福岡の老舗料亭旅館、デザインとマーケティングの人材投入で未来へ向けて動き出した

福岡県柳川市の「柳川藩主立花邸 御花(おはな)」は、江戸時代に柳川藩主だった立花家のお屋敷を、現在も末裔が守り続けている料亭旅館です。国指定の名勝の見学のみならず、宿泊、食事もできる珍しい施設として観光客を魅了しています。そんな御花に2020年のコロナ渦の最中に入社したのが、デザイナーの竹中逸人さんとマーケターの金原梨奈さん。二人とも福岡県外から移住転職してきました。「横文字の職種の人を初めて採用した」「何をする人たちなのか、最初はまったくわからなかった」と語る立花家18代で株式会社御花の代表取締役社長 立花千月香(ちづか)氏に、混乱のなか二人を同時採用した理由、そして期待した役割を伺いました。
立花千月香氏

御花 代表取締役社長

旧柳川藩を治めていた立花宗茂の末裔(第18代)。柳川市出身。大学卒業後、東京の商社に3年間勤務。その後米国ボストンへ留学を経て御花へ入社。
当時まだ一般的ではなかった文化財施設でのウェディング事業に先駆けて取り組み、基盤を整えるなど、文化財活用の新たな可能性を切り拓き、2015年代表取締役社長に就任。国指定名勝「柳川藩主立花邸 御花」にて料亭旅館を運営し、「文化財を遊び倒す」をテーマに、受け継いできた文化財の多彩な活用を実践。さらなる魅力発信に努めている。

竹中逸人氏

御花 企画広報・デザイン

長野県でフリーランスのデザイナーや丸山珈琲のマーケティングを担当したのちに、御花に入社。全般的なデザインや広報戦略を手掛けるほか、ホテル棟のリニューアルプロジェクトを主導する。お土産のパッケージデザインや客室の空間演出も行う。

金原梨奈氏

御花 マーケティング

長崎県島原生まれ、京都育ち。シナジーマーケティングでマーケティング関連のSaaSセールスやCRM支援を行う。御花に入社後は、マーケターとしてデジタル広告やCRMを推進。また連動した宿泊プランの開発も行う。

コロナ渦に不安が広がるなか、新たな職種を採用したわけ

──どのようなきっかけでお二人を採用したのですか?

立花

:私は2015年に先代の父から料亭旅館「御花」を受け継ぎ、代表取締役に就任しました。料亭旅館として創立してから半世紀をとうに過ぎていましたし、時代が移り変わるなか、同じことをやり続けることへの不安は確かにありました。でも、毎日それなりににぎわっていて。目の前のお客さまをおもてなしするのに精一杯。未来を考える余裕はありませんでした。

あるとき、人材紹介会社の方のインタビューを受けました。そのなかで、「もし採用するなら、どういう人が欲しいですか」という質問があって。「一緒に未来をつくってくれる人」と答えたんです。そうしたら、「うちにぴったりな登録者がいます」と。

営業上手ですよね(笑)。「もし」と聞かれたのでお答えしただけなのに。とくに採用する計画はなかったのですが、「絶対に会ってみた方がいい」とおすすめされ、何人かとオンライン面談をしてみました。そのなかに、デザイナーの竹中とマーケターの金原もいました。2020年の年明けのことでした。

──2020年ということは、その後すぐコロナ渦に入っていったわけですね。

立花

:そうなんです。創業以降初めて休館を迫られるという未曽有の事態でした。私たちは存続できるだろうか、この業界はどうなってしまうのだろうと、ぼうぜんとしてしまって。人材採用なんてやっている場合ではありませんでした。でも、私は、むしろ新たな人材を入れることを決めたのです。これまでは地元採用・同業種からの転職がメイン。また調理師や接客スタッフ、旅行会社向けの営業職など既存職種の採用ばかりで、デザイナー・マーケターの採用は初めてでした。

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