9月25日、26日に開かれた「アドタイ・フォーラム2025」に登壇した大広 ダイレクトドリブンマーケティングユニットの藤井耕平氏、岡嶋瞳氏が、「ダイレクトドリブン・マーケティング」の実践方法と具体的な施策を解説した。
「量」と「質」の両面で顧客を捉える
多くの広告会社がコミュニケーション目標の達成をゴールに掲げる中、大広は50年にわたり「事業成果へのコミット」にこだわってきた。その根底には、一人ひとりの顧客と真摯に向き合う姿勢がある。
そんな同社は、新規顧客との関係を築くことが難しくなった現代において、これまで培ってきた顧客理解や売上に関する知見を生かし、「感動CX×フルファネル」を核とした「ダイレクトドリブン・マーケティング」を提唱している。
「企業と顧客が直接つながる『ダイレクトビジネス』において、広告活動の先にある購買やロイヤル化までこだわることで、『新しい顧客』と熱量の高い『推し顧客』を創造し続け、成果目標の達成までコミットするメソッドです」(藤井氏)
大きく3つのステップから成る同メソッド。最初のステップには、事業成果の目標と顧客との関係性を規定する「プランニングゴール設定」がある。鍵となるのが、顧客の「量的理解」と「質的理解」だ。
「量的理解」は、マーケティング目標を設定する上での基盤となるもので、売上構成やプロセスを分解し、顧客数や単価といった指標からボトルネックとなる部分や、重要なフェーズを見極める。一方の「質的理解」は、ブランドと顧客の関係性作りに寄与する。
大広 ダイレクトドリブンマーケティングユニット/デジタルソリューション本部 データドリブンプランニング局 データソリューショングループ部長 藤井耕平 氏
「当社では、企業がブランドを通して本当に提供したい価値と、顧客の『こうなりたい』という願望が重なり合う接点こそが、理想的な関係性であると捉えています」(藤井氏)
「推し顧客」を生む感動体験に必要なポイント
次のステップは、顧客の心を揺さぶり、購買へのプロセスを前進させる「感動CX(感動体験)設計」だ。ここで定義される「感動」には、動的な感情のみならず「安心」や「充足」といった穏やかな「静的感情」も含む。岡嶋氏は、自身がカフェチェーンで体験した心に残った接客を例に挙げ、情報が溢れる現代では心を強く揺さぶり、ブランドへの愛着が大きく高まる「リアルな場での体験」が重要だと述べた。
「感動体験を設計する上で大切なポイントが3つあります。1つ目が適切な『タイミング』、2つ目が顧客の期待を大きく上回る『想像を超える』体験、3つ目が多くの顧客が参加しやすい『開かれた』体験であることです。こうした感動体験をカスタマージャーニーに仕込むことで、感情が一気に高まってブランドに惚れる『推し顧客』が生まれると考えています。推し顧客は、応援の気持ちを込めて継続的に購買し、自ら情報を集めて周囲を巻き込む、主体的にブランドに関わる存在であり、単なるファンとは一線を画すと捉えています」(岡嶋氏)
大広 ダイレクトドリブンマーケティングユニット/ソリューションデザイン本部 ストラテジックプランニング局 第4グループ部長 岡嶋瞳 氏
3つのPDCAを回し事業成果を持続的に高める
最後のステップは、成果を高めるための「伴走型PDCAマネジメント」である。メディア接触データ、Web行動データ、購買データ、SNS投稿といった、フルファネル全体で生まれる顧客の「アクチュアルデータ」に着目し、顧客の行動・結果にコミットしたKPIを設計する。
このステップでは、3つのPDCAサイクルを回すのが特徴だ。1つ目が個々の施策が目標を達成したかを確認・改善する「エグゼキューションPDCA」、2つ目がフルファネル全体での顧客の動きを捉える「マーケティングPDCA」、3つ目が顧客の行動がビジネス構造にどのように貢献したかを捉える「ビジネスPDCA」である。これらは、施策(エグゼキューションPDCA)は週次、マーケティング戦略(マーケティングPDCA)は月次、経営視点(ビジネスPDCA)では四半期ごと、というように適切な周期で回すことで、事業成果を持続的に高めていく。
また藤井氏は、前のステップとの連携の重要性を次のように語る。「『感動CX(感動体験)設計』によって生まれた『推し顧客』の活動を分析することが、PDCA全体に有効な示唆を与えます。例えば、推し顧客のLTVの測定や、SNSでの拡散量や質、新しいお客様との関係づくりへの貢献を可視化することで、ビジネスをさらに活性化させるための具体的な打ち手を見出すことができます」(藤井氏)
採用活動に活用、エントリー数増加に寄与
このメソッドは、さまざまな企業の取り組みで活用が可能だ。たとえば進学塾の活用例では、進学によって塾を離れるタイミングに「卒塾アルバム」や特典ギフトの提供などを行うことで、「感動体験」を共有する機会を設ける。塾生という「顧客」が離れるタイミングに、塾との新たな関係性を再認識、強化することにつながり、兄弟や近所の学生への紹介につながるなど、ビジネスが継続していく流れをつくっていく。
大広の採用活動にも活用している。「大手の競合に比べ選ばれにくい」という課題に対し、企業が学生を選ぶというスタンスから「お互いが向き合う」形へ転換。エントリーシートを「ダイアログシート」と名付けるなど、徹底して「対話」を軸に体験を再設計した。その結果、エントリー数が前年比118%となった他、就活人気ランキングや内定承諾率も上昇した。
最後に藤井氏は、同メソッドは「圧倒的な顧客理解」「感動体験の設計」「伴走型PDCA」の三位一体で推進されるものだとまとめた。データプランナー、ストラテジックプランナー、クリエイティブディレクターといった専門家集団が連携し、企業の事業成果にコミットしていく。

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