“朝ドラ”でおなじみのNHKの連続テレビ小説。2025年度後期は9月29日から『ばけばけ』が放送予定だ。
『怪談』などの著作で知られる小泉八雲の妻、小泉セツをモデルに、夫婦が生きた激動の時代を描く(作中では、セツは松野トキ、八雲はヘブンという役名)。今年4月、ドラマのロゴが発表された。
「企業ロゴなどと比べ、ドラマの場合は物語のフックになるようなつくりが必要だと思っています。その中でも、朝ドラのロゴは毎朝目にするもの。奇抜すぎず、けれども視聴者の記憶に残るデザインを心がけました」と話すのはデザインを担当した西澤和樹さん。合計20近くの案から検討を重ね決定したという。
ロゴで描きたかったのは、夫婦の日常。「物語の幕開けとなる明治時代は、人々の暮らしや価値観がどんどん『化けて』いった時代です。落ちぶれた武家の家庭から世間の批判を恐れずに女中となったトキ、両親から見放され居場所を求めて各国をさまよい日本に流れ着いたヘブン。そんな2人の日常にある、何気ない幸せや面白おかしい生活を表現してほしいというオリエンがありました」と西澤さん。だからこそ、わかりやすい怪談モチーフはあえて前面に押し出さなかった。
夫婦を表現するにあたって取り入れられたのが“くせ字”。言葉の壁があるトキとヘブンは、日本語と英語が入り混じった独特な言葉遣いで互いが大好きな怪談を語り合う。傍から見ればヘンテコだが、2人からすれば自然なコミュニケーションの様子を描くには、既存のフォントではなくオリジナルのデザインが必要だと西澤さんは考えた。
「人のくせ字をいくつか参考にしながら、フォントのラフを書いてトレースしました。『ば』の濁点も、片方を西洋由来のゴシック体、もう一方を日本の筆文字に近い明朝体のようなデザインにすることで、夫婦の文化の違いも表現しています」。
初回放送が近付き、ますます世間の注目も集まる。「よく見ると少しヘンテコな、物語の空気感をつくるロゴにできたかなと思います。視聴者の皆さんにとって、作品を楽しむひとつの要素になってくれたら嬉しいですね」(西澤さん)。

スタッフリスト
企画制作
NHK
D
西澤和樹

