「世にも奇妙な物語」施策はなぜ成功した?予定調和をぶっ壊す企画術

いつもの日常の中に「違和感」をつくる

私が担当した世にも奇妙な物語のWEBコンテンツ「西野ン会議」もそういった考えに基づいて制作したものです。2020年当時、コロナ禍がはじまり、人と会えない、街に出てはいけない、これからどうなるか誰もわからない、混乱した時代のはじまりの頃でした。けれど逞しいもので、非日常も、日が経てば少しずつ順応していき、新しい日常としてみんなが受け入れ始めていたようにも思います。同時に「オンライン会議」という文化が急速に浸透していきました。

私たちの生活の中に、異物として入ってきた「オンライン会議」。仕事や講義を進めるにあたっての必要条件は満たしていながらも、なんとなくの違和感(人と会う時に感じるぬくもりなのか、息づかいなのか、大事な何かが欠けたようなうっすらとした不安)があるように感じていました。見慣れつつあるオンライン会議。けれど、どこか不安。複雑な感情のまま、仕方なしに異物を受容しつつある不思議な日常に、ブランドとユーザーをつなぐ「あそび」をつくる可能性を感じました。

「西野ン会議」は、ZOOM風のUI上で不特定多数の人たちと顔を合わせ、その中で奇妙な体験に巻き込まれていく体験型のホラーコンテンツです。「オンライン会議ってこんな感じだよね」という予定調和(共通の了解)ができつつある頃に、「オンライン会議でこんなこと起きたらヤバいよね…」という違和感のある体験で気持ちよく裏切る。時代の文脈を前振りとしたコンテンツにすることで、体験時間に対する満足度が非常に高くなり、多くの人の心を動かすことができました。

イメージ 『世にも奇妙な物語 ’20夏の特別編』のスペシャルコンテンツ「西野ン会議」

『世にも奇妙な物語 ’20夏の特別編』のスペシャルコンテンツ「西野ン会議」

結果として、数十万人がプレイし、Xでトレンド入りしただけでなく、YouTuberたちが次々とプレイ動画を上げてくれるなど、反響が大きかったです。フィッシャーズがアップしたYouTube動画は1495万再生、キヨさんの動画は799万再生を超えているだけでなく、普段はゲーム実況をしない人たちもさまざまな動画を投稿し、さらには「西野ン」のファンアートを自作してXにポストしてくれる流れまでできました。世にも奇妙な物語のWEBコンテンツが、YouTubeやSNS上におけるコロナ時代を象徴するひとつのムーブメントになった瞬間でした。

余談ですが、「西野ン会議」は全スタッフが一度もリアルで会うことがないまま、企画会議も、撮影も、編集も、すべてオンラインだけで制作をしたため、打ち上げとしてみんなで神社にお祓いにいった日が、スタッフの初めての顔合わせになりました。そういう意味でも、時代を表したコンテンツだと感じています。

講義でお話しすること

「カヤック おもしろ突破塾」では、

●いつも使っている乗換案内アプリという日常の中に奇妙な違和感を仕込み、バズった事例。

●予定調和しがちなYouTuberの案件動画の中で、視聴者がみんなで応援したくなる違和感をつくった事例。

など、他の事例を交えつつ、多角的にお話をしていく予定です。

また、記事ではシンプルに紹介しましたが、実際に企画を詰めて制作に落とし込んでいく際、コンテンツをどう話題にしていくかのテクニカルな設計の部分や、ギミックひとつひとつにこだわる理由など、より具体的なお話もしますので、ぜひ興味を持った方は講座への参加を検討していただけますと幸いです。

カヤック おもしろ突破塾 講座概要

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開講日:2025年9月25日(木) 19:00~21:00
※初回のみ木曜に開催、以降は土曜日に開催。
※最終日のみ13:00~
講義回数:7回
開催形式:教室開催(宣伝会議表参道セミナールーム)
※最終回のみ、鎌倉のカヤックのオフィスにて開催
詳細・お申込:こちらから

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佐久間 亮介

面白法人カヤック
クリエティブディレクター

1990年、福島県生まれ。面白法人カヤックで、クリエイティブディレクター、プランナーに従事。フリーランスのクリエイターとしても活動。主な仕事に「日清50周年 カップニャードル(ACC 金賞)」「世にも奇妙な物語 西野ン会議(ACC 銀賞)」「集英社 World Maker(テクニカルディレクションアワード 銅賞)」「ホロライブプロダクション ブランディング施策 2023,2024」など。


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