かってに「芥川賞・直木賞」都内5書店が開始 該当作なしで懸念、過去作は130万部超も

双子のライオン堂(東京都港区)など都内5書店は7月29日、読書好きの有志と連携し「かってに芥川賞・直木賞」を立ち上げたと発表した。全国の“芥川”姓と“直木”姓の人々から推薦書と選評を募り、選ばれたものを各書店の専用コーナーで紹介する企画だ。背景には、7月16日発表の第173回芥川賞・直木賞が「該当作なし」となり、関連書籍の販売機会の喪失がある。

写真 東京都赤坂にある書店「双子のライオン堂」に設置された「かってに芥川賞・直木賞」コーナー

東京都赤坂にある書店「双子のライオン堂」に設置された「かってに芥川賞・直木賞」コーナー

写真 芳林堂書店 高田馬場店

写真 久美堂 本店(東京都町田市)

芳林堂書店 高田馬場店(左)と久美堂 本店(東京都町田市)の「かってに芥川賞・直木賞」コーナー

リアル「芥川さん」「直木さん」が選ぶ、もう一つの賞

企画は、全国の“芥川さん”“直木さん”に選ばれた作品を「かってに芥川賞」「かってに直木賞」として店頭で紹介するというもの。POPやブック帯、ポスターなどの販促物を制作し、希望する書店へ配布している。現在は双子のライオン堂、芳林堂書店高田馬場店、久美堂本店に加え、黒田書店(東京都日野市)、銀座堂書店(渋谷区)でコーナー展開が行われており、協力店舗の拡大も進めている。

イメージ 高校教師の「芥川さん」が選んだ推薦書と選評

イメージ 高校教師の「芥川さん」が選んだ推薦書と選評

高校教師の「芥川さん」が選んだ推薦書と選評

イメージ 楽器店経営者の「芥川さん」が選んだ推薦書と選評

楽器店経営者の「芥川さん」が選んだ推薦書と選評

楽器店経営者の「芥川さん」が選んだ推薦書と選評

企画開始以降、全国の幅広い世代の“芥川さん”“直木さん”から推薦が寄せられている。親子での参加も見られ、推薦数は日々増加。SNS上では今回の該当なしをきっかけに、各地の書店が独自に「オリジナル芥川賞・直木賞」を立ち上げる動きも見られ、注目を集めている。

イメージ 「かってに芥川賞・直木賞」の販促帯

「かってに芥川賞・直木賞」の販促帯

過去には2万部から130万部超も、失われた拡販チャンス

第173回芥川賞・直木賞は、いずれも該当作がなかった。候補作は芥川賞が4作、直木賞が6作で、発表直後にはSNSで「書店員、泣いています」「書店目線だと辛いかも」といった投稿が拡散し、販売機会の損失を懸念する声が目立った。

芥川賞・直木賞の受賞作は、発表直後に候補作の帯替えや特設棚の設置が行われ、売上が急伸することが多い。過去の例では、芥川賞『されどわれらが日々――』(1964年)が初版2万部から100万部超、直木賞『限りなく透明に近いブルー』(1976年)が初版2万部から130万部超に達するなど、受賞を機に販売規模が大きく跳ね上がったケースがある。

出版不況が続く2010年代以降もその効果は見られ、直木賞『蜜蜂と遠雷』(2017年)が累計100万部を超え、芥川賞『コンビニ人間』(2016年)も累計60万部規模まで伸長するなど、受賞をきっかけとした販売増加は依然として続いている。この販促サイクルが成立しないことは、書店にとって大きな痛手となる。

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