セールスコピーによって獲得したいのは、「消費行動」です。そのために思いをしたため、メッセージを仕立てるわけですが、どうしても伝えたい気持ちが先走りします。「伝えること」に真剣になりすぎて、「伝わること」への傾注は二の次になっていないでしょうか。
商材価値を「自分から」押し出すだけでなく、消費行動を「相手から」引き出すことができない限り、セールスコピーは「消費行動」を獲得することはできません。大切なのは、その商材を「消費(購入)」することによって、消費行動のその先にどんな「体験」を享受することができるのか。それをイメージできる「言葉」を編んで、仕掛けることです。
本記事では、セールスコピーを作るためにどのように言葉を編んでいくか、ヘルスケア・ビジネスナレッジの西根英一氏に解説していただきました。
「セールスコピー実践講座」
マーケティングの狙いは「目的行動」の獲得
生成AIのチカラを借りて、メッセージだけではなくビジュアルさえも作れる時代になりました。素人の域を超えた、それらしい形をした生成物はセールスプロモーションの世界にも生息し、増殖しています。現れて間もないのに、すでに見飽きた感、既視感、展開にお見通し感すら抱くのは筆者だけでしょうか。
セールスコピーによって獲得したい目的行動は一つ、商材を「消費(購入)」してもらうこと。しかし、その消費行動によって享受したい顧客体験は、購入者一人ひとり異なる可能性があります。体験は誰もが同じで一辺倒、すべてお見通し!ではないはずです。となると、セールスコピーは個々の顧客体験の“元”に寄り添うものでなければなりません。
そこで求められるのが、その“元”を探る調査です。一般の生活者>想定される消費者>特定される顧客、とそれぞれのインサイトを把握するためには、アンケート調査によって顕在的な「未」の案件(未解決、未達成、未決定、未体験)は何か、インタビュー調査によって潜在的な「不」の案件(不安・不満・不信・不快・不都合な理由)は何かを探索します。そこから、未の案件の解決と不の案件を解消する“最適解”を形成的に設計しなければなりません。
調査の結果を分析し、その分析から考察し、最後に考察から“最適解”となる関係式を導きます。具体的には、「消費行動の獲得」を目的変数(≒KGI)に、その「獲得に係る複数の要件」を説明変数(≒KPI)として定義し、“最適解”に向けて個々に異なる係数をその説明変数に掛け合わせるという式を仕立てます。
この設計のために導入されるのが、マーケティングです。マーケティングをもって、消費行動の獲得へ向けた調査(設計・実査・結果)⇒分析⇒考察⇒消費行動獲得の関係式⇒戦略(ストラテジー)⇒戦術(タクティクス)⇒実行(エグゼキューション)のレールを敷きます。戦略に位置するのが、商材のどんな価値を最大化・差別化するかのブランディング戦略や、どんな価値を顧客に個別化・最適化するかのターゲティング戦略です。
商材の価値を最大化・差別化する仕掛けを編む
消費行動の獲得に向けた、仕掛けとなるセールスコピーをつくる際の要点は以下の通りです。
①「伝える」コピーをブランディング発想で編む
②「広める」コピーをイシューイング発想で編む
③「伝わる」コピーをターゲティング発想で編む
これら3つの発想について、簡単に解説します。
セールスコピーは、生活者>消費者>顧客の行く手に、タイミングよく、ほど良い量・質感で提供されるメッセージでなければなりません。そのとき、セールスコピーは、顧客自身から自然と手を差し出し、自らの手のひらで受け止め、商材の重さや温かさを感じられる「言葉」でなければなりません。その重さと温かさをもとに、顧客は商材の価値を最大化・差別化でき、消費(購入)につながります。
ブランディング発想の視点で見ると、重さは商材の機能的価値に、温かさは消費行動によって享受する顧客体験の情緒的価値に相当します。
暮らしの中に課題化・話題化する仕掛けを編む
新たな方針によって世の中の空気は変わります。例えば、コロナの始まりの時代に「三密」という言葉がハッシュタグになり、世の中を席巻しました。そして、三密を避けるという目的行動を獲得させるためのフットプリントやアクリル板、オンラインミーティングたるものが浸透しました。
暮らしの中に課題を提示する、話題を提案するというときの仕掛けの言葉が、いわゆるハッシュタグワードです。この言葉も重要なセールスコピーの一つで、商材の価値を下支えします。ハッシュタグワードが、特定の消費行動の機運を広める分母となり、その機運に乗る形で、分子たる商材の価値が高まるというのがイシューイング発想です。
対象を層別化して個別化・最適化する仕掛けを編む
都市暮らし・地方暮らし、勤務体系や家族構成、世帯年収など、属性をもとにペルソナをつくり込むことに専念していませんか。ペルソナ像を仕立てて「ターゲットを絞り込む」より大切なのは、全対象の消費行動獲得までを行動変容ステージに区分けして、「ターゲットに優先順位をつける」ターゲティング発想です。
例えばある商材を前にして、生活者と呼ばれる層は「無関心期」、消費者となれば「関心期」、顧客を「準備期」と分類するとしましょう。続いて、消費行動を獲得できたら「実行期」、消費行動の継続が「維持期」となり、この5階層をアカデミアの世界では「行動変容ステージ」と呼んでいます。ビジネスで語られるカスタマージャーニーと考え方はまったく同じで、どちらも目的行動の獲得に向けたアプローチによって成り立ちます。
この行動変容ステージごとに、個々に最適化した仕掛けを設計し、そこに言葉を編むことでセールスコピーが効力を発揮します。
これらの3つの発想を元に設計することが、顧客の消費行動を促すセールスコピーを作るポイントです。マーケティングをコピーライティングに生かすセールスコピーの設計をぜひ体感いただきたいと思います。
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