつの課題として挙げられていた。そこで、顧客はもちろん、従業員にも企業が目指す姿を視覚的に理解してもらうことを目的にVIを策定することにしたという。
VIは、同社が大切にする「多様な価値観が認めあい重なりあう豊かさ」をテーマに制作。店舗の「つないできた歴史」や「それぞれの地域性」「時代の空気感や瞬間の美しさ」「顧客への心配り」といった価値観と、顧客一人ひとりの価値観が重なりあい、豊かで美しい調和が生まれる様子から「百様(ひゃくよう)」と名付けられた。
VI「百様図」。兄弟姉妹のような二つのデザインは、似ているようで違い、違うようでどこか通じ合う、大丸と松坂屋の関係を表現したという。
デザインを手がけたのは三澤遥氏(日本デザインセンター三澤デザイン研究室主宰)。どこにでもある紙という素材と、丸と四角という形、緑と青(ピーコックグリーンとロイヤルブルー)という色を幾重にも重ねたデザインを考案した。丸と緑は大丸、四角と青は松坂屋のシンボルマークをオマージュし、ふたつの屋号の歴史を今後も受け継いでいくという思いがこめられている。
三澤氏は「プロッターというカッティング機械で実際に紙を四角や丸に切り、無数の組み合わせを検証しました。スケッチを描いてつくるのではなく、紙を実際に動かすという身体的な作業を1年以上かけて生み出されたデザインです」とコメント。包材のデザインは図の一部を切り取ったものが採用された。
大丸の包材。丸と緑(ピーコックグリーン)でデザイン。
松坂屋の包材。四角と青(ロイヤルブルー)のデザイン。四角は松坂屋のマークにある「井桁」をリスペクトしたもの。
また、包材への印刷は「フレキソ印刷」という段ボール印刷などに使用されるポピュラーな方法を採用したものの、「百様図」の細やかな模様をズレなく出力するためにかなりの労力を要したことも明かされた。
新包材の使用開始に併せて、各店舗では「百様図」を知らせるための手紙も配布予定。内容は店舗ごとに異なり、その街ならではの文化を感じられるものとなっている。
配布予定の手紙。画像は大丸東京店のもの。
文章を手がけたコピーライターの長瀬香子氏は「各店舗の従業員の皆さんが、街づくりの担い手という使命感を持って働かれていることに感銘を受けました。そこで、街に根を張る百貨店が、その街の語り手になることを目的に制作しました」とコメントした。
なお、同社は今回の「百様図」について特設サイトをオープン。コンセプトや思いはもちろん、紙と紙が重なってデザインが出来上がる様子を映像で体感することができる。







