“遊ばれる広告”のつくり方─1.6億インプレッションの裏側|面白法人カヤックの「その手が、あったか。」 其の4

行動を変える「深さ」のある体験

広告における体験のデザインを「広さ」ではなく、「深さ」の方向へと突き詰めた事例も紹介させてください。

冒頭で触れた「LIQUOR GAMERS CLUB」ですが、実はこの取り組みはサントリーさんに協賛いただいており、ボードゲームの普及を通じて、洋酒文化を広めることを1つの目的としています。

たとえば「ミッドナイトカクテル」というBARが舞台のゲームは、自分と同じカクテルのカードを持つ相手と乾杯をすると得点がもらえるのですが、誰がどのカクテルを持っているかを推理するために、交流カードというものを使います。そこには、「お好きなカクテルは?」と言いながらカクテルを見せてもらったり、「私に合うお酒を知りたい」と言いながらカクテルを交換し合ったりできる効果が書かれており、擬似的にBARに来ている他のお客さんと交流をするようなプレイ感が味わえます。そうして交流を重ね、自分と同じ相手が推理できたら乾杯を申し込む、という形です。

これらの体験の流れは、BARという場所が持つ魅力である、偶発的に起こる会話の楽しさや、人と人との運命的な出会いといったものを、自然と学び、体感してもらえるよう、ゲーム性と両立させながら設計されたものです。

実際、LIQUOR GAMERS CLUBのゲームに触れた人を対象に行った調査では、およそ3人に1人が「その後、初めてBARで洋酒を飲んだ/洋酒を購入した」と回答しており、この深さのある体験が行動変容へとつながったことが示されています。

ほかにも、鉄のリサイクル性を学ぶ「リサイクルハンター(日本鉄鋼連盟)」や、孤独・孤立問題を予防する「コドクエ 〜孤独な勇者よ、世界を救え〜(愛知県豊田市福祉部)」などをプロデュースしてきましたが、自分ごと化させにくい難しいテーマを伝える上で、ゲーム体験の活用は非常に有効だと考えています。

広告は消えて、体験だけが残る

情報が溢れ返る現代において、単なる情報としての広告はいずれ忘れられてしまうかもしれません。しかし、生活者が主体的に関わった「体験」としての記憶は強く残り、その後の行動にも影響を与えていくものとなるでしょう。

本講座では、こうした「体験価値のある広告」の考え方をベースにしながらも、より具体的な「話題化するコンテンツをつくるためのロジック」についてお話しします。ここでは触れられなかった「ジムビームコーラで俺のターン!!!」などほかの事例も交えてご紹介しますので、ぜひお申し込みいただけたら嬉しいです。それでは、お会いできることを楽しみにしております。

最後にひとつ。このコラムの小見出しなんですが、すべて5・7・5の川柳になっていたのって、気づきました?

カヤック おもしろ突破塾 講座概要

開講日:2025年9月25日(木) 19:00~21:00
※初回のみ木曜に開催、以降は土曜日に開催。
※最終日のみ13:00~
講義回数:7回
開催形式:教室開催(宣伝会議表参道セミナールーム)
※最終回のみ、鎌倉のカヤックのオフィスにて開催
詳細・お申込:こちらから

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安藤 耀司

面白法人カヤック
クリエイティブディレクター

面白法人カヤックで最年少のクリエイティブディレクターとして活躍。SNSや若者世代のインサイトやミームに精通したコアアイデアをもとに、緻密に組み立てられた戦略的プランニングで、着実に成果を生み出す広告プロモーションを得意とする。その傍ら、ボードゲームや謎解き、体験型イベントの企画制作も行なっており、企業や行政の課題を、ボードゲームや謎解きイベントで解決するプロジェクトも複数展開。サントリーが協賛する洋酒とボドゲのコミュニティ LIQUOR GAMERS CLUBの主宰もつとめる。

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