街中でサロモンのスニーカーを履いている人をよく見かけます。ここ2,3年で加速度的に増えたように感じます。このサロモンは仏アルプス山脈の麓アヌシーにて創業した老舗スポーツブランドで、スキーのビンディングやブーツなどで知られています。現在は、カナダ発アウトドアブランド「ARC’TERYX(アークテリクス)」など複数ブランドを有するフィンランドのスポーツ用品大手アメアスポーツ傘下に入っています。日本では、2024年5月に大阪、2025年3月に名古屋、25年7月に東京・丸の内に直営店を構えるなど出店攻勢をかけています。
なぜ老舗ブランドのサロモンが、ここまでトレンドをつかまえて流行しているのか?今年6月に開催された世界最大のクリエイティビティの祭典カンヌライオンズで、この秘訣を公開してくれました。現地でセミナーを聴講した博報堂のエクスペリエンスディレクターの中島優人氏がレポートします(以下寄稿)。
そういえば、街中でサロモンのスニーカーを見かけることが増えた。これが「ゴープコア」というトレンドだろうか?
それが、アドタイ編集部の方から「アウトドアブランドのサロモンがカンヌで面白いセミナーをしそうなのでレポートしてみないか?」とお話をいただいたときの第一印象でした。
はじめまして、博報堂の中島優人といいます。カンヌライオンズには毎年たくさんの企画のヒント、そして勇気をもらっています。今回はカンヌで開催されたサロモンのGlobal Chief Brand Officer スコット・メリン氏によるセミナーのレポートをお届けします。
私たちはどうすれば勇気を持てるのか?
2025年のカンヌは「Creative Risk Taking」が1つのテーマだったように思います。
ベスト・オブ・ザ・ベスト的部門であるTitaniumのグランプリ「Three Words/AXA」など。数年前から称えられていた「Brave(勇気)」という価値観が、コミュニケーションやブランドアクションのレイヤーから事業やプロダクト開発まで浸透してきた印象です。
Titaniumのグランプリ「Three Words/AXA」のアワードショーでの受賞風景(著者撮影)
一方で、勇敢な決断は難しいことも事実。カンヌの公式レポートによれば自社を「リスク許容度が高い」と評価したのはわずか13%。3分の1近くのブランドが「極めてリスク回避的」であると自認しています。リスクテイクの低下は長期的にはブランド損失をもたらすことが分かっているにもかかわらず、です。
