縦型ショートはABC時代へ:アルゴリズム・ブランド・コミュニティ—3つを育てるクリエイティブ戦略

新たなメディアとして日々影響力を増している縦型ショート動画。多くの企業が運用に挑戦していますが、なかなかうまくいかない現実も…。宣伝会議の「ショート動画・縦型動画プランニング力養成講座」で講師も務める縦型ショート動画のパイオニア、橋本剛典さん(neko punch)に、運用に必要なポイントをお伺いしました。

「広告だけ出す」時代の終焉

TikTok Shopの話題が目白押しの縦型動画界隈ですが、その裏で 広告を運用するためにオーガニックアカウントとの連携が必須 になったことはご存じでしょうか? 表向きはカスタムアイデンティティを使って、ユーザーのフリをした広告を抑制するためかと思われがちです。しかし本当にそれだけでしょうか?

私は、広告とオーガニック双方の「機械学習」を連携させていく大きな流れの始まりだと考えています。これはつまり、「広告だけ出稿すればよい」という時代の終わりを意味します。これからの企業はオーガニックコンテンツも発信し、アカウント自体を「資産」として育てることが強く推奨されるのです。広告とオーガニックを一体と捉え、縦型ショート動画戦略を根本から見直す時が来ています。

アルゴリズムは「攻略」ではなく「育成」

これまで、企業の縦型ショート動画は「ブランド(B)」↔「コミュニティ(C)」の二項対立で語られがちでした。ブランドが「伝えたいこと」と、ユーザーが「見たいもの」。この絶妙なバランスをどう取るか。「トレンドに乗りたいが、ブランドイメージと合わない…」といった悩みは、多くの担当者が抱えてきた課題でしょう。

そこへ新たに「アルゴリズム(A)」という視点が加わると聞くと、頭が痛くなるかもしれません。実際に私がTikTok for Businessに在籍していた頃、多く受けた質問の一つが「アルゴリズムを攻略(ハック)したい」というものでした。

しかし、この「攻略」という言葉には、どこか裏技を探すようなニュアンスがあり、私は少し違和感を覚えていました。アルゴリズムは、抜け穴を探す法律のような存在ではありません。

私の考えでは、アルゴリズムとは「育てる」ものです。プラットフォームは、単発の再生数だけでなく、アカウントの一貫性やユーザーとの長期的な関係性までを学習しています。だからこそ、小手先のハックではなく、腰を据えてアカウントという資産を育てる発想が不可欠なのです。

いまさら聞けない「アルゴリズム」と「アカウント連携」の重要性

TikTokのアルゴリズムは、投稿された動画を隅から隅まで分析し、ユーザーの反応(視聴完了、保存、シェア、コメントなど)を学習し続けます。この個別の学習の積み重ねが、「このアカウントが、誰向けの、何を発信するアカウントなのか」という全体の学習を形成していくと考えられています。

そして今、オーガニックと広告の学習が連携することで、両者の成長を相互補完し、加速させることが可能になります。だからこそ、オーガニックと広告を切り分けず、両輪で走らせることが成功の鍵となるのです。

次ページはこれからの「ABCフレームワーク」

次のページ
1 2 3
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ