ワコールアートセンターが運営する文化施設「スパイラル」(東京・南青山)は10月1日、設立40周年を記念した企画展を開始した。施設の建築を担った槇総合計画事務所とともに「スパイラル 40th × 槇総合計画事務所 60th『槇文彦とスパイラルーアートの生きる場所ー』」と題し企画されたもの。会期は10月13日まで。
「スパイラル 40th × 槇総合計画事務所 60th 『槇文彦とスパイラルーアートの生きる場所ー』」
1985年、建築家の槇文彦氏(1928-2024)によって設計された「スパイラル」。建設された当時の1980年代の南青山は、住宅地やオフィスビルが立ち並ぶ街であり、文化の発信地ではなかったという。
複合文化施設という単語がまだ浸透していなかった時代、「スパイラル」はレストランやカフェ、会員制クラブや劇場などさまざまな用途を持つ施設としてオープンし、「生活とアートの融合」をテーマとして人々の暮らしにアートを届けることを目指してきた。
最奥にあるアトリウムは、ギャラリーだけでなく、ファッションショーの会場やパフォーミングアートの舞台など複数の目的を想定して空間が設計されていることが特徴だ。
今回の企画では、スパイラルを構想した当時のオリジナルドローイングをはじめ、コラージュや模型、図面の原本などを初めて展示。スパイラルの建築の特徴であるオブジェクトやファサードがいかに設計されていったかのプロセスを辿ることができる。
「ワコール南青山計画」として始まった「スパイラル」の建設計画。
槇総合計画事務所 代表の亀本ゲーリー氏は当時、スパイラルの設計の意図について、次のように説明する。
「槙氏が意図していたのは、街が建築の中に入りこんでいるようなデザイン。独自の性格を持ったさまざまな機能がつながりを持つ姿を目指していた。青山に文化を中心として集会の空間を生み出すことで、文化拠点としての種を蒔きたかったのではないか」(亀本氏)。
また、スパイラル プロデューサーの小林裕幸氏は「『街の中の社交の場』として活用される空間としての役割を考えられながら設計されている点がスパイラルの特徴だ」と話したうえで、「建築が持つ強いつながりが今もなお文化拠点として保ち続けられている」と振り返った。
プロデューサー小林裕幸氏(写真左)、槇総合計画事務所 代表の亀本ゲーリー氏(写真右)
2022年に「スパイラル」はグッドデザイン賞からロングライフデザイン賞を受賞。現在もなお、ロイヤルユーザーのうち36%近くがクリエイティブ関連の仕事に就いており、文化の発信拠点としての役割を果たし続けている。





