9月25日、26日に開かれた「アドタイ・フォーラム2025」では、ビジネスイノベーション統括部の小図子武弘氏、高島華子氏、廣田慎悟氏が登壇。BestMoveを活用するとどのようなことが可能になるのか、実際の成功事例も交えながら詳しく紹介した。
10以上のAI技術でマーケティングを支援
NECは、1960年代の手書き文字認識からAIの研究開発をスタートし、現在は国内外にAIの研究所を7拠点ほど展開してさまざまなAI研究を進めている。これまでに学会での発表や受賞、特許の取得などを積み重ね、その研究成果を製品開発にも活かしてきた。
今年6月にローンチした新ソリューションの「BestMove」は、そうした研究の中で培ってきたAI技術を10以上組み合わせて開発。ファーストターゲットを消費財メーカーのマーケターと置き、そうした人々がマーケティング施策を考える際により最善の一手を提案し、その施策の中から確信のある意思決定を支援するSaaSソリューションとなっている。
NEC ビジネスイノベーション統括部 シニアマネージャー 小図子武弘 氏
「“ベストムーブ”とは、チェスにおいて“最善の一手”を意味します。不意に打った一手がチェックメイトにつながる、一番良い手を出していく、そうしたコンセプトのもとで開発を行いました」(小図子氏)
「BestMove」に含まれているAIは、施策立案に関するAIやデータのよりよい解析に資する属性拡張AI、施策を打った場合の消費者の反応を予測する顧客反応予測AIなど。これらに入っている技術も含めて、「BestMove」には32件もの特許技術が使われており、顧客分析から施策立案、効果予測、クリエイティブ生成までの一連の業務プロセスを一気通貫で支援できるようになっている。
また、施策に関するナレッジも共有でき、「BestMove」を使用するメンバーが各施策に「いいね」やコメントを付ける、その時々の意思決定の記録が残せるといった機能もある。これは、新人や若手のマーケターが、過去にさかのぼって先輩が立案した施策の内容や立案時の考え方を学ぶといったことにも役立てられる。
強力な機能で、マーケターの悩みを解決
マーケターの切実な課題に応える「BestMove」には、たとえば次のような機能がある。
一つは、統計データとAI技術を掛け合わせた「顧客分析機能」だ。マーケターの手元には、POSデータやID-POSデータ、市場調査データ、顧客アンケートのデータなど、多種多様なデータがある。しかし、自社製品に紐づく顧客がどのようなニーズを持ち、どのような行動を取っているかといったことがなかなか見えてこず、そうした人たちに刺さる施策がつくれないと悩んでいるマーケターも多い。
その課題に対して「BestMove」は、商品の特徴と消費者の傾向データを掛け合わせて、その商品に興味がある人たちだけを抽出し、さらにFM分析によってペルソナとなる人を見出せるようになっている。
「実際に顧客分析機能をご活用いただいているお客様からは、『見落としていた顧客像が出てきた』『自分たちがペルソナだと思っていた人たちが、たしかにそこに存在していることを確認できた』といったお声をよくいただきます」(小図子氏)
また、どのような施策を打つべきかという意思決定がなかなかできないという課題には、「ディシジョンボード(意思決定支援ボード)」の機能が応える。これは、複数の施策案に対してAIがそれぞれ消費者の反応率を推定し、そこに市場規模や認知など、使い手が参考にしたい指標をフェルミ推定して掛け合わせることで、相対的に良い施策案を導き出すというものだ。
「『BestMove』でアイデアを壁打ちし、顧客の反応率を見ながら施策を立案していくというお客様には、簡便にPDCAが回せるといったことに価値を感じていただけているようです」(小図子氏)
「AIという、信頼できる相談相手ができた」
伊藤園は、今年4月から「BestMove」を先行導入し、実際に高級緑茶飲料のマーケティング活動に活用しながら検証を実施。実際に成果を実感し、8月に本格利用をスタートした。導入にあたって、NECは伊藤園の業務に沿う機能やUIなども開発。ともにプロダクトをつくり上げていくような感覚で、成果につなげていった。
「NECには自然言語処理に長けた研究者やデータサイエンティストなどの専門家が在籍していることもあって、伊藤園さんには『BestMoveは施策立案が世界一やりやすいツールになると思っています』と、とても期待していただいています。それは僕らも目指すところなので、今後もお付き合いを深めながらその期待に応えられたらと思っています」(廣田氏)
NEC ビジネスイノベーション統括部 マネージャー 高島華子 氏(右)、ビジネスイノベーション統括部 廣田慎悟 氏
高級ワインのECを運営する企業も「BestMove」を導入したことで、売上が2倍に伸長。ほか、広告動画の制作に「BestMove」を活用し、認知率が125%にアップした事例もある。NECは、「BestMove」の活用を通して成功に導くことが非常に重要だと考えているため、成果を出すという部分までしっかりコミットして支援する体制を整えており、それも導入先の企業に評価されている点だ。
また、他のAIサービスよりも深いインサイトやアウトプットが得られるという声も聞かれている。
「とある飲料メーカーさんには、『LLM(大規模言語モデル)よりも深いインサイトが出るね』とご評価いただき、“Bestくん”と呼んで愛着を持ってご利用いただいています。その方は、『これまでマーケティング業務は、自分の殻やチームに閉じこもって勘と経験に基づいてやっていたけれど、AIという相談できるパートナーができた』と嬉々として語っておられる様子が印象的でした」(高島氏)
「BestMove」をはじめ、AI技術やツールの活用によって、ユーザーが自身の手元で簡便にやりたいことが実現できる。それが、NECが研究を続ける理由であり、同社の目指す世界だ。

お問い合わせ
日本電気株式会社
ビジネスイノベーション統括部
E-mail:support@bestmove.jp.nec.com
URL:https://jpn.nec.com/bestmove/



