「有隣堂しか知らない世界」なぜ売れる? 動画から考える、これからの売り方

YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は、商品を「売る」ことを目的にしていない。にもかかわらず、5分でスケッチブック5000冊を完売させるなど、驚異的な販促力が特徴だ。その裏にあるのは、企業っぽくない“素直さ”と視聴者の“知的好奇心”を満たすコンテンツ設計。動画として面白いものを届け、信頼を得る有隣堂の“動画プロデュース”に、これからの売り方のヒントがあった。

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渡邉郁氏

有隣堂
経営企画本部広報・マーケティング部課長

2002年入社。店舗にて書籍の接客販売、本部にて書籍MDを経験。その後、新規出店、新規事業の立案等に携わり、2018年開店の有隣堂の新業態店舗「HIBIYA CENTRAL MARKET」の初代店長を務める。YouTubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界」は2020年立ち上げ時より企画運営を担当。2023年9月より現職。

ハヤシユタカ氏

「有隣堂しか知らない世界」プロデューサー

フリーランスの動画クリエイター。都内の映像制作会社に入社後、在京キー局の報道・情報・ドキュメンタリー番組でディレクターとしての経験を積む。2020年に独立し、現在は老舗書店「有隣堂」の公式YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』にて、プロデューサー兼ディレクターを務める。

「ゆうせか」で売れるものには3つの共通点がある?

「ゆうせか」はコンテンツの面白さだけではなく、販促力があることも印象的だ。例えば、視聴者と一緒にスケッチブックを企画・制作し、生配信で販売した取り組みでは、5分で5000冊完売という成果を記録した。低迷する書店業界の中でも、YouTubeを通して話題化・販促を実現している唯一無二の企業といえる。

同社の広報で「ゆうせか」の立ち上げからコンテンツ企画・出演に携わっている渡邉郁氏によると、「話題化し、売れる商品」には共通点があると話す。それは「背景にストーリーがある商品」、「そのストーリーに共感されること」、そして「ストーリーを話す人への信頼感」の3つだ。

「『ゆうせか』では、当社のバイヤーが出演し、商品を紹介するのが特徴です。機能的な価値はもちろん、その商品の背後にあるストーリーも熱く話します。しかし、私たちは企業です。熱く語るだけでは商品の押し売りになってしまいかねません。そこで大切にしているのが、素直さです。紹介するバイヤーも、MCのブッコローもお客さま視点に立ち、商品について切り込んでいきます。とくにブッコローは本当のことしか言いません。忖度ゼロです(笑)。“ブッコローとバイヤーがここまで言うから、つい欲しくなってしまった”、“熱く語られた商品の背景に共感した”。動画の中で、このような感情を生み出せる商品は話題化し、売れるのかなと思います。今売れるものには、商品自体、その後ろにあるストーリー、それを伝える人、この3つが重要なのかもしれません」(渡邉氏)。

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