脚本家・橋田壽賀子氏の作風をAIで再現したドラマが2025年5月、BS-TBSで放映された。プロジェクトマネージャーを務めたABEJAの阪口創氏に、誰もが知る名作を扱う難しさや面白さ、制作過程での発見を聞いた。
AI 橋田壽賀子企画 渡る世間は鬼ばかり 番外編』キービジュアル。
脚本のデータ化から始まる
今年5月に放送された『AI橋田壽賀子企画渡る世間は鬼ばかり番外編』は、2021年に亡くなった脚本家・橋田壽賀子氏の作風をAIで再現し、一本のドラマをつくりあげるプロジェクトだ。
橋田文化財団が企画し、プロジェクト内でAIの開発および活用を担ったのがABEJAだ。「AIプロジェクトは常にデータを準備するところから始まります。過去の脚本は紙でしか存在しなかったので、まずデジタル化するという非常に泥臭い作業から始めました」と、プロジェクトマネージャーを務めた阪口創氏は話す。
社内のデータサイエンティストと壁打ちしながら脚本をつくり、財団からフィードバックを受け、約半年かけて橋田氏の作風を再現した脚本を完成させた。並行して、ドラマ脚本制作のプロセスを一から学んだという。
「現役のプロデューサーである財団担当者から、世界観の策定、キャラクターのつくり方、プロット作成、シーン執筆という流れを教えていただきました。その一つひとつのプロセスにAIをどう活用するか考えていきました」。
同作ではメイド喫茶がひとつの舞台に。
橋田ドラマの本質「論理的誤謬」の発見
「多くの人がAIによる脚本制作と聞くと、シーンを自動生成するイメージを持つと思いますが、シーンを書くのは最後の工程。むしろそれ以前の、シーンを書くために必要な情報を整理することが重要でした」と阪口氏は強調する。

