約2カ月間にわたる「宣伝会議賞」の応募期間も半分が過ぎ、ふと手が止まる瞬間が増えていませんか。そんなときこそ、新たなひらめきへとつながる視点が必要です。「宣伝会議賞」の審査員7人に、アイデアを前に進めるための方法を聞きました。第3回は、一般部門審査員を務める山﨑博司さんです。
Q1. アイデアが出ないとき、最初に頭の中で何をしますか?
アイデアがでないときは、その日にその課題を考えることをやめて別の課題に取り組みます。仮に3時間ほどアイデアを考える時間があれば、1日で3時間使うよりも、1日1時間を3日間かけて考えたほうが、いいアイデアが広がると思っています。そして最後の日にアイデアを振り返り、いいなと思ったものを選んでいきます。
Q2. 視点を変えたいときに使う“発想フレーム”や“型”があれば教えてください。
ひとりで考えると限界があると思うので、視点を変えるなら僕は人にヒアリングすることをおすすめします。といってもアイデア自体を聞くわけではなく、その商品やブランドについてどう思うかを聞いたりします。
クルマひとつとっても、僕の捉え方と20代の子の捉え方が違うので面白いです。周りの友だちや家族にヒアリングすることで、ひとりでは想像できなかった視点を手にいれてみてください。
Q3:アイデアを刺激する“インプット”として頼りにしているものは?
特定のインプット源はあまりなく、それよりは映像や広告、ニュースなどをみたときに、自分がどう感じたかを大事にしています。
なぜいま感動したのかな?なぜいま怒りを感じたのかな?なぜいまおかしいと思ったのかな?このように自分の心の機微を紐解こうとしています。
また、人の人生を聞くことが好きで、よく打ち合わせや移動などで隙間時間ができたらいろいろな人に話を聞いています。どんな幼少期を過ごしていたの?なぜその決断をしたの?そのときどう思ったの?などなど。
すぐにアイデアや仕事に結びつかないかもしれませんが、インサイトを考えるときのヒントになると思っています。
Q4:頭を切り替えるために、物理的な“環境”で工夫していることは?
ずっと椅子に座っていることが得意ではないです。ひとつのアイデアを思いついたらウキウキしてしまい立ち上がってしまいます。そのままブツブツ言いながら歩き、次のアイデアを考えています。会社だと意味もなく歩いていると変なのでトイレまで向かい、何もせずに席に戻ったりしています。家ならリビングをひたすらぐるぐると回っています。
Q5:気持ちが落ち込んだとき、どうやって立て直しますか?
気持ちが落ち込むことはあまりないので、アイデアがでないときについて書きますね。
そのときは別の仕事をするか、仮眠をとるか、寝ます!どんな場所でも、どんな状況でも、寝ることができるのが自分のいいところだと思っているので、少しつかれたなと思ったら積極的に仮眠することでリフレッシュしています。
Q6:これまでに“スランプを抜けた瞬間”のエピソードがあれば教えてください。
若い頃モヤモヤしていたときに、師匠である井口雄大さんから「結局、山﨑くんはどうしたいの?」と言われたことがあります(当時博報堂では4年間の徒弟制度がありました)。
商品やブランドを担当するクリエイターとして、どうしたらその商品の価値を伝えられるか。こうしたほうがいいのではないか、と言い切れるまで考えられているか。その姿勢が大事だということに気づけた瞬間でした。
Q7:応募者の皆さんにメッセージをお願いします。
たくさん書いて、たくさん提出してみてください。宣伝会議賞のいいところは、審査ではあるものの審査員がコピーを選んでくれるところです。1次審査を通過した自分のコピーと通過しなかった自分のコピーを見比べてみる。他の人の通過したコピーと自分のコピーを見比べてみる。そしてどこがよかったのか、どこが伝わらなかったのかを考えてみる。その時間こそ最高の学びだと思います。
僕も若い頃、宣伝会議賞に応募していて、1回の応募で2000本近く提出した覚えがあります。当時は紙に書いて提出だったので、ひたすらプリントしていた記憶がありますが、たくさん書いた経験がいきていると思います。
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