頭でっかちなクリエイティブディレクション論【後編】いま必要なのは「傾聴力・整合力・生活力」

脱・「わかってねえな」「お前の意見なんか聞いてねえよ」

整合するためには、「徹底して聞く耳を持つ」姿勢が重要になります。確固たる仮説やアイデアがあればあるほど、周囲の意見はノイズに思えがちです。n=1の無邪気な(だけど実は本質的な)意見も、逆のベクトルのアイデアやフィードバックも、いってしまえば“邪魔者”のように感じるわけです。

「バカな○○を説得できないお前はもっとバカだ」とは、(弊社的)名著の『おざわせんせい』の一節ですが、自分の仮説/主観だけを拠り所に「関係のない意見」「筋の悪い意見」と切り捨てるのはバカだ⋯⋯と自分に対して思うようにしています。

お恥ずかしながら傾聴の姿勢が不十分なときもあるのですが、本当にいい戦略や企画はスポンジのようにすべてを吸収してグングンよくなるものですし、正解のない仕事だからこそ、多様な意見をファシリテーションしながら整合できるかはCDの腕の見せどころです。

CDが偉いというのは、ほぼ幻想です。「わかってねえな」「お前の意見なんか聞いてねえよ」とシャットダウンするのではなく、整合チャンスだと前向きに捉えて、とにかく聞く、考える、そして掛け合わせる姿勢が重要です。⋯⋯もし凡人なのであれば特に。私は凡庸なので、AIじゃないですが他人の考えを学習してアップデートできるってラッキーと思っています。

整合の大元になるのは「私の普段の生活」

「普段どんなインプットをしていますか?」という、No.1と言っていいレベルで苦手な質問。「流行りのコンテンツは見るようにしたり⋯⋯」などとそれっぽく答えていた時代も終わり、最近は「自覚的に生活しています」という回答に落ち着きました(前提として無趣味な人間ではあります)。

AIを活用したDeep Researchがほとんどのリサーチ作業を代替するレベルでインプットを授けてくれる時代、人間に残された汎用的なインプットは「生活」なのではないかと思っています。かつて「丁寧な暮らし」という言葉が流行った気がしますが、あえてそれと対比すると、これから必要なのは「粗野な暮らし」になると感じています。

海外ではBook Smart(知識・理論を通じた頭のよさ)⇔Street Smart(体験・実業を通じた頭のよさ)という対比がされるそうですが、それに即すとこれからはStreet Creativeの時代なのではないでしょうか。体験したこと・経験したこと・感じたこと・怒ったこと・衝撃を受けたこと・気になったこと⋯⋯そういうStreet/Life drivenなインプットこそが、その人らしいクリエイティブディレクションや整合の起点となるはずです。

これは何も、ワークライフなんとか、みたいなそれっぽいことをお伝えしたいというわけではなく、マイパーパスみたいな崇高な話をしたいわけでもなく、「生きてることがインプット」と思うだけでちょっと変わるもんです、というやや精神性の高いTIPSらしきものとしてご理解ください。

最終回も潔く「番宣」させてもらいます

最終回も潔く番宣(講宣)しますが、こんな感じの内容を、9月からスタートする講座「クリエイティブディレクション講座 藤平達之クラス」でお届けする予定です。講座は、以下の8コマ構成になっています。

イメージ 「頭でっかちなクリエイティブディレクション論」

今回書いた「姿勢」の話は第6~7回です。オリエンをもらったとき具体的にどうすればいいのか、オリエンから打ち合わせの間に何をすればいいのか、生活はいかにインプットたり得るのかといった、具体的なアクションプランをお話しする予定です。興味を持っていただけた方は、以下の講座概要をぜひご確認ください。

クリエイティブディレクション講座 藤平達之クラス
「クリエイティブディレクションの味方」 講座概要

イメージ 「頭でっかちなクリエイティブディレクション論」

開講日:2025年9月18日(木)19:00~21:00
講義回数:8回
開催形式:教室開催(宣伝会議表参道セミナールーム)
詳細・お申込:こちらから

 

7月30日に実施した無料体験講座をアーカイブ配信中!こちらからご視聴ください。

3回ともなんだか無駄に長くなってしまった気がしますが、勝手に自分の頭の整理をさせていただきました。ここまでお読みいただいた方、本当にありがとうございました!

advertimes_endmark
avatar
藤平 達之

博報堂/SIX
クリエイティブディレクター/ストラテジスト

1991年生まれ。一橋大学卒業後、2013年博報堂入社。クリエイティブブティック・SIX、官民共創クリエイティブスタジオ・Vegaにも所属。 「愛される/尊敬されるブランドを社会に増やす」という目標を持ち、パーパスと生活者発想の両視点から設計したコンセプトを、広告/コミュニケーションに留まらず、サービス/プロダクト、コンテンツやインナー活性化プログラムなど、さまざまな手法で体験にする。 これまでに「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 総務大臣賞/グランプリ」などを受賞。ad:tech tokyoなど登壇の実績も多く、自著に『クリエイティブなマーケティング』(現代書林)がある。 好きなものは、串揚げとジンとクッキー缶。


1 2
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ