インターナルコミュニケーションの鍵は「対話」と「デジタルアセットマネジメント」

7月に大阪で開催された宣伝会議主催の「マーケティングサミットリージョナル2025」。住友ゴム工業の平野敦嗣氏が企業カルチャーの醸成とその取り組みについて、アマナの谷野弘知氏と菅野翔氏が組織力を強化するデジタルアセットマネジメントについて、それぞれ事例をもとに知見を紹介した。

企業成長のためにタウンホールミーティングを活用

ダンロップを中心とするタイヤ事業、スポーツ事業、ゴムを活用した産業品事業を展開する住友ゴム工業。同社では、2019年に就任した新社長が国内外の社員との直接対話を開始。同年11月には、「Be the Change Project」として、組織風土の改革と利益基盤の強化を図る仕組みづくりを始めた。

写真 セミナーの様子

しかし、その後のコロナ禍で経営陣と社員の直接対話が困難に。2020年12月に新・企業理念体系「Our Philosophy」を制定し、2023年には新中期計画を発表。その浸透活動として「語る場(タウンホールミーティング、対話集会)」を設けた。この取り組みは、1回90分で社長と社員が対話できる場として、対面とオンラインの形式で開催。誰でも参加可能な形とし、社長自らWeb社内報で趣旨を発信した。

平野敦嗣氏は「新しいことを始める際には、趣旨や目的を明確にし、経営陣の本気度を伝えることが重要だ」と話す。「語る場」は、2023年~2024年の2年間で50回開催され、7900人が参加。事前質問を受け付け、当日はチャット機能を使って匿名で質問できる仕組みとし、終了後には事後アンケートを実施。質問にはすべて答えるという社長の覚悟の姿勢が伝わり、従業員の信頼醸成につながった。

写真 セミナーの様子

この場によって、トップダウンとボトムアップの対話を双方向に行うことにつながった。現場の工夫としては、対面時の演台の撤去、オンライン時の顔出し推奨、匿名質問の受付、アイスブレイクとして隣同士で話し合う時間の導入など、参加しやすい雰囲気づくりが図られている。また、Web社内報で「語る場」の動画配信やアンケート結果の共有を行い、冊子の配布や社員食堂での動画配信なども活用して全社的な浸透を心掛けている。役員によるパネルディスカッション、「役員のMy中期計画」などの動画コンテンツも配信した。

「語る場」がもたらす効果と今後の課題

こうした取り組みも後押しして、事業利益は急回復。また、エンゲージメントサーベイにおいては、「挑戦の後押し」「心理的安全性」「情報共有」の項目で向上が見られた。平野氏は、「なぜ」を語り、納得や腹落ちを促すことの重要性を強調する。「『社員のエンゲージメントを高めることが業績向上につながる』と言われるが、給料や福利厚生を上げるなどにより従業員満足度を高めるだけでは十分では無く、会社の課題を自分の課題として捉え、自発的に取り組める状態を促すことが重要」と話す。

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今後の課題として平野氏は、トップからの発信だけでなく、ミドルマネジメント層の行動変容が鍵だと話す。「語る場」は、社長と社員の対峙から参加者の課題や悩みの共感の場に変化した。思いの熱い人から周囲へと広がっていくという手応えが得られたことから、今後も周囲を巻き込みながら、同じ思いで取り組む人を増やすきっかけづくりに取り組んでいくという。その他、海外拠点での「語る場」の拡大、「語る場」の参加率とエンゲージメントスコアの相関比較を行いたいと話した。

社内のデジタル資産管理が、企業の成長を加速させる

広告ビジュアル制作業界大手のアマナは、企業の思いやコア・コンピタンス、技術、プロセスの可視化において豊富な実績を誇る。同社の谷野弘知氏によると、企業理念や経営ビジョンを各ステークホルダーに伝える接点は、Webサイトや株主総会、プレスリリースなど多岐にわたる。

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しかし、こうした情報発信は一時的である場合が多い。むしろ、日常的にステークホルダーと関わるのは、現場の社員だ。だからこそ、菅野翔氏は「インターナルコミュニケーションによって、社内の“ヒト・コト・モノ・オモイ”を共有することが重要だ」と強調する。

そこで着目したのが、社内に蓄積されたデジタル資産の活用だ。社内には、顧客や商品情報といった構造化データと、自由な形式で保存された非構造化データに分けられ、非構造化データが80%以上を占める。これらのデータを整理・構造化し、管理することで、「組織の情報は、誰もが活用できる戦略的資産になり得る」と菅野氏は述べる。そこで、デジタルアセット管理の方法を紹介した。

デジタルアセットマネジメントの活用事例とは

写真 セミナーの様子

アマナが提供するクラウド型デジタルアセットマネジメント(DAM)サービスの「shelf」は、同社も活用するツールだ。制作事例の可視化を行い、社内の意識と競争力を高めるとともに、社内教育も促進している。また、社員が提案時の着想や具体的なヒントを得られるよう、提案書のデータベースも設けている。

続けて、菅野氏は導入企業の事例として、総合電池メーカーの事例を紹介。海外の販売会社とのデータ共有の仕組みが確立されておらず、販促素材は国ごとに使用可否があるなかで、保存形式やファイル名がばらばらで、適切なデータを見つけるのが非常に困難だった。導入後は、転送機能で海外とのやりとりも安全かつスムーズに行えるようになり、専用ソフト不要で閲覧できるようになった。

菅野氏によると、DAMの導入による効果イメージとして、部門ごとに次のメリットが期待できるという。営業部門では、商品情報や販促資料、商品画像など、全営業に共有されていない情報を、誰もが確実に情報にアクセスすることができ、営業効率の向上につながる。PR・カスタマーサポート部門では、広報担当者に属人化しやすい情報を共有できるように。また、社内教育においても、研修内容をDAMにまとめておくことで、社員が簡単にアクセスできるようになる。

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企業が保有するコンテンツは、今後、量・質ともに増加していく。ただ整理するだけでなく、戦略的に活用することで、社員同士の「知」と「感性」を触発する有益なコンテンツに成りうる。菅野氏は「積み上げてきた知見をDAMで「見える化」することで、社員一人ひとりの行動変容を促すことができます」と締めくくった。

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お問い合わせ

株式会社アマナ

URL:amana.jp
EMAIL:k.tanino@amana.jp

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