「営業は才能のある人だけが成功する仕事ではない」。そう語ったのは、Sales Navi代表取締役CEO・田中大貴氏。キーエンスとプルデンシャル生命という二つのトップ営業組織で成果を上げてきた田中氏が、「第5回 営業戦略会議」で、“再現性のある営業”をいかに実現するかを解説した。
なぜ営業成果がばらつくのか?
営業マネージャーが抱える「成果のばらつき」や「人材の定着」といった課題。田中氏いわく、その根本原因は「再現性のなさ」に集約されるという。多くの企業では、営業教育が不在で、成果が上がっている人のやり方が属人化・暗黙知化している。
例えば医師や美容師には専門の教育機関や国家資格があるが、営業職には体系化された学習環境がない。多くは商品知識を学んだ後、OJTで先輩に同行して感覚的に独り立ちしていく。物事の基礎となる「型」がないまま現場に出るため、一部のトップセールスに成果が依存し、ばらつきが生まれるのだ。
その結果、やり方が分からず成果が出ない人は営業が嫌いになり、退職してしまう「営業の負のサイクル」に陥る。一方で、正しいやり方を学べる組織は、成果が上がり仕事が楽しくなる「正のサイクル」をたどる。この差は、正しい営業のやり方を学べるか否かで決まるという。
「4つのステップ」と「4つの要素」
では、再現性のある営業組織はいったいどう作るのか。田中氏は、営業の原理原則である「4つのステップ」と「4つの要素」を掛け合わせて考えることが重要だと語る。
「4つのステップ」とは、物事を習得するための「知る」「わかる」「やってみる」「できる」という段階のことである。自動車の運転免許で例えると、教本で全体像を「知り」、操作方法を「わかり」、教習所で「やってみて」、初めて公道で「できる」ようになる。しかし営業の世界では、いきなりステップ4の「できる」ことを求められがちで、ここにギャップが生まれる。
もう1つが「4つの要素」だ。営業成果には「知識」「スキル」「習慣管理」「心構え」が必要不可欠だという。これらの1つでも欠けていると、成果は上がらない。
田中氏は、これらを掛け合わせて体系的に学ぶことこそが再現性を生むと説く。しかし現状、多くの研修は「知る」に偏り、「わかる」「やってみる」「できる」段階の教育が欠けていると指摘する。
強い組織の土台となる「組織カルチャー」
個々の営業が成果を上げるだけでなく、組織として強くなるためには「この会社に居続けたい」と思える組織カルチャーも重要だ。
たとえば、キーエンスとプルデンシャルの教育方法は似ているが、カルチャーは対照的だったという。キーエンスは「論理のカルチャー」。徹底した合理化を追求し、過去のデータに基づき最適な行動が定められている。一方、プルデンシャルは「感情のカルチャー」と言える。「生命保険を変える、私たちが変える」というスローガンのもと、社員に「自分たちがやらなければ誰がやるんだ」という使命感を醸成していた。
どちらが良いということではなく、重要なのは、自社の理念や事業に合ったカルチャーを意図的に作り上げ、浸透させることだと田中氏は強調する。再現性のある「仕組み」と、社員のエンゲージメントを高める「カルチャー」。この両輪が揃って初めて、一部のスタープレイヤーに依存しない、持続的に成長できる営業組織が生まれる。田中氏の講演内容は、営業組織のあり方を見直す企業にとって大きなヒントとなった。

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