4. ブランドをカルチャーに接続する Cultural Fluency
アメリカで大人気の缶入り水ブランド、リキッド・デスの創業者であるマーク・セサリオ氏は「マーケティングを、お金を支払う価値があるエンタメとして扱え」と言った。実際、2023年に最も成功した広告動画キャンペーンでは、世界中の人々が喜んで数千円を支払った。映画「バービー」のことだ。勢いづくマテル社は次に「ホットホイール」など他のおもちゃの映画化も進めている。2024年にはLVMHグループが、ハリウッド映画やテレビ番組をつくるスタジオを設立した。他にもスターバックスなど、多くの企業がコンテンツ制作に乗り出している。
なぜか?それは彼らの真の競合が、市場に並ぶ他企業の商品ではなく、生活者の心と時間を奪うコンテンツだからだ。ブランドを長く価値あるものにするなら、人々が愛するカルチャーに溶け込んでいく必要がある。
OLDTYPE: マーケットの中で競争する
NEWTYPE: マーケットとカルチャーを接続する
ひとつ事例を挙げよう。推し活文化において、アクリルスタンドは欠かせないアイテムだ。推しのアクリルスタンドを飲食店に持ち込んで写真を撮り「ランチデート」や「誕生会」としてソーシャルメディアに投稿する人たちがたくさんいる。推しと一緒に食事がしたい。そんな願望を多くの人が持っている証だろう。こうした文化的事象とどのように経済活動を結びつけることができるだろうか?
そのひとつの答えが、日本マクドナルドが始めた「#リアタイマクパ」だ。人気アーティストのお気に入り商品を組み合わせたセットメニューを公式アプリでオーダーできるようにし、配信イベントで同時に食べられる体験をつくった。同じ時間に、同じメニューを、大好きなアイドルと分かち合う。新しいエンターテイメント体験を通して、ファンコミュニティに熱狂が生まれた。またモバイルオーダーのユーザーを大きく増やすことにつながったという。
企業とアーティストやコンテンツとの協働は増えていくだろう。その時に、単なる顔貸しになってしまう事例はたくさんある。あまりにもったいない。手を取ることで、今までなかった新しい体験や感動を届けることが重要だ。そのためにも、カルチャーを読み解き、ファンと対話しながらアイデアを構築できる文化の理解力と対話力(Cultural Fluency)が新たな必須能力になるだろう。
5. これで十分、じゃ不十分。 Good enough is not enough.
TBWAコレクティブには、Good enough is not enoughという考え方がある。直訳すれば「これで十分、じゃ不十分」という意味になる。
生成AIやデータ運用を通して最適解を導くとき、私たちの多くは「これで十分じゃないか」と思いたくなる。人が苦労することなんてないのに、と。だがこうした「最適なアウトプット」には、見たことのないものを送り出す興奮も、視点が広がる驚きも、早く世に出してたまらなくなる、あの焦燥感もない。心をふるわせる瞬間を失ったら、仕事をする意味すらない。
だからこそAIや最新のツールを使うとき、「手をかけずに作業ができた」という点だけで満足してはいけない。戦略は十分に新しく賢く実効性があるか。アイデアは斬新で心を動かすか。クラフトは同業者が嫉妬するレベルか。胸を張って見せられるか?堂々と答えられなかった時には、「さぁ、もういちど!」と言える個人でなくてはならない。この点については、AIもデータも存在しなかった時代の、愛すべきオールドタイプの先輩たちに学ぶ必要があるだろう。彼・彼女らは自らの仕事を厳しく評価することで、品質を保っていた。基準を超えることをアスリートのように楽しんでいた。努力する楽しみを忘れるべきではないだろう。
OLDTYPE:高い基準を設定し自ら超える
NEWTYPE:高い基準を設定し自ら超える (ただしワークライフバランスに気をつけて)
以上、5つの要素を駆け足で紹介してきた。THにはDisruption=創造的破壊という哲学であり方法論がある。本質は「そのまま」に、不要な固定観念を壊すことから、新しいものはつくられる。それはひとりひとりのキャリアにも当てはまる真理ではないだろうか。

2030年以降にも通用するNEW TYPEを目指したいあなたへ。2025年12月5日から、TBWA\HAKUHODOのクリエイティブとストラテジーのメンバーを講師とする第四期Disruption Schoolが開催されます。Disruption®という普遍的な方法論を体系的に身につけつつ、講師との対話やワークセッションなどを通じて、思考力・発想力・表現力を格上げするカリキュラム。受講生の平均評価は5点中4.87点で、最も満足度の高い講座のひとつです。
TBWA\HAKUHODO DISRUPTION SCHOOL 概要
◯開講日:12月5日(金)19:00-21:00
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