AI×情熱で新規事業開発に貢献、Web運用は高速改善サイト設計がカギを握る?

宣伝会議主催「マーケティングサミットリージョナル2025」が7月11日、大阪で開催された。登壇したSuper Normalの奥谷孝司氏、MMOL Holdingsの河野貴伸氏、アクアリングの茂森仙直氏は、社内の新規事業の立ち上げや、自社のWeb運用をする際に立ちはだかる障壁や、その障壁の乗り越え方について紹介した。

新規事業の立ち上げでもっとも高いハードルとは

MMOL Holdings(ミリモルホールディングス)とSuper Normalは、それぞれ新規事業の立ち上げ支援を行っている。MMOL
Holdingsは人の情熱×AIで事業の課題解決に導く事業に取り組んでおり、「AIは、あくまで人間を強化、進化するために活用している」と河野氏は話す。

写真 セミナーの様子

Super Normalは「優れたふつう」を顕在化して世の中に伝え、広めていく社会的態度表明活動を支援する企業だ。河野氏は、社内での新規事業立ち上げにおいて最もハードルとなるのが「環境」だと話す。奥谷氏も、新規事業の立ち上げの際には、「すぐに儲かるの?」といった社内の批判の声に立ち向かう態度が必要であり、事業の立ち上げには周りのウォームハートな「環境」が必要だと話した。一から起業する場合は、新しく自分で環境をつくっていけるが、社内で立ち上げる際には、すでに既存の環境があるためハードルが多い。

チャレンジしやすい環境づくりの1つとして、奥谷氏は、「少人数でAIをどんどん使うことが重要。AIは冷静な判断ができ、タスクを分けることも可能で。無料で使える機能もあり、使いたい期間だけお金を支払い、必要なければ解約すればいい。効率的に、自由かつスピーディに動けることこそ、チャレンジしやすい環境だ」と話した。

社内においては、これまでの経験則から1つの仕事に対して大まかな時間軸が定着している。しかし、新規事業の立ち上げにおいては、今までの時間軸とは異なる考えを持たなければならない。失敗しても次につなげれば良いが、次へのスピード感を持たなければ、損失は重なってしまう。そのため、市場に合わせてスピード感を上げ続け、そのスピード感を定着させられる環境を整えていく必要がある。

写真 セミナーの様子

河野氏はこうした環境づくりに欠かせないのは、「事業目標に対して細かくタームを切ることだ」と話す。例えば1年かけて取り組む事業を始めるなら、3カ月ごとに目標を立てる。3カ月ごとにタームを切ることで、3回失敗しても、4回修正できるので勝率は高い。また、高い勝率に加えて、短期目標に向かう、スピード感をもった環境もでき上がるというわけだ。

新規事業の「顧客理解」はAI×情熱で乗り越える

また河野氏は、ツールやテクノロジーを使うことの大切さに加え、「自分たちの商品を使ってくれるお客様が、どんな人で、何を思っていて、どんなものを求めているか理解することが重要であり、そうした顧客理解には人間的な情熱が欠かせない」と話す。その一方で奥谷氏は「人への興味関心がない人間には、新規事業の立ち上げは難しい。情熱はもちろんだが、商品理解、人間理解への執念も大切だ」と話した。

今、世の中にはAIを搭載したブラウザが増え続けており、将来的には、私たちの発信したメッセージをもとに、「服」という検索ワード1つに対して「大事にしたいのは素材感?サイズ感?」といった質問がされ、回答に沿った商品をAIが進めてくれるといった、AIがユーザーに寄り添う時代になるのは確定しているという。こうした時代で求められるのは、検索で上位に載る技術ではなく、真にお客様に刺さるメッセージの発信だ。商品に関する情熱的なメッセージや、「なぜこの商品を求めるのか」といった人間の問いをAIに学ばせ、より高い精度の商品提案ができるようにしていかなければならない。

写真 セミナーの様子

奥谷氏は「AIに正しいプロンプトを渡さない限り、堂々巡りになってしまうため、人間が何かを仕掛けたら、その結果に対してAIと『どういう意味があるのか』を壁打ちしていくことで、リソースをよりレバレッジできるのではないか」と話した。「クールな頭をしたAIと、人間的な情熱の両軸を組み合わせてPDCAを高速で回し、自分たちの勘所を見出していくことが、新規事業の立ち上げで大事であるというのが私たち2人の見解だ」と河野氏は締めくくった。


行動観察から、ユーザーの心理分析で読み解くアポロモデリング

APOLLO11はABテストツールやAIプラットフォームなどの開発・提供を行う企業。吉丸氏は「データ分析ツールではユーザーの行動が読めても、その理由や感情までは教えてくれないため、ユーザー心理が壁となる」と語った。アクセス解析の結果、コンテンツ読了率が高いがコンバージョンボタンが押されていないなど、離脱率やクリック率ではユーザーの心理を理解するのは難しく、結果的に見当違いな修正をしてしまう場合もある。アクセス解析を見て改善策を細かく議論することはあまり意味を成さないため、「アポロモデリングを使い、数字では見えない本音を可視化することが重要」と語った。

写真 セミナーの様子

アポロモデリングとは、APOLLO11の開発した、ユーザー行動から感情を類推して心理分析するツールで、ユーザー行動観察から心理分析をするものだという。アンケートやデータ分析、直観では再現性や潜在ニーズがなく、数字のバイアスがかかったりするため、観察に基づくデザイン思考をベースとした同ツールでは、アイデアの量産に再現性があるというわけだ。実際、大手ECサイトの事例ではコンバージョン数が17%アップし、導入からわずか8カ月で数十億円の売り上げ増を実現したという。

時間とコストの壁の突破は高速改善サイト設計がカギを握る

アクアリングは、2000年から名古屋を中心に、メディアの構築・維持・管理・運用などに取り組むコミュニケーションデザインファーム。コンバージョンを上げる運用において障壁となる「時間とコストの壁」について茂森氏は考えを話した。Web運用では、改善策を見出せたとしても、サイトの構造が高速改善に適しておらず、改善施策やアイデアを検証する時間とコストがかかるケースが多いという。代表的なワークフロー構造として、「改善効果の測定や分析に時間がかかる」「テスト環境準備が煩雑」「小規模改善でも複数部署の承認が必要」といった問題がありがちだが、これはチームで認識合わせがすることで改善できる。しかし、「フロントエンド改修にバックエンド開発者の関与が必要」という問題に関しては、サイトリニューアル時や初期開発を考慮した構造を仕込んでおかなければならないため、Web運用をしていくなかで「時間とコストの壁となる」と茂森氏は語った。

写真 セミナーの様子

時間とコストの壁の突破には、「高速改善サイト設計」がカギを握っていると茂森氏は話す。高速改善サイト設計とは、改善施策やアイデアをすぐに試せて、改善しやすいサイト構造のこと。フロントエンド開発者のみで変更・検証できるため、複雑な承認や開発待ちも必要なく、役割を分離することで無駄を削減できるという。高速改善サイト設計に有効な手段は3つ。1つ目は「デザインシステムの導入」で、ルールを設けることで思考やフローなどを統一でき、効率が上がる。2つ目は「ヘッドレスアーキテクチャの採用」で、サイト構築に関わる人数を削減することができ、作り手やクライアントのストレスが緩和できる。3つ目は「ABテストを当たり前にする開発環境」で、アジャイル設計モデルでABテストを「日常業務」として行える環境を提供することで、素早くテストを回せる。「フォームの到達率が低く、改修したいが予算が潤沢でない」という事例では、改修サイクルは月1回程度だったが、リニューアルを契機に「ヘッドレス化+デザインシステム導入」でUIを手軽に改修できる環境を提供したところ、1年の目標を3カ月で達成し、SEの工数も5分の1にできたという。

写真 セミナーの様子

一般的に、施策数とコンバージョン向上率には相関関係があると考えられており、アクアリングの「高速改善サイト設計」、そしてAPOLLO11の「アポロモデリング」を統合したアプローチなら、ユーザーの真の課題に対応した効果の高い施策を実施できるという。またこの分野では、細かい修正が多いため、生成AIのクリエイティブ量産とも相性がいいという。的確な施策を高速で回せるため、この統合モデルを使うと、かつてない加速度でサイトのCV向上が実現できると茂森氏は締めくくった。

advertimes_endmark

お問い合わせ

株式会社アクアリング

TEL:052-249-7700
MAIL:customer-success@aquaring.co.jp

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ