YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は、商品を「売る」ことを目的にしていない。にもかかわらず、5分でスケッチブック5000冊を完売させるなど、驚異的な販促力が特徴だ。その裏にあるのは、企業っぽくない“素直さ”と視聴者の“知的好奇心”を満たすコンテンツ設計。動画として面白いものを届け、信頼を得る有隣堂の“動画プロデュース”に、これからの売り方のヒントがあった。
「ゆうせか」で売れるものには3つの共通点がある?
「ゆうせか」はコンテンツの面白さだけではなく、販促力があることも印象的だ。例えば、視聴者と一緒にスケッチブックを企画・制作し、生配信で販売した取り組みでは、5分で5000冊完売という成果を記録した。低迷する書店業界の中でも、YouTubeを通して話題化・販促を実現している唯一無二の企業といえる。
同社の広報で「ゆうせか」の立ち上げからコンテンツ企画・出演に携わっている渡邉郁氏によると、「話題化し、売れる商品」には共通点があると話す。それは「背景にストーリーがある商品」、「そのストーリーに共感されること」、そして「ストーリーを話す人への信頼感」の3つだ。
「『ゆうせか』では、当社のバイヤーが出演し、商品を紹介するのが特徴です。機能的な価値はもちろん、その商品の背後にあるストーリーも熱く話します。しかし、私たちは企業です。熱く語るだけでは商品の押し売りになってしまいかねません。そこで大切にしているのが、素直さです。紹介するバイヤーも、MCのブッコローもお客さま視点に立ち、商品について切り込んでいきます。とくにブッコローは本当のことしか言いません。忖度ゼロです(笑)。“ブッコローとバイヤーがここまで言うから、つい欲しくなってしまった”、“熱く語られた商品の背景に共感した”。動画の中で、このような感情を生み出せる商品は話題化し、売れるのかなと思います。今売れるものには、商品自体、その後ろにあるストーリー、それを伝える人、この3つが重要なのかもしれません」(渡邉氏)。