M-1グランプリといえば、年末の風物詩として多くの視聴者に親しまれている漫才の祭典だ。決勝戦オンエアのPR施策として、その魅力を伝える重要な役割を担っているのが、毎年公開される4分間のプロモーション映像(PV)である。虎ノ門広告祭のセッションでは朝日放送テレビ(ABC)と電通のクリエイティブチーム(通称M-1ラバーズ)による公開会議が開催された。AdverTimes.では一部セッションをダイジェストでお届けする。
「M-1ラバーズ」の誕生と4分PV制作の制作秘話
公開会議に参加したのは、ABCでM-1グランプリのチーフプロデューサーを務める桒山哲治氏、同総合演出を手掛ける下山航平氏、電通クリエイティブディレクターの有元沙矢香氏、電通プランナーの水本晋平氏の4人。司会は電通で映画監督を務める長久允氏だ。
有元氏によれば、電通チームがM-1グランプリのプロモーションに関わったのは2018年からだという。当初はTikTokとのコラボレーション企画からスタート。その作業を通じて電通チームのM-1愛が伝わり、その後ABCの当時の担当プロデューサーから「M-1ラバーズ」という名前を付けられ、M-1グランプリの全体プロモーションも担当するようになった。
PV制作の始まりは、2019年。桒山氏は「その年(2019年)決勝が12月22日で、クリスマス前前前夜だった。RADWIMPSの『前前前世』とコラボしたら面白いのではとダメ元で打診したところ、意外にもOKが出て、映像企画が誕生した」という。有元氏は「毎年1回戦から密着している膨大な映像素材はプロモーションにぜひ活用すべきだと考え、翌年からはその素材を使わせていただき、その後、M-1の漫才尺である4分に合わせた」という。
左から順に、長久允氏(電通)、桒山哲治氏(ABC)、下山航平氏(ABC)、有元沙矢香氏(電通)、水本晋平氏(電通)
芸人たちの素の姿を切り取る難しさ
4分PVの大きな魅力は、芸人たちの舞台裏や真剣な素顔が垣間見えることだ。しかし、その制作にはさまざまな難しさがある。下山氏は「カメラが増えてきた。1回戦は1人、2回戦は3、4人。3回戦になると全組インタビューを取るので、3組に1人くらい。準決勝は30台くらいのカメラがある」と撮影体制の大規模さを説明した。
編集においては「これが表なのか裏なのか」という議論が常に存在する。水本氏は「芸人さんのキャラをちゃんと理解して、この人はこれを裏で言ってるのか、表で言ってるのかみたいなことはすごく考える。ご本人にとって裏で言ってるのに表みたいに使われちゃうと申し訳ないので」と漫才師への解像度の必要性を語り、「M-1制作陣がとにかく漫才師に対するリスペクトが強いので、僕らもそれを大切にしたい」と強調する。
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