なるべく広告と遠いものを見る―「宣伝会議賞」応援企画・発想ブレイクスルー集【1】

約2カ月間にわたる「宣伝会議賞」の応募期間も半分が過ぎ、ふと手が止まる瞬間が増えていませんか。そんなときこそ、新たなひらめきへとつながる視点が必要です。「宣伝会議賞」の審査員7人に、アイデアを前に進めるための方法を聞きました。一人目は、今回初めて審査員を務める、電通の伊藤みゆきさんです。
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伊藤みゆき氏

電通

漫画と取材と動物園が好きなコピーライター。最近の仕事は、すみだ水族館・京都水族館「ペンギン相関図2025」、マウントレーニア「もしも東京の真ん中に、山があったら。」「偉大なる、ひとやすみ。」、ドミノ・ピザ「いい日、ドミの日。」、ORIX HOTELS & RESORTS「どっか、行こうよ。」など。

Q1. アイデアが出ないとき、最初に頭の中で何をしますか?

「あの人だったらどう書く?」を考えます。心のひだに触れる表現が得意なあの先輩、ドライだけど本質的なことをボソッと言ってくれるあの後輩、実際に話したことはないけれどたくさんお手本にした大御所コピーライターのみなさん。自分の頭からいったん離れて考えることで足がかりを探します。

Q2. 視点を変えたいときに使う“発想フレーム”や“型”があれば教えてください。

「話者を変えてみる」というのはよくやっています。なんかもうコピー出ないな〜というときに自分が書いたものを俯瞰して見ると、話者が書き手(企業)やユーザーの一人称に偏っていることが多いです。

「宣伝会議賞」は人と違う視点が求められやすいので、話者の偏りを感じたらまったく別の話者(ユーザーの家族や友人、商品を知らない人、ちがう時代の人など)にしてみると幅が広がりやすいです。

Q3:アイデアを刺激する“インプット”として頼りにしているものは?

なるべく広告と遠いものを見るようにしています。

漫画や映画や本や展示会、それからニュースやSNSを見て「いま人の気持ちってこういう方向に流れてるのかもな〜」と想像してメモったり。SNSに関しては、自分のアカウントは自分好みに調整されているのであえて雑多な情報を入れる用の別アカウントをつくったり。あとは自分が思いつかないような単語を摂取したくていろいろな曲を聴いていたこともありました。

Q4:頭を切り替えるために、物理的な“環境”で工夫していることは?

「宣伝会議賞」やラジオコンペなど、ひとりでたくさんの企画を考えるときに重宝していたのは本屋です。本屋にはいろいろな情報が雑多に散らばっているので、お題となる商品のことを頭の片隅に置きながら目に入った単語と結びつけて企画にできないか考えるというのをよくやっていました。

例えば食品のお題だと「家族」とか「料理」の分野で考えてしまいがちですが、あえて「建築」とか「生物学」の棚に行って背表紙の単語を眺めたり。自分の思考を強制的に外に持っていくための儀式みたいなものでした。今も本屋にはよく行きます。

Q5:気持ちが落ち込んだとき、どうやって立て直しますか?

若手の頃先輩に「この仕事はいかに効率よく気分転換できるかだぞ」と言われたのがとても記憶に残っているので、短い時間でも昼寝したり散歩したり、ネガティブな気持ちと物理的に距離を置くようにしています。

あと公募賞って応募者が多いぶん受賞できる確率も低いので、あまり自分を追い詰めずに「考える筋肉つけるのが主目的で、賞はおまけでとれたらいいな」くらいの気持ちで臨んでいました。考えたことが実際の仕事で活きたことがたくさんあります。

Q6:これまでに“スランプを抜けた瞬間”のエピソードがあれば教えてください。

希望のない話で恐縮ですが、とにかくずっと考えていたというエピソードしかなく…。

「何かを見かけたらとりあえず課題と接着できないか考えてみる」というのを意識し続けていると、だんだんとその感覚が標準搭載になってきて企画が出やすくなります。しょうもない企画もたくさん出ますがあまり気にせずに、思考の癖をつけようと思って続けていました。私が公募でいい結果を得られたアイデアは、だいたい脳みそを酷使した先に捻り出したものでした。

Q7:応募者の皆さんにメッセージをお願いします。

「宣伝会議賞」によく応募していた若手の頃。初対面のクリエイティブディレクターに挨拶したら「もしかして『宣伝会議賞』の通過者のところによく名前載ってる人ですか?」と言われたことがありました。その後、「あれだけ量書けるならガッツありそう」と一緒に仕事をすることに。とにかく書きまくる時間はしんどいですが、がんばりを見てくれている人はけっこういるし、受賞以外のものをもたらすこともありますよ。

第63回「宣伝会議賞」特設サイトはこちら

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